(現代パロディ)
でも裏とかでは、ないです。
…ご安心を。おれ。




 2001年9月11日。アメリカNYにてツインタワービル爆破という、世界を震撼させた事件が起こった。その映像は世界中の人々を恐怖に震え上がらせた。

 だが、この戦争の無い国というのは呑気なもので、ブラウン管を通してみているだけの、まったく現実味のないものとしてしかその眼は映らない。
分かっている。
『他人事』ではいけないのだと。でも、あまりに突飛なことには脳というものはついていかないのかもしれない。それが「今・現在」の「現実」なのだということが、頭では分かっていても、やっぱりついていけない。理解ができない、といったほうが分かり易いか。

 まるで洋画のなかのCGのようだった。
 CGの技術は年々素晴らしいものとなっており、「お人形さん」でしかなかったゲームや映画のなかの宇宙人の姿が、まるで自分の目の前に佇んでいる人のように変化しつつある。我を忘れて、恋してしまうぐらいに。

 なにかがビルに向けて突っ込んでいったと思った瞬間に、弾けるように爆発が起きる。スクリーンのなかの世界が、まさか現実に起こるなんて……戦争放棄した、腰抜け共ごっそり集まる国には、確かに想像力がついていけるわけない。どんな人間にだって『宇宙の果て』がまったく想像もできないことと同じように。
 ビルの爆破の下では、逃げることも許されなかった、無力な人間たちが苦しみのたうち回り、その場で生きたり死んだりしている。さながら地獄絵図というものが広がっている。それはブラウン管ではあまり流れなかったために、想像の世界でしかないのだが。


 爆破のニュースに釘付けになっていて、もはや周りの音も気にならなくなっていた。ワンコイン食堂で飯を頼みかっ込んでいた。そんな最中のニュースだった。
 平和ボケした国の奴らが、ただぼんやりと見ていたなかで、独り、目を見張って立ち上がってしまった若者がいた。

 あの爆発…どこかで見たことがある、気がした。
いつとは思い出せない。ただ、「あっ」と思っただけのこと。
 ただひたすらに『敵』を倒す。敵は己だけの力では到底敵わない、最強の敵であったから。

 若者の、すこし長めの茶髪の後ろ髪が外から入る風にそよかに揺れている。
 十代で、まだまだ食欲も好奇心も旺盛でおかわり常習犯の彼が、食べるのを忘れる様を、見知ったオジサンが心配そうにして覗き込み声を掛けた。
 だが、彼にはそんな声など聞こえなかった。微動だにせず、両目をかっと開いて。
 爆破テロのニュースに、何をそんなに心惹かれたのか。


爆発のあと、うごかなくなった。
…否、うごけなくなった、のか。
あれは、確かに勝利を収めたけれど、後味のよくない勝利だった。
考えていればズキリ、と背中に痛みが走った。古傷が疼くような感じで。傷も無いのに。

 その痛みに、急に身体を屈めて眼光を鋭くする。ニュースから眼は離さない。むしろ離せない。
 気づかぬうちに身体は汗でびっしょり。手にも汗を握っているが、本人はまだ気づかない。
 理由も無いなかで、背中の痛みの意味を思い出していた。

そう、相手の手にするもので、後ろから突き上げるように抉られたのだ、と。
自分はそのとき、死と、面と向かって対峙していたのだと。

最後に、勝たねばならぬ相手がいたからこそ、生きようと思った。
だが、ほんとうは違かったのではないか?『死』が恐ろしかったのではないか?
ほんとうは嫉妬していたのではないか?『死』を恐れぬ彼らの姿を、羨んでいたのではないか?
だから、対等の相手を見つけて、追い続けていたのではないか。

死にたくないから、『好敵手』と何度も刃を交えていたのではないか?


