※ 姫川と久我山の過去捏造だよまたぁ…

※ 姫川×久我山のレイプっぽい話
※ 幸せのみをお望みの方はバックプリーズ


 人の心を変えるのはカネの力だ。ずうっとそうだと思って生きてきた。だからカネがあれば将来も、ほしいものも、約束された安定した道も、すべてを買えるのだと。そうして得たものたちに何の意味があるのか、そんなことを考えるのは時間のムダであって、とても不毛なことだ。そう、幼い彼らには分からなかった。カネの力でほとんどのものは買えてしまうけれど、変わってしまうのもカネの力だということに。


彼の彼女の失望



 突き出された通達に、姫川は言葉を失う。許婚がいると言われていたものの、この名前を見ることになるとは。姫川の記憶は遠い過去へ遡っていた。
 サンマルクスの小学部で、姫川はいつものように携帯ゲーム機で通信をしていた。その相手は決まって久我山。彼は抜群にゲームが上手い。他の坊ちゃんらは下手なやつも多かった。そして、そんなインドアなくせにスポーツだってできた。ゲームなら姫川も負けないが、スポーツでは完璧に負けていたし、勉強ではさらに負けていた。ただし、楽器を弾くのは姫川の方が上手い。上手い具合に競って楽しんでいた。そういう友達がいるということは楽しいことなのだ。サンマルクスがいくら金持ち学校だからといって、この2人は飛び抜けて金持ちだったし、過保護にもされていたので、他の生徒とうまく溶け込む要素が昔からなかった。だから、2人で遊ぶことが増えていた。特に久我山はとても過保護にされているあまり、姿を消すことも多かった。そんなある日、姫川は学校の教室で昼休みに久我山に一枚のチケットを渡した。
「久我山、これ」
 久我山はそれを受け取って眺めている。コンサートのチケットだった。不思議そうに見返してくる。クリクリと大きな目が姫川のことを容赦なく見返してくると、見透かされたような気持ちになる。そもそも、やましいことなんて何もないのだけれど。
「これ、どうしたんだ?」
 久我山の頬が少し赤い。コンサートというと大人っぽいから、そういう世界にあこがれめいたものがあるのだ。その辺りはまだまだ姫川も久我山も子供なので理解できる。大人っぽい世界に足を踏み入れるかもしれないという期待感に胸を膨らませ、久我山は興奮している。だが、そういうことじゃない。姫川はわずかに首を横に振っていう。
「これに俺、出ることになったから、見に来いよ。言ってただろ、前に。楽器できるなんていいなって」
 久我山は楽器は苦手だ。リコーダーも不得意。芸術家の気質は持ち合わせてないらしく、楽器でセッションができないことだけが姫川にとってはちょっとだけ不満だった。
 だが、楽譜を読むのが苦手な段階で、久我山自身が見切りをつけたのだった。勉強はできるのにへんなやつだなあとその時は姫川は言ったものだ。もちろん、久我山にしてみても同じ思いではあったのだが。勉強はできないのに、楽譜はスラスラ読めるんだからすごいよなぁ。その情熱を勉強に向けられたら、君は間違いなく天才になるだろう、と。その言い方は何だか大人びていて、姫川も内心驚いたものだ。
 久我山はそのチケットを見て、さらに目をキラキラと輝かせた。そして嬉しそうに笑顔を見せて深く頷いた。きゅっとその手を握り締めて大事そうにチケットを胸に寄せた。
「ああ!必ずいくよ」
 そんな様子を見ていたクラスの誰かの声が聞こえた。顔も出さずにコソコソいうガキども。そういうヤツらには姫川は昔から虫唾が走るのだった。
「おまえらー、ホモかよ」
「えっ、ずいぶん仲良いと思ってたら、ホモなのかよぉ〜」
「きンも〜っ」
 姫川が立ち上がって椅子を蹴り飛ばした。ホモ扱いされて腹が立ったのだ。誰だ、といっても手を挙げるものなどいるはずもない。周りの生徒たちはニヤニヤ笑っている。ただ、久我山は不思議そうに首を傾げている。なんというマヌケな顔をしてこいつは。だから姫川はいつも久我山をほっとけなかったのだ。いざという時にポカンとしてる甘さがあるから。
「姫川、ほっとけばいいじゃないか」
 姫川はいつも子供で、久我山はいつも大人だった。だが、今回は違っていたみたいだ。後になってからコッソリと聞かれた。
「なあ、ところで姫川。……ほもってなんだ?」
「………機会があったら、親に聞けよ!」
 心配して損した。そんな気がした姫川だった。その時はかなりがくりとした。あの後、その話について触れたことはない。だから、触れるのはもう何年越しになるのだろうか。姫川は許嫁の名前を見て思ったのがそれだ。なぜなら、今や公然の事実ではあるが、姫川はずぅっと知らない現実だったのだから。簡単に受け入れられるわけもなく、久々に顔を合わせた母親の前でいってしまっていた。
「これ、どーゆうことだよ?! 久我山潮、って……嘘だろぉ、あいつ、ホモだったのかよ〜〜」
 字面を見ただけで、早くも姫川は泣きそうだった。俺はホモじゃねえ。そして、どっちがモロッコに行くんだ、と嘆いた。そんな中学の暮れ時。本気でちょん切りたくなかった。思わず股間を抑えたら、母親がケラケラと笑うのだった。
「大丈夫よ。潮くんは、本当は女のコだって。まだ隠してるんだけど、あんたと婚約したらカミングアウトするんだって」
「何言ってんだババア! 潮くんって呼んでんじゃねーか!」
 信じられるはずもない。姫川は部屋に戻ってこの考えられない事態を脳内で何とか整理したくて、ぐるぐると考えまくることになったのだった。今までのあの時間はなんだったのか、意味が分からなかった。その時ぼそりと聞こえた母親の声を、姫川母親の今でも覚えている。
「女のコとして生まれたのに、なんでそんな可哀想なことをしたんだろう…。別に大昔じゃあるまいし、後継が女じゃダメなんて…」
 忘れたくったって忘れようもない。
 中等部最後の春休みの思い出。




