風


巨額の金を持って、貴方は 何をする?


 誰も、その問い の答え、 聞いたこと無し。



 切れる程に冷たい、と表現するのが妥当。
 ひゅう 、と。
 音と、感覚は常にズレている。

 立っていた、筈なのに。
 どうして空を、見ている?

 自分が理解できない境地に立たされて、
 こみ上げるは、 笑い。


「ははっ、…は、……はは は」


 だが
 途中でそれも、声 にならなくなった。
 喉が、自分の喉ではない ようだ。

 声が、 枯れて いく。


 熱い。 
 どうやら喉が掻っ切られたようだ。
 声にならぬものは、ごぼごぼ、と泡立つような音を立てている。

 最期の、嗚呼。力 で





「伝説…ねぇ」

 最初は半信半疑。伝説なんて莫迦らしい。
“嘘”のカタマリが“伝説”なんだ、と知っていたから。

 伝説というのは、愚かな人間共が【憧れ】って奴を形にしたものなんだよ。


「もしそれが本当だっていうんなら、それは人間じゃないね」
 そんな事をいとも平気に言っていたあの頃が、妙に懐かしい。

 そんな馬鹿馬鹿しい伝説が、何時しか周りの話で、矢鱈と現実味を帯びてきていたある日。
 何処かで伝え聞いた風が、ひゅう、と耳の近くで鳴り響く。



 はらり



 落ちたのは、一枚の、黒い鳥の羽根、だけだった。
 見た先に夥しい程の骸。ヒト、トリ、イヌ、ムシ。
「……ど、うして?」
 言葉に、ならなかった。姿すら、見ていないのに。







 あの方が姿を消してから、数か月が経ってしまった。
 死ぬ訳はない。
 あの方は人間じゃないのだから。きっと、何食わぬ顔で又、私たちの前に現れるでしょう。
 そう、思ってからもう、数か月も経ってしまった。
 あの方を思うのに疲れた彼は、いつも私の傍に居てくれた。そして、そっと抱き締めて、居てくれた。
 これも悪くない、と私は口にはせずとも、そう思い始めていた。
「もしかしたら、しあわせ、ってこういうことをいうのかもしれないわね」
 空も青い。
 空気は前よりも爽やかになってきた。
 考えてみれば、これが“普通”の幸福だったということに、私はきづく。
 もしかしたら、私も疲れていたのかもしれない。ただ見返りのない“待つ”ということに。
 彼はその時も私と共にあり、私を支えてくれていた。
 すき。
 そんな想いが、彼と私の間にはいつしかぴったりになっていて。けれど、私は彼を愛せずにいる。
 簡単にあの方を忘られる程、若くもない。
 だから、悪い、そう想う。幸せの間に、ずっと苦悩があった。
 そうであるからこそ、私はずっと、誰かに赦されたくなかった。蔑まれたかった。
 彼の腕のなかにいれば、これ以上にないくらいに幸せだったのに。

 そんな想いで彼の腕のなか、いつものとおり暖かな風を感じていた。彼からは、太陽の匂いがする。
 一閃、冷えた風が吹く。
 ひゅう。
 なんだろう、顔を上げると、ぼとぼと、と音立てて、彼はばらばらに崩れていた。
 目の前には意味の分からぬ、赤。赤。あか。
 赤を浴びた私。畳に広がっている赤。飛び散っている赤。
 それが血で、ばらばらになったものが、彼の体と知った時、私…。。。。。





「そおれ、金がほしいか!ならやるわい」
 (自称)鋼鉄の筋肉を身に纏った男。
 金貨が溢れている。
 ざらざらざらざら。
「拙僧の筋肉を見、金に酔い痴れろ!」
 金貨の風呂に入っている。
 金貨を投げている。
「はっ!腹筋千回始めるであります!」
 部下の筋肉ダルマは真面目だ。
 愉快に笑う男の目の前で、刃の音。
 ざくざくざくざくざくざく。
 腹筋中に崩れ落ちていく筋肉共。
「なっ…?!なんだと!拙僧の筋肉隊がぁ…」
 無念そうに声を詰まらせ、部下の屍を見、
「貴様、筋肉も足りん癖に…」
 傍に来ていた黒い者に気付き目を遣り、
「…なっ?」
 その表情。べぇっと舌を出して挑発。
 よく見れば、その舌は縫った痕がある短いもの。
 筋肉に関わりの無い事は、実はどうでも良い。
 失敬な痩せぎすであると威嚇にどん、と足を踏み鳴らす。
「…ほぅ?」
 足を踏み鳴らした時に、体からじゃらじゃらと落ちた小判を拾う黒い者。
 言葉等要らぬ。その行動は乞食と呼ぶに相応しい。
 筋肉隊と呼ばれた屍の中、それを放っておいて、
「拙僧の下に来れば、金は幾らでも遣ろうぞ」


 ひゅう。

 冷たい、風。

 言葉は、無い。


 黒い者に触れたが、その手は生き物とは思えぬ程、冷たい。
 黒い者が片膝を着いて、其処に跪いていた。
 是が、どういう事か、判るだろうか。
「       」。
 

 喜びのあまり(自称)筋肉男は、黒い者を抱き締めた。

 強く、つよく。


***********

 女性口調になったあたりから、急に変わったな、と思ったんですが(笑)止まらん


 誰が誰か、わかりそうなもんですが。。
 わかりますか?
 まぁ最後のはバレバレ(?)つか他になし。


 最後のは……
 これは読み手によって解釈がちがうってことでいいんです

だから、あんな感じでおわり。
解説の気は、ないです


 任せます。
 意見もまってます!
 解釈について、だけ。
以上!


2009/03/01 09:35:16