 汗はもはや髪を濡らし、顔色は興奮のために赤味がさすやら、ふつふつと湧き上がる情けなさに青ざめるやらで、何とも形容しがたい複雑なものとなっていた。
 既に爆破のニュースよりも、リポーターの顔やガレキの山を映すことが多くなっていたので、やっと眼を離すことができ、ふらつく身体を休めんと再び食堂の椅子に倒れこむように腰を下ろす。
 周囲の者たちはそんな彼の異常な様子を見守っている。
 先程まで何をしても、抓っても眼の前で手を振っても、大声を掛けても何の反応も示さず、半開きにした口から涎が垂れ落ちる様を眼にしてから、皆が無言一致で様子を窺うことにしたのだった。
 窓から入るまだ暑い空気に、流れた汗が冷やされて彼の身体を火照りから冷ましていく。


或いは、『好敵手』もそうだったのだろう。自分と同じ、ほんとうは死ぬのが怖い腰抜け。
あれだけいきがっていたのに。ほんとうは死から逃げるために向こうに付いていたのではないだろうか。
『最強』の奴、と戦わないために。

『死合』ではなく『仕合』。
死から背を向けて、結局はいつまで経っても優劣のつかない勝負の繰り返し。
「てめぇ(同じくらいの強さの相手)と対峙するのは、ゾクゾクする」。
同じ考えだと思っていた好敵手の言葉掘ってみれば、ちょっとだけいきすぎの、ただのチャンバラだろう。

「死にたくない」
「死ぬのが怖い」
そう言うのが怖くて、認めたくなくて、ただの理由付け。
…なんて、情けない。無様なこと。

死を恐れぬ者は、死を恐れている者に、負けるわけがない。
そんな甘ちゃんじゃない。


 認めてしまえば、汗で冷え切った身体から急に悪寒が生じて、ぶるぶるっと大袈裟に身体を震わせた。
 靄がかかったような記憶のなか、覚えているのは己の好敵手がいたこと。最強の名を欲しいままにしていた彼にもまた、好敵手と呼ばれる者がいたこと。彼らは死をものともしなかったこと。どちらが最強だったのかは、見届けていなかった自分では分からないが。
 最後に。己が尊敬していた師もまた、死を恐れぬ者であったこと。


…だから心底、惚れたのか。



「……俺は、なりたかったのか。」

彼の者たちのように。
憧れて、追いかけて、追いつけなくて、足掻いて、もがいて。
辿り着いた先は、命のやりとり無きチャンバラだった、と。



認めてしまえば、楽になった。





「……ご馳走様でした。」
 いつもの五百円玉を置いて、食堂を後にする。
 彼の寂しそうな背中が、周囲の者が声を掛ける術を失くさせた。

「変わらないな。…ずっと、俺は弱虫のままか。」


 彼らのような強靭な精神を受け継いだ者たちに会ってみたい。
 青空のした、彼は遥か昔の懐かしい面影を探してみる旅も、悪くはないな、と思った。



 通りかかった学校の友人の声で、現実に呼び戻された。
「おぅい、真田ぁ…」



*****


現パロ苦手。
読むのはまぁいいとして(イメージ崩れとかあるからちょっとアレかもしれないが)書くのは………無性にはずかしい。
ちょっとためらったけど、輪廻転生っぽい話。
9・11を使ったネタが書きたくて、思い浮かんだのが、コレ。意味わからんよな
文章に臨場感持たせたかったので、自爆テロの動画を探したが見つからなかったんで、あんなんしか書けないぜ。チッ。さらには文を書くのもまたしばらくぶりぶりッス。うまいこと書けないモンかね?


『大阪 夏の陣』なんだけどな(笑)
俺確か、究極モードで真田で忠勝倒せてない(難しい、までは倒したと思)褒章もらえねぇ…


好敵手=伊達
最強=忠勝
最強の好敵手=よっしー(島津)
師=お館(さま)

佐助や粉(かたくりこ)も死を恐れないとは思うんだけど、彼の眼中には入っていないようで(笑)

2008/09/12 09:28:26