深海にて30


※ ただのいちゃぺろ

 恋人とのふれあいは、まさに幸せのひとことに尽きる。
 ふにふに、とやわらかくてあたたかなそこに触れる。そうすると葵はビクリと体全体にまるで電気が走ったみたいに弱いところを摩るとビクつくものだから、男鹿はそんな彼女の様子を見てとてもいやらしくていじめたい気分になってしまう。ほんとうはそこだけでは満足しないのを知りながら、髪を撫でる。そうすると葵は目を細めて男鹿の顔を、その表情を見ようとでもするかのように見つめるから、男鹿はほくそ笑む様を見られないようにそのぼやけた視線を塞ぐために、自分の唇で彼女の唇を塞ぐのだ。最初はやわらかに。そして、口をわざと離してから葵と目を合わせると、決まって彼女はとろんとした蕩けたような表情をするものだから、もっともっといじめたくなってそのちいさな唇に吸いつくように激しいキスを開始する。もちろん最初からそのつもりだったのだけれど。ふれあうのは唇だけじゃなくて、それは粘膜のふれあいなんだと、ふれるたびに感じさせる。ただ触るよりももっと離れがたくてねちっこいもの。男鹿の舌が葵の唇のなかを押し開くようにゆるく凹凸を調べまわる。だがまだそこまで激しいものじゃなく、ゆったりとナゾるみたいな動きで。それにもどかしさを感じる葵から舌を伸ばすと、それを絡み取る男鹿の舌はさっきまでとは別の生き物みたいに激しくなる。吸いつくように葵の舌を離そうとしない動きは、呼吸すら吸いこもうとしているみたいにねろねろと読めない動きをする。喉がひくつくとひ、とおかしな音が鳴るから葵はとても恥ずかしくなってしまう。それを隠すために男鹿に顔を寄せると、さらに男鹿の舌が絡みつくみたいに舌を舐めるものだから思考なんて安っぽいものはどこかに置き去りにされる。もはや人ではない。思考はどこへやら。いつもは恥ずかしいだとか嫌だとか、そういうこと思うことが山のようにあるはずなのに、この瞬間は、今は。ぬらりとした感触だと思ったら、そこからは欲しい、欲しいと言われながらまるで貪りつかれているよう。葵が感じられるのは男鹿の鼻息と体温だけ。吐息が、ただそれだけで愛おしい。好きだ、そう思う。不意に離される互いの唇は、離れる際も視線を含めて名残惜しさを隠し切れない。そこで休むように男鹿が笑うみたいにふ、ふ、と鼻で息をする。そして目が合うとクスリと笑う。こんな瞬間すら、とても待ち遠しくて愛おしい。
 最近の男鹿は余計なことを覚えた。殴るばかりの不器用で無骨な節くれ立った手で、葵の細腰を抱き締めながらゆるうくその背を摩り、やさしく愛撫してやると同時に、服の上から下着のホックを外してしまうという器用なことをやるようになった。服の下からずるり落ちた下着を引っ張り出して、そんな時ばかり邪気のない笑みを浮かべる。邪気たっぷりの気持ちのくせに。そうして服を脱がさず布越しに胸に触れ、直接触れることを態としない。いやらしい焦らしだ、と分かりながらもそれを続けられると我慢できずに葵はやがて強請ってしまうだろう。もちろん言葉にすることは葵は苦手で、自分から身体を擦り付けるようにして強請るのだ。服の上からそのふくらみを確認する。布で擦っても気持ちのいいものなのだろうか。男鹿は胸元に顔を寄せて、そこに聳える胸の頂を感触だけで感じるのが好きだ。布が胸に擦れて、それだけで気持ちいいけれど、男鹿の手に、指先に触れられるとさらにその気持ち良さは心の面も手伝って、高く高く跳ね上がる。恥じらいもまたそれを高める要素で、男鹿はしっかり把握して煽る。こんな短い言葉で。
「何」
「お、男鹿ぁ…」
「すけべ」
「…イジワル」
 こういう時は、余計な言葉がなくても問題がない。これは動物に還っているからなのか、いつもみたいにこう言って欲しいとか、こういう時はこんな言葉がほしいのに、とそればかり願うのに、どうして抱き合う時はそういう思いが消えていくのか。余計な布を取り払って、生まれたままの素肌を晒す。白くしっとりですべすべのその肌は、既に男鹿の手にはよく馴染んでいて、むしろ葵から男鹿の手に吸い付くみたいに引っ付いてゆく。熱っぽく桃に染まった肌と頬は男鹿の劣情を駆り立てる。耳、うなじ、唇の脇、と徐々にだがゆっくりと男鹿の唇が落ちてくる。上から下へ。降ってくる。男鹿のやわらかさ。この瞬間を待っていた、そんな気持ちすらしてしまうくらいにこの時を思っていた。