ひとことで、こんなにも、世の中が、ひっくりかえる。


 くだらない場所だと思っていた、『学校』という場所は、とある日から「大嫌い」な場所に変わることとなった。

 

   *****


 みんな持っている、自分も持っている、携帯機器は世界中とつながっている。
 すごくステキなことで、そして、すごく怖いことだ。

 公園や学校の校庭なんかで、遊具に座りながらやっているPSP、DS…実は世界とつながっている機械。
 みんな、目の前の友だちを見ないで、目をギラギラさせながら“ここにはいない誰か”と一生懸命につながろう、つながろうとしている。すぐ近くにいる友だちに、ひそかに飛ばすメールっていう名の“思念”。他愛もないひとことのつもりで。

 特に、意味など、何もない。

 親は「金が無い」ってイライラして、子どもはイライラした親の姿から実は、すこしでも遠くへ離れたくって、こころの奥では行きたくない! と思ってる、けれど、ついていけない授業のせいで行かなくちゃならない学習塾へ、ただ人形みたいに「はい、はい」って返事をしながら、親が背中を向けたときにだけ苦虫を噛み潰したような表情をして、感情を押し殺して、黙って通う。
 結局は今やりたいゲームのことを思いながらする『勉強』なんて何の意味もない。
 家に帰っても、親は「宿題はやったのか」と、煙たい。
 息が、詰まる。

 現実なんて、こんなふうに生きてきたのなら、目を背けたくなるばかりなのかもしれない。


 テストの点数が下がった。
「ああ、どうしてアンタはこんなふうに」「ちゃんと塾に通ってるのに」

 …『してあげてるのに』
と無言で言うのは、おとなじゃなくても絶対に思考を鈍らせることなのに。
 何年生きてるのですか?
 お願いしていませんよね?
 言ってもいいですか?
 『通ってあげてるのに』。
 『じゃあ解いて見せてください』――と。


 自分自身では分からない“ワダカマリ”抱え、生きていく。おとなだけじゃなく、子どもだけでもなく、その中間のハンパな存在たちも。
 存在はハンパでも『思考』はハンパ者じゃない、すべての者たちが抱えている。
 一人=個人
 プライベート<個人>とみんな<集団>の宙ぶらりんのなかで、生きていく。


 胸を暗く、重くさせる“ワダカマリ”から逃れる術は、きっとこの世界で見つけられっこない、とふとした拍子にきづく。そのことが○か×かなどという疑問は、もちろんあるわけもない。世のなかでいちばん重要で、いちばん要らないものは『第一印象』という愚かなものだ。
 第一印象を刺激するその逃げ方というのは、<現実>ではないどこかへ自分が消え去ってしまうこと、だ。
 ありえない。
 しかし、今ならできる。今、すぐにでも。

 場所はかぎられた空間しかないのだけれど、<あの世>にいくか、<仮想世界>へダイブするか。

 けれど、どちらも今自分たちが生きている<ここ>と紙一重だということに、ハマればハマるほどにきづかない。
 個人を望み、他人を拒絶しながらも望む他人とのつながり。人はどんどん矛盾の螺旋に駆け上がっている。
 そうして望んだ<仮想世界>での息抜きという、愉しさがあってこその<現実世界>へと変貌していく。


 ふと思いついた、現実の友だちへ飛ばした“思想”。そして何の気もなくその友だちが無表情に返す“思想”。ひとつずつのオフザケという名のQ&A。
 ムシャクシャしていたわけでもなく、嫌いな相手がいたわけでもない。しいていえば親と学校が嫌だと思うくらい。
 その証拠に、互いに飛ばしあった声なき言葉たちは、速読できそうなくらい短い言葉たち。



   *****


>アイツ、シカトな


>オッケー



**********

あとがき。
ミスチルのHANABIを聞きながら無心にポチポチとうっていて、だんだんこのダーク路線にイライラしてきた。

元々は、親指(ケータイメール)でつながった、浅はかなコイビトたちを揶揄したようなものを小ネタ、って感じで短い話をたくさん書き綴ろう、と思って書き始めたものです。

もちろん、ネットで知り合って結婚した方もいるし、こういう皮肉を書くのって実はすごく勇気がいることなんすよ。たたかれそうなネタですから。まぁたたくほどのもんを書けるわけでなし、自分は書きたいものを書いていきますが。
また逆に、ネットのつながりでしあわせになったりした話も、書いてみたいんです。
ネットの怖さもよさも、一応は心得ているつもりですから。ネット歴もまぁまぁありますしね。……でも交流はあんまりないかなぁ…。


で、最初はイジメられっこの話のはずだったのに、なぜかイジメっこの話に変わってた(笑)

むしろ、イジメられっこの心情はよく見るんだけど、イジメっこの心情っていうのはあまり描かれないし。しかも内容がありそうで薄いっていうデキの悪さ。
ここまで読んでくれてありがとうございました。2008・12・9


2008/12/09 22:22:19