 あの日から姫川春休み徹底的に久我山のことをどう見ていいか分からないし、どんな顔をして会えばいいかも分からなくて、ひたすらに避け続けた。まだ同級生たちも知らない久我山の秘密を、姫川だけが知ってしまった。その重さに押しつぶされそうな気さえしていた。どうしてこんな話になったのか、姫川はまったく意味が分からなかった。そんな気持ちでいるのに、久我山は相変わらずの様子で何事もないことのようにたまに学校で見かけた。クラスが離れたのは姫川にとっては好都合だった。顔を合わせなくても普通のことになってしまうし、その間におかしな話も立ち消えになってしまうだろう。たまに交わすLINEでの会話だけが2人とってのちいくて細いつながりとなっていた。相変わらず姫川は勉強などできなかったし、問題ばかり起こしていた。それは中学の時もそうだったけれど、授業がくだらなくてつまらなくて堪らなかったせいだ。
「ざけんな。金払って、ンな糞みてーな話を聞かせるとかありえねぇ」
 先生に向けてこんなことをいう生徒はサンマルクス修道院では初めての生徒だった。見た目もそうだがどう扱っても姫川竜也という少年は不良でしかなかった。その保護者である姫川氏に学園側は連絡を試みるが、基本は執事しか対応しないといった有様で、親とはほとんど連絡が取れることはなかった。実をいうと、海外にいたのでまだ当時の携帯電話ではつながらなかった。国際電話をホテルなどにかけるしか連絡を取る術がなかったのである。もちろんそうした連絡が入ることは執事の蓮井から逐一報告を受けていたはずだったが、遠く離れた国外では子供の面倒など見られるはずもなく、さらに、子供のそうした態度は祖父に似たのものだと言い張る母親は危険なことさえしなきゃいいといっていたのだ。驚くほどの放任主義の家で姫川は育った。自由は、いつでも姫川少年を孤独にした。だから幼い頃から知っていた。幸せと不幸は常に隣り合わせにあるのだということに。
 また姫川はその日も教師に文句をいって保健室に向かった。保健室は鍵がかかって開いていなかった。ガタガタとやってみても中には誰もいないようだった。腹が立つので蹴破ってやろうかと思ったが、さすがにやめておいた。これはただの腹の虫が収まらず暴れたいだけのガキ臭い衝動なのだと分かっていたからだ。この頃からずっと思っていた。自分の力を試したい、と。ちゃんと喧嘩もしてみたかったし、学校を仕切ってもみたかった。こうしたいと思い始めたのはいつからだったろう。姫川は喧嘩もさせてもらえなかったけれど、それはこの学校という場所が悪いのだと思っていた。本当はどうだったのか。高いカネを支払って卒業までよろしく、と投げ置く親の放置など糞食らえだと思っていた。だからカネなど自分でも作れると小遣いの一部を事業資金に充ててゲーム会社と株に手を出したのが3年ほど前のこと。小遣いなんかいらねぇよといってやれるくらいに稼いで、これで一目置かれたことは分かっていた。だが、こうなることで余計に子供らしいことなんてできなくなってしまった。すべて裏目に出ている。姫川は何もかもがつまらなくなってしまっていた。その時に、あの久我山の話だ。なんだかやるせない思いを抱えてモヤモヤばかりを増幅させながら、姫川は仕方なしに屋上に向かった。

