※姫川夫妻(誰得?
※エッチかもしんない、、ちょとだけ



無いものねだりのバービー



「竜也」
「ん」
 夫婦と言えど、どちらも仕事を持っている。あまり一緒にいることはないのだが、今日は揃って家にいた。偶然だったので朝からどちらも驚いた。そして久々に二人で食事を摂った。食事はいつも召使いがやってくれるので、竜也は潮の手料理など食べたことはないし、食べてみたいとも思わない。そんなチャレンジャーでもないし、そもそもプロの料理以外は屑だ。棄てていいと思っている。感覚が普通とはまったく違うということは先に述べておく。
「良かった、お前と話したいことがあったんだ」
「そうか? 俺はべつに…」
 用事があればメールででも言ってくれればいいのにと竜也は思う。そもそもが面倒臭がりなのだ。にこり、と潮は竜也に笑いかけてくる。こんな笑顔はついぞ見た覚えがない。背中に悪寒が走った。口には出さないが、こんなことがあるとすればなにか悪いことの前ぶれだろうかと訝ってしまう。
「キスしてくれ」
「…おいおいマジか」
 目を瞑って愛する夫の口づけを待つ。この少女マンガ的な展開が、竜也は大の苦手だった。照れ? そんなことはない。もっと恥ずかしい言葉でも何でも言える。こういう甘い展開というか、そういうものが単純に苦手というか、気持ち悪いと感じるのだ。鳥肌が立った。だが、待っている潮を放っておくわけにもいかず、致し方ないのでリップ音を高らかに鳴らしてキスをしてやる。唇をすぐに離して目を開けると、薄く目を開けた潮が見つめてくる。こういうの、本当に苦手なんだよなあ…こいつ、分かってやってるよなぁ絶対。そう竜也は思わずにはおれなかった。からかう気なら、と竜也は潮の体を抱き寄せて、間近でその目を見た。整ったキレイな顔立ちをしている。ちなみに竜也の好みは、もっと清楚っぽい女性である。潮は遊んでいる女というわけではないが、見た目はそっちの印象の方があるのであまり好みのタイプではない。結婚とはそういうものだと皆から笑われそうではあるが。
「久し振りに、シたくなったかよ? 明るいうちから元気だな、オメーはよ。」
 一瞬、虚をつかれたような驚きの表情になるが、潮はすぐに微笑する。そして竜也の背に腕を回してくる。これではからかった意味がまったくないではないか。竜也の心拍数が瞬時に上がったのを聞き逃さない凄さは、きっと伴侶となった潮以外には持てない。竜也の耳朶にちゅ、と軽くキスしながらそのままの格好で囁く。
「…ああ。思いきり抱いてくれ、竜也。私は、お前になら、幾らでも愛されたいんだ」
 竜也は観念した。こいつには、何を言っても勝てない、そんな気がする。もちろん、ただ黙って尻に敷かれるつもりもないが。べつにやりたいわけでもなかったが、誘われれば悪い気はしなかった。そもそものキッカケを作ったのは竜也だったのかもしれないが。日々の仕事で溜まるものもあるし、久しく夫婦の営みと洒落込むのも悪くはないだろう。なにより夫婦水入らずの、たった二人だけの空間に二人が珍しく存在しているのだ。明るかろうが暗かろうが関係ない。こんなことで理性を失うほど純でもないが、竜也は抱きつかれたままの格好で潮を抱きかかえ立ち上がる。そうすると、狙ったわけでもないがお姫様抱っこの形になる。なんだかすべてが潮によって仕組まれているような気さえするが、きっと偶然が重なっただけなのだろう。少し顔を離すと、熱に浮かされたような表情をした潮と目が合う。やらしい顔だ、と竜也は感じた。自分以外の男を知らぬ、やらしい嫁。そう思うと何故だか俄然やる気がでてくるのはどうしてだろう。竜也は潮と唇を重ねながらキングサイズのベッドのある寝室へ、そのお姫様抱っこのまんま移動した。



