あれから3年経った。もうあの石矢魔高校に出入りしている者は誰もいなくなった。学校にいたときはそんなに仲がよかったような気はしなかったはずなのに、なぜか大晦日はいつもみんなで集まって騒ぐ。雪が降ってるときはほとんどない。1月や2月にならないとあまり降らない。寒いし降らなくていいのだけれど、雪を見ながら乾杯のウォッカを喉にいれるときが最高〜!という気持ちになるので、降っていてほしいとも思う。勝手なものだ。今年もそんなノリだった。チェーンメールみたいにレッドテイルの、おおよそ花澤辺りから始まる。しかもなぜか人任せの飲み会だとか。理由は大体こんな感じ。


件名:チョリース!!

みんなお疲れッス^_^
今年も最後にみんなで騒いで終わりたいと思います!

日時:12月31日18時くらい〜
場所:夏目センパイからのメールで(≧∇≦)
お金:姫川センパイが出してくれる*\(^o^)/*
まて ぞくほー☆


 まて、はお前だろ。と誰もがツッコんだ。だってto:で夏目も姫川もメールが渡っている。つまり、勝手に決めているのだ。毎年。支払はいつも姫川なのだが、場所を決めるのはローテなのかそれとも神崎組固定なのか分からないが、今のところ神崎組の人しか当たっていないあたり怪しいところだ。そういう場所に聡いとでも勝手に思っているのかもしれない。だが、メンバーのみんなは呆れながらもこの花澤メールで年の瀬を感じることができる。懐かしいメンツに会えるのもやっぱり嬉しい。音頭をとる人物はいつでも必要なのだ。ついでに、姫川持ちの支払なので呼ばれたメンバーはもれなく集まる。今年だって例外じゃない。