何度もしてきたことだけれど、それでも葵はこの吐息すら欲しくて堪らない。こころが満たされて身体が火照る。よく分からない感覚が葵の身を包むと、男鹿もそれに呼応して満たされていく。それと同時にムクムクと浮かび上がるこの瞬間を支配したいという思い。どこか矛盾しているけれど、いつも共存している思い。服の上から刺激されてすっかり良くなっている身体は既にくにゃくにゃだ。まだ穿いたままのショーツの中も、ほんとうはグッショリになっているのだ。どうせ後から暴かれてしまうのだけれど、すぐにすべてを暴こうとしない余裕が男鹿にはあった。すっかり起ち上がり尖った乳首に触れるか触れないかの位置で、しずかにキスをする。それでは物足りない感触。もっと、もっとと葵の目が訴えるけれど、男鹿はそれを見なかったことにして、胸への愛撫を開始する。それはとてもやさしいから、いつも喧嘩ばかり語る男鹿の手とは思えない。その動きはやさしく触れてくるものだから、すべてをその身に任せたくてどうしようもなくなってしまう。男鹿の舌が葵の首筋を撫ぜる時はもう、まともな思考なんて殆ど残っていない。葵から洩れるのはもはや喘ぎしかなくなっている。は、は、と短い間隔で吐き出される吐息から洩れるちいさな声。それは男鹿の歯先がぷっくり桃色に色付いた、葵の乳房を指でやさしく撫ぜながら押す。そうして刺激するともっと強い刺激がほしいと、その頂で揺れる濃いピンクの乳頭が硬くしこってくる。それを舌先でゆるく撫でると葵は喉を鳴らして耐えなければならなくなる。痺れるようになって、もっと触ってほしくて、でも、恥ずかしくて。すべてぐじゃぐじゃのないまぜになって、それらも含めて気持ちよくて、夢と現実の世界を、葵の意識は行ったり来たりする。だから脳髄は痺れて普通じゃなくなる。ふにふにとやわらかい乳房は、そう大層な大きさはないけれど男鹿の手にもすっぽり収まってくれる日本人的な大きさについて、男鹿は気に入っていた。そしてしっとりと男鹿の手に吸い付くようにぴったりとなじむのだ。なじむように動いてきた、というわけではなくて最初からなじんでいた、この美しい身体はそれ以上のものなんて必要ないと男鹿は言い切れるだろう。その胸の一番高い箇所で、一番敏感な乳首がよろこんでいる。それに強く触ると、葵は獣のように鳴く。だが弱く触れると足りないと擦り寄る。とても敏感で複雑で、しかし単純だ。触れてくる男鹿の頭を抱き締めると、その反動で敏感なそこに男鹿の歯が当たる。ひ、と葵の喉が声にならない悲鳴をあげる。音を立ててそのままの格好で吸い付き、そこにしゃぶりつく男鹿がまるで自分の子供のようで、脳を侵す感覚と共にどうにでもしてほしいと願うし、思うままに快感を貪りたいとも願うのだった。もちろんどちらの行動も起こさないのだが。そんな葵の気持ちを汲んで、男鹿は吸いながら舐めて、葵の思考をそれだけのことで侵していく。弱いところを責めると、すぐに陥落する。どんなにいつもは気の強い目をしていたとしても。そうされることが葵の望みで、幸せだと分かって。互いに、それを許せるし望むのは目の前のこの人しかいないと分かりながら。


15.02.27

おっぱい責められるのが弱い葵ちゃん、というコンセプトで書いたww
でもやらしくなってないかなぁ?
やらしいのを目指したんですけれど。みなさま、どう思ったか教えてほしいです。

こんな感じで、たらたらと一つのことについて長く説明するような文章って、私的に書くのは好きなんです。読むのは……あんまり好きじゃないかもですが(おーい)。だって、つまんないもんね? と言いながら書くわけで。ハイ、そういうの手前勝手と申します。たぶん治らねえ。


そんなこんな書いてますが、エロエロっていうのを書いたつもりは、当然ないのです。精神世界が結構入ってるし、ストーリーは無いわけですからw
こんだけ長いのにセリフがないっていうのは、文章の書き方の練習、みたいな気持ちですね。まぁ30というキリのいい数字なんで、こういうエロ回を持ってきました。
実を言うと、エロ回用のものを書いていたんですが、それまだ書き終えてなくてお披露目できてないし、だいぶ前から温めてんですけどねw 最近エロ系書けなくて…。やっぱり年始のアレ(内緒である。)がショックすぎて書けないのかもなーとか、いろんなこと思いながら、男鹿と葵ちゃんの先を書いていきたいなぁと思ってます。
2015/02/27 23:17:01