 キィ、と耳につんと響く嫌な音色。不協和音にしかなり得ないこの不快な音を作ったのはどこの誰だ。姫川は音楽家の耳を持っていたからそんなことをぶつくさといいながら屋上へと出て扉を閉めた。閉める時はどうしてかそんな不快な音は出なかった。ゆるい風が全身を撫ぜる。春風が心地好くいくらか気分も晴れそうだと感じた。広い屋上は格好のサボリスペースではあるものの、晴れの日しか使えないのが難点だった。関東地方には梅雨が訪れるためその時期はまったく使えず、使っていない教室を探すのがまたひと手間になるのだ。「ならばサボらなきゃいいのに」いつもそういって久我山は涼しい顔で笑っていたけれど。
「…姫川、か?」
 聞き覚えのある懐かしい声。しばらく話をしていなかった、久我山の声だった。いつものようにスラリと立って華奢なのも今に始まったことではない。姫川が振り向いた時に、久我山は薄く笑っていた。数ヶ月前に聞いた話のことをもしかしたらこいつは知らないのかもしれない、と顔を見た途端に思った。あれは久我山の親が決めたむちゃなことで、それに賛同しない久我山はどうすることもできずにもだもだしていたのかもしれない。否、むしろそうであってほしいと思ったのは姫川の気持ちだ。
「くがやま…」
 いつもと変わらない態度だけれど、どこかふらふらしていて顔色も優れなかった。元々身体の弱いところがあったから、今もそうなのかもしれない。
「久しぶり」
「おう」
「君の話、よく聞くよ。手のつけられない生徒だなんて、悪い噂ばかりだ」
「ふん、喧嘩もできねぇ腰抜けどもの集まりだからな。ところで───…顔色、悪ぃんじゃねぇのか」
「有難う。私は大丈夫だ、少し貧血気味でね。さっき保健室にいったが教諭がいなかったみたいでね」
「行動ルート俺と一緒かよ」
「ははっ、私たちは似た者同士だ」
 久我山の少し伸びた髪がさわさわと温かな風に揺れる。眩しそうに目を細めて、己の手をひさしにしながら静かに足音も立てず歩く久我山の姿は、とても品のあるお坊ちゃんとしか思えなかった。だから、あり得ないともう一度強く姫川は感じることができた。久我山は嘘なんていわない。いうはずがないと。
「なあ久我山、この間へんな話聞いたんだが」
「──へんな話?」
「俺に許嫁がいるって。そいつは昔から聞いてたけど、それが───…」
 声にならない。見る見るうちに久我山は頬を桃色に染めて微笑み、小さく頷いたのだ。その頷きの意味はなんなのか、瞬時には姫川は理解できないでいた。だが、どこか嬉しそうだ。久我山は笑っている。照れている。まるで、女みたいだ、と初めて思った。姫川はその自分の思いに、ゾッとした。そんなはずないのに。
「な、なぁ…? 嘘だろ? 久我山、お前は男だろ。どう見たって、お前は男だ……」
「そ、そうか。そういうふうに…。いや、すまない、姫川。私は本当に」
 姫川はすでに久我山の真ん前にいた。180cm以上ある姫川から比べれば久我山は160cmほどしかないのでかなり小さい。壁際に追い詰めて上から睨みつける。その迫力と姫川の不機嫌を前面に押し出した表情に、久我山の謝罪の言葉は失われていた。ただ見上げるしかできない。まさかこんな目で見られるだなんて思ってもみなかった。さすがに久我山もショックを受けたが、今まで久我山は嘘をつき続けてきたのである。仕方がないのかもしれない。久我山はそんな姫川から目を逸らして頭を垂れた。深々と謝罪の意を込めて。
「私は本当に、身も心も女だ。そのことについては、隠していて悪かった。本当にすまない……」
 何が身も心も女だ、だ。姫川は謝罪の言葉を吐き出す久我山の嘘が信じられなかった。そして、許せないとも思った。ならば今までの友情は何だったのだ。嘘をつかれて友も何もないだろう。だが、友の関係が続くのであれば問題はないはずだ。だが許嫁という言葉がそれをさの邪魔をする。久我山は強い視線で姫川のメンチから真っ向勝負を受ける。久我山の意思は姫川の視線の鋭さなどものともしない。睨み相手にはどこかやりづらい相手だった。
「私は、お前のことが好きだ」
 姫川は、急にそんなことをいわれてポカンとした。はっ? と上手く反応すらできない。好きとか嫌いとか、今はそういう話をする時じゃない。
「お前は、私の惚れた男だ。好きだ、姫川」
「は、あ、…え?」
「だから、許嫁と認めてほしい。私のことを。お前の、姫川の妻として」
 いや、だから、そういう話をしてるんじゃなくて。姫川の頭の中はこんがらがってきた。グチャグチャで絡まっている。脳内混線模様。どうすればいいのだ。
「おい、その反応はさすがに…いくら私でも、あんまりじゃないか、と思う……」
 久我山が目を逸らして俯いた。好きだ、惚れている、と告白した。一世一代の愛の告白だというのに、驚きのあまり固まっている姫川の姿しかないのだから。久我山としてもさすがにショックだった。これほどまでに女として見られていないことについては、やはり胸が痛むのだ。
「急にそんなこといってもムリだとは分かっているが、徐々にでいい。少しづつ妻と認めてくれれば、それで」
 だから、話が飛びすぎているというのだ。妻とか許嫁だとか。そういうことのすべてが姫川は頭にきていた。信じられないことを信じられないシチュエーションで伝えられているのだ。背中にゾクゾクとしたものが走る。そんなことなどお構いなしに姫川は、乱暴に久我山の胸倉を掴んで睨みつけた。
「信じないっていっただろ…! お前が女だってんなら、見せてみろよ、証拠ならあんだろ…」
