※ 神崎とパー子が恋人設定。
※ 神崎のガキの頃の話はキレイに捏造
※ 神崎の語り



Promise


 初めてキスをしたのは、確か小学生の時だった。でもそれは事故みたいなもので、相手の女の子が泣いてしまって、こっちもわけが分からないからアワアワしていたら、センコーに怒られた。その日から、ただのヤクザの息子なんかじゃなくって、マジでヤバイヤツとか言われるようになっただなんて、バカバカしい昔の話。元からケンカなんかはしていたけれど、俺はそんなに体がデカイほうでもなかったから、ぶっちゃけ強くてどうしようもないってほどでもなかった。俺より大きいヤツには負ける程度の。ただ、負けたら今度は負けてたまるか、ってんで得物を用意してちゃんとリベンジカマしてやるぐらいの気概はあったけど。負けなしってワケじゃなかった。そんな俺も女はあんまり得意じゃなかったんで、周りのヤツらとかトッポイ感じの、スカしたヤツなんかが得意なスカートめくりとかオッパイタッチなんてモンはしない。硬派といえば聞こえはいいが、あんなもんは恥ずかしいだろうと思っているからだ。ガキっぽいとも思うし。あああもう、俺は苦手なんだって! それなのに走り回っていたらゴチーンとぶつかった拍子に頭が痛い、と思って顔を上げたら口と口が…ってだけのただの事故。女の子は泣くし、センコーは怒るし。俺は余計に女とかどうかって面倒になっていった。
 そんなもんがファーストキスに入るもんかという話もあるけど、気持ちはともあれ、物理的にそうなっちまったんだから相手も泣いたわけで。それ以来俺はヤクザ・ケンカ以外でも要注意人物となった。それ以来、女がどうとかいう話のタネになったことはほとんどないけれど、その時泣いたコは、確か俺がちょとかわいいなって思ってたコだったから、それこそデキてラッキーぐらいの気持ちはあったんだ。実は。ガキの頃でも男なんてそれこそ、そういうもんだと思うけどな。

 次にしたキスは、まぁちゃんとした『恋人』とだ。
 俺が生まれて初めて付き合った女。今だってソイツと続いてる。要は、ソイツとしかそういう関係はないわけだ。もし別れることになったら、しばらく一人なんだろうなとは感じてる。そうだよ、俺はモテない。分かってる。というか、女の好みはよくわからん。そういう意味では、俺はまだまだ女が苦手というまんまだ。昔と変わってない。
 初めてかわしたキスは、どっちも顔が真っ赤で、それがなんだか笑えた。
 不良だなんて呼ばれていても、疎い俺たちはたぶん似てるんだろう。
「先輩、ウチ、…なんか、へんな感じっス」
 パー子が身を寄せてくる。それだけのことが、すごくしあわせで、ドキドキして、恥ずかしくて、むずがゆい。俺もへんな感じっス。そういったら、パー子は色気も艶気もなくバカ笑いした。やっぱり俺たちは似た者同士なんだろう。

 そんなキスをしてから、しばらく経った今。
 春休みだしバイト休みだし先輩会いたいッス〜〜〜とかいう真っ正直でドッキリするようなメールがパー子から来たので、近くの廃墟みたいな広場で待ち合わせした。ここは建物が古いからガキどものかくれんぼの場所みたいになっているが、夕方になると幽霊スポットとかいう噂もあるから誰もいない。前に東条とメガネ委員長の出馬が闘ってたあの場所。俺たちはいつもここで待ち合わせる。たぶん、ここがパー子との始まりの場所だから。
「おぃ〜〜っす、ちょい久っスね先輩」
「お前がバイト入れてっからだろ」
 いつものようにくだらない話をして、パー子は別に気に入ってないと知っているヨーグルッチを差し入れてやる。一応パー子は飲むけれど、神崎のように感激はしない。それだけで生きてるたのしさレベルの差がパネェっていうのに。そう説いて理解できるヤツが俺の周りにはいないけれど、それでも別にかまわなかった。
「や、お金貯めて、ちょっと遠出とかしたいじゃないッスか」
「と、遠出…?!」
 俺の思考はソッコーでエロいほうへ飛んだ。ホテルとか行っちゃうのか。そしてああいうことをしちゃうんじゃねぇのか俺たち。付き合ってるし。とか思っていることを悟られるのはあんまりなので、咳払いでごまかした。と、パー子がじぃ〜っと俺を見ている。睨んでいる。その眼差しは、見透かされたという感じで。…居心地わるい。
「な、んだよ」
「先輩、エッチなこと考えたじゃないッスかぁ〜」
「う…」
 バレてる。顔に出るのは勘弁してくれ。
 ついでにいうと、まだヤッてないのか、と笑うのもやめてくれ。ゆっくりでいいし、俺たちのスピードでいいと思ってるし、パー子もそのへんは奥手みたいだから、俺たちは俺たちでうまくやるっつぅの。
「ディズニーランドとか! 行きたいんッス!!」
「なんで女っつぅのはすぐディズニーにつなげたがんのかねぇ…」
 俺の頭の中には姪の二葉が浮かんでいた。俺はあんなネズミとかのキグルミどもに興味なんかないんだが。目を輝かせてそんなことを言われれば、いってみようかなという気にもなるってもんだ。
「パー子」
 呼んで軽く口で口にふれた。
「近々、いこうぜ。どーせおめーのことだ、自分らで稼いだ金で行きてえっていうんだろ? 俺もバイトして貯めてみるわ」
「おっしゃ〜〜〜〜! やったぁあああああぁぁぁあ」
 ガッツポーズではしゃぐ姿は、かわいらしい女子というよりは、試合後の女子プロレスラーみたいな迫力がある。そんなとこもおもしろくて俺はいいと思うんだけど。バイトか、東条に聞いてみっかな。俺としても、自分の彼女のためならごく当たり前の労働もいいなって思うとこはある。だから、兄貴はたぶんヤクザを継がないと背を向けたんだろうなと思うこともある。この歳になって分かってきた。そういう、よくわかんないけどごく当たり前のしあわせみたいなもん。パー子が抱き着いて両腕を俺の腕に絡ませてくる。
「約束ッスよ!」
「お…、おう」
 パー子は俺の顔に間近に迫ってきて、俺はどきりとして息をのんだ。コイツの唐突な行動は読めない。だから楽しいっていうのもあるんだけど。俺の顔がパー子の目玉の中に移るのが見えるくらいに近づいて、そしてキスもしない。なにがしたいのかよく分からんヤツ。
「12回目のちゅーで、初めて口ピ外してシてくれたっス」
 なんだろうこれ。超ハズイような気がするんっスけど……。


15.04.24

※ 久々にパソ書き

ハイ、ぽっと出の話ですいません!!
なんとなく浮かんだ、いつものちゅーはピアスが邪魔だった、という話
とくにオチも続きもたぶんないと思うんだけど。こういう小ネタはこの二人は結構出てくるかな。
神崎くんのちゅーに関するどうでもいい話ですけど、こういう青臭ラブが好きだったりします。いつもエロいぜ俺はえろいんだぜとかいってますが、年々そうでも無くなってますからね(笑)そう言い続けるけどね、これからも。
つうか早く神崎とパー子とか、神崎と寧々の話とか終わらせろよって感じだけど、最近は神崎くんネタを書いてもあんまり喜ばれてなさそうな気もしてるんで、しばらくは放置になりそうです。思いついたときに好きなようにやります。

song of プラネタリウム / いきものがかり
2015/04/24 18:04:47