風
巨額の金を持って、貴方は 何をする?
誰も、その問い の答え、 聞いたこと無し。
切れる程に冷たい、と表現するのが妥当。
ひゅう 、と。
音と、感覚は常にズレている。
立っていた、筈なのに。
どうして空を、見ている?
自分が理解できない境地に立たされて、
こみ上げるは、 笑い。
「ははっ、…は、……はは は」
だが
途中でそれも、声 にならなくなった。
喉が、自分の喉ではない ようだ。
声が、 枯れて いく。
熱い。
どうやら喉が掻っ切られたようだ。
声にならぬものは、ごぼごぼ、と泡立つような音を立てている。
最期の、嗚呼。力 で
*
「伝説…ねぇ」
最初は半信半疑。伝説なんて莫迦らしい。
“嘘”のカタマリが“伝説”なんだ、と知っていたから。
伝説というのは、愚かな人間共が【憧れ】って奴を形にしたものなんだよ。
「もしそれが本当だっていうんなら、それは人間じゃないね」
そんな事をいとも平気に言っていたあの頃が、妙に懐かしい。
そんな馬鹿馬鹿しい伝説が、何時しか周りの話で、矢鱈と現実味を帯びてきていたある日。
何処かで伝え聞いた風が、ひゅう、と耳の近くで鳴り響く。
はらり
落ちたのは、一枚の、黒い鳥の羽根、だけだった。
見た先に夥しい程の骸。ヒト、トリ、イヌ、ムシ。
「……ど、うして?」
言葉に、ならなかった。姿すら、見ていないのに。
*
あの方が姿を消してから、数か月が経ってしまった。
死ぬ訳はない。
あの方は人間じゃないのだから。きっと、何食わぬ顔で又、私たちの前に現れるでしょう。
そう、思ってからもう、数か月も経ってしまった。
あの方を思うのに疲れた彼は、いつも私の傍に居てくれた。そして、そっと抱き締めて、居てくれた。
これも悪くない、と私は口にはせずとも、そう思い始めていた。
「もしかしたら、しあわせ、ってこういうことをいうのかもしれないわね」
空も青い。
空気は前よりも爽やかになってきた。
考えてみれば、これが“普通”の幸福だったということに、私はきづく。
もしかしたら、私も疲れていたのかもしれない。ただ見返りのない“待つ”ということに。
彼はその時も私と共にあり、私を支えてくれていた。
すき。
そんな想いが、彼と私の間にはいつしかぴったりになっていて。けれど、私は彼を愛せずにいる。
簡単にあの方を忘られる程、若くもない。
だから、悪い、そう想う。幸せの間に、ずっと苦悩があった。
そうであるからこそ、私はずっと、誰かに赦されたくなかった。蔑まれたかった。
彼の腕のなかにいれば、これ以上にないくらいに幸せだったのに。
そんな想いで彼の腕のなか、いつものとおり暖かな風を感じていた。彼からは、太陽の匂いがする。
一閃、冷えた風が吹く。
ひゅう。
なんだろう、顔を上げると、ぼとぼと、と音立てて、彼はばらばらに崩れていた。
目の前には意味の分からぬ、赤。赤。あか。
赤を浴びた私。畳に広がっている赤。飛び散っている赤。
それが血で、ばらばらになったものが、彼の体と知った時、私…。。。。。
*
「そおれ、金がほしいか!ならやるわい」
(自称)鋼鉄の筋肉を身に纏った男。
金貨が溢れている。
ざらざらざらざら。
「拙僧の筋肉を見、金に酔い痴れろ!」
金貨の風呂に入っている。
金貨を投げている。
「はっ!腹筋千回始めるであります!」
部下の筋肉ダルマは真面目だ。
愉快に笑う男の目の前で、刃の音。
ざくざくざくざくざくざく。
腹筋中に崩れ落ちていく筋肉共。
「なっ…?!なんだと!拙僧の筋肉隊がぁ…」
無念そうに声を詰まらせ、部下の屍を見、
「貴様、筋肉も足りん癖に…」
傍に来ていた黒い者に気付き目を遣り、
「…なっ?」
その表情。べぇっと舌を出して挑発。
よく見れば、その舌は縫った痕がある短いもの。
筋肉に関わりの無い事は、実はどうでも良い。
失敬な痩せぎすであると威嚇にどん、と足を踏み鳴らす。
「…ほぅ?」
足を踏み鳴らした時に、体からじゃらじゃらと落ちた小判を拾う黒い者。
言葉等要らぬ。その行動は乞食と呼ぶに相応しい。
筋肉隊と呼ばれた屍の中、それを放っておいて、
「拙僧の下に来れば、金は幾らでも遣ろうぞ」
ひゅう。
冷たい、風。
言葉は、無い。
黒い者に触れたが、その手は生き物とは思えぬ程、冷たい。
黒い者が片膝を着いて、其処に跪いていた。
是が、どういう事か、判るだろうか。
「 」。
喜びのあまり(自称)筋肉男は、黒い者を抱き締めた。
強く、つよく。
***********
女性口調になったあたりから、急に変わったな、と思ったんですが(笑)止まらん
誰が誰か、わかりそうなもんですが。。
わかりますか?
まぁ最後のはバレバレ(?)つか他になし。
最後のは……
これは読み手によって解釈がちがうってことでいいんです
だから、あんな感じでおわり。
解説の気は、ないです
任せます。
意見もまってます!
解釈について、だけ。
以上!
2009/03/01 09:35:16