「男鹿と古市だーっ」
 レッドテイルの梅宮がそんな声を出した。2人が連れだって歩いていた。まだ高校を卒業して社会人一年生の2人だ。同い年の花澤と谷村もそう。ゾロゾロと集まる神崎組の面々は二年ほど前に卒業しているので、男鹿や古市と顔を合わせるのは一年前の大晦日以来だ。だが夏目はあのままバイト先のドラッグストアから引っ張られて正社員となったので、ちょくちょく石矢魔メンバーとは顔を合わせたりすることもある。仕事中なので近況について話すわけにはいかないが、それでも無事、元気に生きているのだと感じることはできる。
「うっす、さみぃ〜。店どこ?」
 相変わらず男鹿は愛想がないがそれが男鹿らしさなのだし、誰も気にするものはない。夏目はナイショ、と意味ありげに笑った。早く行きたいがまだ東条たちと財布持ちが来ていないので動けない。レッドテイルのみんなは邦枝を囲んでああでもない、こうでもないと話をしている。高校を卒業してからというもの、レッドテイルというレディース自体飛散してしまったようなものだ。形じょう大森が継いでから、それでも姐さんに戻したいとか悪魔がどうとかなって、結局うやむやのまんま四代目で名前だけが残った。五代目がないので解散なのかと思えば、そうでもないらしい。レディースという枠でやるつもりはなくても、女の友情は不滅なのだ。そして彼女らは今邦枝を囲んで男鹿とはどうなったのかこうなったのかと勝手な想像を巡らせてワァワァ言ってるだけのただのギャルだ。
「お。来た、財布持ち」
 ひどい扱いだが、大声ではいえない。余計なことをいうと払ってもらえなくなる可能性があるためだ。財布持ちのくせに財布を持っていたことなどないが。姫川がいうには、財布など邪魔なだけなのだという。世の中はカード一枚で事足りる。そんな冷めたことをいうのだ。お前だからだろう、と思いながら隠れてため息をつくのだ。浮世離れしすぎてついていけない。相変わらずダサいリーゼント頭の色メガネに合わせた柄シャツ。
「相変わらず、金持ちのくせに安っぽいファッションだよなぁ」
「若いくせにジジイみてえな神崎にはいわれたかねーんだよ」
「あ?」
「やるかてめー」
「あああもう何でこうなるかな。闘犬じゃないんだから離れて離れて」
 神崎と姫川のくだらない諍いを夏目が止めた。後ろの方からダラダラと東条ら3人がきた。いや違う、七海と小さな子供が5人くらいうじゃついている。
「わあどうしましょう! こんなに作ったんですか??」
 つかさず古市が東条に聞く。え、と何も分からず東条が首を傾げた。すぐに分かったのは相沢と七海で、慌てた。
「いやまて年齢的に合わん」
「英虎パパと静ママっすかー」
「やべぇこれなんてエロゲ?」
「違うわよ!産んでないわよ私」
「えっ、産んだの?」
「てか作りすぎじゃねーか」
「お前ら結婚してたの?」
「いや俺はバイトしてる。」
「虎…。頑張ったんだな」
「いーち、にー、さーん、しーい、ごー……多い…」
 それぞれ好き勝手な推測と話をしているが、いつもそんなものだ。東条が空気を一切読まずに七海の弟たちににっこり笑いかけた。
「今日は好きなだけ食えよ」
 ああそういうことか、たかりに来たんですね分かります。数名が心の中でだけ納得した。メンバーも揃ったことで夏目が先頭に立って歩き出す。この近くのバーを、夏目の先輩がこの秋に開いたのだという。いい機会だったのでそこに決めたそうで、いってみれば雰囲気はそう悪くない店だった。落ち着ける感じだが、どうせこれからバカ騒ぎするのだ。店はちゃあんと貸切になっていた。
「予定より多いっすけど、その分コッチも大丈夫なんで」
 財布持ちに許可を取るまでもなく勝手に話は進んでいく。この勝手さが石矢魔メンバーたる所以だ。この勝手さがとても心地好い。まずは飲み物を決めるのだが、乾杯用のワインを飲む方が先だ。用意されていたグラスに常温のワインが注がれる。年末なんだ、と誰もが感じる。この年末の行事は1年の締めくくりにぴったりだ。まだ18歳とか19歳とかのお子ちゃまもいるけれど、そんなことは数年前から気にしない習わしだ。七海の妹弟らにはオレンジジュースを配布した。
「では────…」
 店を選んだ夏目が音頭を取る。グラスを頭上高く掲げる。夜はまだまだ始まったばかり、これからは俺たちの時間だ。明日の朝、一緒に初詣を終えるまではみんなが一緒だ。そう思いを込めて。
「1年、お疲れ様でした! かんぱーーーーーーい!」
 来年も、またバカ騒ぎしようぜ。
 誰もが願う、若者たちの楽しいひととき。


13.12.30
お疲れ様です!!

実話ネタといったほうがいいかなw
友情わっしょいな話。色恋もなくて、ただただワァワァ騒いでるだけ。すごいいいですよ。近況報告して酒飲んでるだけなのに盛り上がったり。
これって結婚前だからこそできるバカ騒ぎなんじゃないかと最近感じます。
昔はこんなんしてましたよwww

一応、グッナイとかMK5とかそういうのはいません。念のため。成人式じゃないんだから…
まあ姫川、レッドテイル、神崎組、東条たち、七海静さん、男鹿、古市 って感じで総勢20くらいはいくんじゃないか?(数えてません、、


まっすぐな友情ものって、それはそれで書きづらいんですよね。だったらバカ騒ぎのほうがべるぜっぽいし。友情ものは書きたいんだけど、ネタがビミョーっていうのもあるし。
一応、男鹿と古市
男鹿と東条
神崎と夏目
寧々と葵ちゃん
この辺は書くと思いますよ。何かに絡めないと無理だけど。とくに男鹿と東条はすごいイイ関係だと思う。ライバル兼ともだち、みたいな。

2013/12/30 21:01:07