 それが嘘じゃないんなら、その身体にな。そう声にはしなかったけれど、制服のボタンを勢いよく破り取った。バリバリという破裂音が耳をつんざく。服の前が肌蹴て、中に着ているシャツが露わになる。胸元を見たがそこは平たいままだったし、やはり久我山は女じゃなくてホモなんだと思うに至る。下もついてるはずだ。もはや疑うべくもなかった。久我山の表情が恐怖と驚きに歪んでいた。こんな乱暴なことをされるだなんて思ってもみなかったのだろう。それでも久我山は違う、と首を横に振っていた。どうしてそこまでいい張るのか意味がわからない。そういうのとのすべてが頭にくる要因だ。もはや姫川に迷いはなかった。そのシャツを破いた。襟首を掴んでそのまま勢いよく下へと引いた。姫川は身体も大きく力もある。布を破いてしまうのは容易なことだった。
「な、…っ、く、がやま」
 言葉が見つからない。サラシが巻かれていた。こいつはこんな窮屈にずっと胸の存在を隠していたのか、とシャツを破いてから初めて気づく。ありえないことが現実にあったのだと思う瞬間だった。久我山はそれを隠そうとはしていなかったけれど、どうすればいいのか分からず腰が引けていた。だが、それでも信じたくなかった。それならば問題なく久我山は許嫁として存在出来てしまうじゃないか。それが信じたくない一番のこと。
「お前に見られるなら…それは構わないよ。でも、こんな形っていうのは、少し、いやだ………」
 許嫁にするのが嫌なら、許嫁になるのが嫌になるように仕向ければいい。姫川は咄嗟にそう思った。どこか頭の中がおかしくなっていたのだろう。それに、急に女っぽく身を捩る久我山の姿が官能的にも見えた。背中に冷たいものが走るのが、まるで性的興奮みたいだと思った。どこか噛み合わない歯車のようだ。姫川の顔は冷たくて無表情のままだった。それなのに行動だけが突飛。久我山の身を守るサラシすら剥ぎ取ってしまうと、小振りで揉み甲斐のなさそうな胸が現れた。だが、それは確かに女しか持ちえないもの。小さな膨らみが姫川の視覚に直接突き刺さる。その胸に手をやると、姫川の大きな手には余る。人差し指で胸の頂をつんつんとやる。久我山は屋上という場所でこんなあられもない姿にされ、不安でないはずがない。さすがに嫌がって身を固くした。姫川はそんな久我山を見下ろしながら、追い詰めながら熱くも冷たい思考に驚いてもいた。
「頼む…っ、からこんなところで…」
 嫁にしてほしいと望んだクセにとなじってやりたくて堪らなかった。どうせ、このまま続けていれば感じてヨガるくせに。姫川は止まらなかった。壁に追い詰めた久我山の下衣をも剥ぎ取ろうとした。さすがに久我山も抵抗した。逃げようとしたが、その力の差は歴然だった。元よりスポーツ自体は姫川よりも久我山のが得意だったのだ。足をバタつかせたところで、押さえつけられてしまえば、高校生ともなると大人と変わらないその力には、女の身では敵うはずもない。下も脱がされて下着姿にされた。だが男物のその下着はぶかぶかで不恰好で、久我山には不釣り合いだと姫川は感じた。それを下げると女物の小さな下着が覗く。ああ、これだ。これが今まで隠してきた久我山潮なのか。そう思うとおかしな高揚があった。性的な興奮とは違う、もっと残酷で、もっと野生的なものだった。下着に手をかけた。久我山が必死に首を横に振っている。姫川の手を弱々しい生っ白い両手で掴んで阻止しようとぐ、と力を入れる。
「お願いだ……これ以上やめてくれ…」
「やめろといわれてやめるやつがいるかよ」
 久我山が泣きそうな顔をして、叫ばないけれど小さな悲鳴をあげる。吐き出された言葉は懇願の祈りのようだ。好きだとかいったんじゃねぇかよ。それは口だけだ。こんなことをされた嫌だろうし、嫌いにもなるだろう。だからこそ、こうするんだ。ずるりと下着を下げるてしまう。
「あっ」
 声をあげたのは、意外にも姫川だった。もちろん、男でした、なんてオチなんかじゃない。久我山が涙を零してひぃ、ひ、と喉を鳴らしている。もはや涙を隠すわけじゃなく、慌てて下着を上げた。もはや、女以外の何者でもなかった。ちゃんと見た。付いてなかったのも。そういえばいっていた。貧血気味で調子が悪いのだと。どうやら女のコの日だったようで。姫川はそれらを目の当たりにして、はっと我に返ったのだ。破けた布の切れ端を見下ろして、とんでもないことをしてしまったという思いだけがモヤモヤと蟠った。
「……す、すまねぇ」
 久我山は声を出さずに泣いていた。久我山の身体に、自分の制服の上着をかけてやる。これでは友達どころの話じゃない。絶交だ、そう思った。そう言いつけられるためにやったのにも関わらず、いざそうなってみるとどうしたらいいか分からないのだった。久我山はどこかぼうっとした顔をして、それでも己の身を守るように姫川の大きなサイズの制服を巻き付けるようにして、身体を隠した。ほとんど産まれたまんまのその弱々しい姿を布で隠した。
「今、蓮井を呼ぶ。着替え、持ってきてもらうから」
「………ああ」
 それ以外、2人の間では何の会話もなかった。怖かった。どうなってしまうのか、見当もつかなくて。これからの何気ないこともすべて、分からなかった。その不透明さが怖かった。力なくくたりとなったままの久我山の様子すらどこか空恐ろしかった。卑怯なことをするのは何とも思わないけれど、それを久我山には向けてしまったことに後悔はあった。それこそ、山のように。だが、起こってしまったことはもう戻せない。隠すことならカネでいくらでもできるのだけれど。



 ただ、それからしばらくしてから姫川が転校することになったけれど、あの時のことを親や周りにいった様子はなかった。その後、高校三年になって悪魔の絵を奪いに行くまで、会うことも連絡を取り合うこともなかった。
 それ以降については、皆さまもご存知の通りだ。恐れることなんて何もなかったし、怒れることも何もなかったのだと気付くまで、あと数年。



15.04.02

一応、姫川夫妻のシリーズとつながる、悪い話だと思いつつ書いたんだけど……うーん、どうかな。私的に微妙であります。(敬礼っ!)
ここまで姫川が邪道なのもありかなぁと思って書きました。

レイプとまではいかないんだけど、警察に駆け込んだら久我山が1000パー勝てるっていうね。まぁこういうショックなこともあっての…だとどうなのか。結婚しないかなぁ。好きなら、それはそれとして、結婚するかなあ…。


複雑なんです。姫川は裏切られたと感じたんです。でも、やりすぎたと感じて反省するんだけど、複雑なんです。裏切られてるから。
その辺許せないところがまだまだ子供なんです。そういうところが伝わればいいなぁ〜


あとは、子供の時のエピソードが書きたかった、というのもある。
ほも、っていわれてその意味がわからない久我山のことなんかは、ちょっと実話的な話が混じっていたりしますw

うーん、わりかしこの話は実話に基づいた部分をちりばめたのが多いかも知んない…。そう考えると私的には微妙なんだけれど。。

title :
2015/04/02 20:48:01