*****



 久し振りに触れた潮の身体は素晴らしかった。張りのあるうつくしい肌、それを充分に指で、舌でゆったり堪能した。なんだかんだで竜也も溜まっていたのだ。社長という立場は互いにヒマではないし、責もあるものだ。雇われ社長とは違う重みがある。それを理解してくれる伴侶がいることは、もしかしたら他にはない幸せなのかもしれない。そんなことを潮の乳房に頬を寄せながら思うのは、まったく如何なものかと竜也自身も呆れたものだったが。どうしてだろう、女に触れながらでないと女のことは本気で思えないのかもしれなかった。緩い刺激を与えたにも関わらず、そこは硬くしこってピンと尖った。久しい感覚に目を潤ませた潮の腰を抱き寄せた。まだ触れる前から下の粘膜も潤んで竜也の到達を待っている。
 潮は美女ではあるが、女として生きてはこなかった。女として生まれながら一人息子として育ったので、処女婚で姫川に嫁いだ。急に決まった久我山と姫川の家の婚約と、久我山潮が女だという隠された事実。何年か前のことになるが、連日マスコミや新聞、雑誌を賑わせた。隠して結婚しても構わなかったのだが、二人ともがあまりに有名人すぎた。どうせバレるなら嘘はつくべきでないと言ったのは潮自身だった。渦中に巻き込まれるのはゴメンだと竜也は少しだけ渋ったが、それも楽しいかもしれないとも思ったのは未だに内緒だ。で、結局なにが言いたいかというと、竜也しか知らないのだ。潮の女性的な部分は。潮は幸せだった。初恋の相手と初婚なのだ。なによりの幸せである。その潮は、女遊びなど充分に知っている竜也に抱かれた。潮もそれを望んだし、夢のようだとも感じた。意外だったのは、あまり手を出そうとしてこない竜也の態度であった。それについて竜也は、「手に入れる楽しみがないのもある。それ以上に、久我山は幼なじみだ。ソノ気になんてなかなかならねーんだよな」苦虫を噛み潰すように、渋い顔をしながら石矢魔の誰かに洩らしていたこともある。それを裏付けるように竜也と潮は夫婦になっても、あまり性生活はない。それは潮にとっては不満だった。いらぬ嫉妬心をも掻き立てる。女の気持ちというものを初めて知って、それをどう表すべきか潮は未だに分からずにいた。ただ、抱いてほしいと強く思う時もあった。そんな時に限って彼は隣にいない。まだ新妻と言っても差し支えない結婚生活だというのに、寂れた老夫婦のようで潮は寂しかった。その思いを強くして、堪らず潮は竜也に強くしがみついた。まだセックスの良さは理解し尽くしていない。もっと教えてほしいと願った。
「お前よ、昔っからこんなにスケベだったのか?」
「は…っん……、私が…知るか…っ」
 ずぶずぶと入り込んでくる竜也の質量に堪らなく興奮した。竜也は手慣れている。いつもこうして金目当ての女を好きなように扱ってきたのだろう。全然純情なところがないけれど、そこはまったく経験のない潮をフォローするという意味で丁度いいのかもしれないとも感じる。そんな思考は、腰の動きによって溶けるみたいになくなっていく。潮はあまり喘がない。というか、声が出せるほど経験がないというべきか。男として生きる以上、女のような声を出すことはなかった。それだけに気持ちよくて喘ぐなんて、なんとか抑えようとしてしまう意識が働くらしかった。唇を噛んで声を堪えようとする。その奥で小さく洩れる吐息は遊びの女どもと違った楽しみがあって、竜也はそこだけは楽しんだ。時折、唇を舌で割ってやると、声に近い息が間近で聞けるのだ。
「んっ…、ん、た、たつ、や…っ」
「すげー濡れてる」
 ゆるゆると腰を押しつけてくる潮には、このままやりまくっていたらそのうち考えられなくらい淫乱になってしまうのではないか。そういう恐ろしさも覚えた。べつに処女を相手にしたことがないわけではないが、そこまで長く、特にうぶな相手と付き合ったこともない。付き合うというか、相手は嫁なのだが。それにしてもほとんど一緒にいることもない。新婚旅行は行けと言われて行ったけれど、それ以外で二人で出掛けるのは何かの会社関係のイベントだけである。これでは夫婦でなくてビジネスパートナーだと竜也は思う。そんなパートナーが生涯のパートナーだなんて、信じられないことだ。竜也は余計なことを考えるのはやめて、腰を使いだすのだった。
 乱れた髪が額に張り付いている。それを掻き上げて目を合わせると、恍惚の表情で潮は笑った。魔性の女か、まったく。竜也は口にこそしないけれど呆れた。腰の動きが早くなってくると、竜也の限界が近いのが潮のような経験の少ない女でも解る。離れるつもりはなかった。ぐ、と腰を押しつけて背中に両腕を回した。潮から口付けた。竜也は逃げるように腰を引く。
「ダメ。竜也…、ナカに、頂戴…っ」
 潮の中で爆ぜたのはその数秒後のことだった。


*****


 ラテックス製の薄いゴムがタプンと精液が溜まって揺れた。縛ってゴミ箱に捨てる。面白くなさそうに潮はその様を見ていた。竜也は眉を寄せてそんな潮を見やる。べつに普通のことだろうと思う。射精したばかりで気が抜けたのもある。面倒なことはあまりしたくない。甘いピロートークなんて繰り広げるつもりもない。ベッドに横になった。隣には潮がいる。
 さっきの潮のことを思い出す。子どもを欲しがっていた。それは間違いない。だからこうして残念がっているのだ。子種は薄皮でガードされていた。べつに子どもくらい作っても構わないのだ。有り余る金もあるし、世の中は少子化だ少子化だと騒いでいる。ここで子どもを5人くらい作っておけば富裕層のベビーブーム到来なんでこともあるかもしれない。それくらいに姫川と久我山の財閥の名は影響力があるだろう。一時期のホリエモンぐらいの威力はあるはずだった。今や彼らは若者の憧れであり、トレンドなのだった。当人たちとしては実はどうでもよいことなのだけれど。
「ガキが欲しいのか」
 潮は僅かに視線を竜也へと向けた。竜也は潮の顔を見ようとせずにだらけた格好のままだ。緩く、なにかを諦めたみたいに笑うと、小さく頷いた。
「私と、お前の愛の証がほしい」
「…どっから出てくんだ、そのクサいセリフ」
「私は本気だ」
「あ、そ(ついてけねぇ…)」
「不安なんだ。お前はいつでも、私から去ってしまうような気がして」
「だから、ガキがほしいってのか? そいつァガキが可哀相なんじゃねぇか」
 潮はそれに対してはなにも言わなかった。ただ、しばらく経ってから竜也のことを見ずにポツリと呟いた。
「私は、子どもと竜也の愛、どっちがより欲しいのかが分からなくなってしまった。…どちらも、欲しくてたまらない」
 自分自身に言い聞かせるように放たれたその言葉は、静かな室内へと溶けて、やがて消えた。竜也はなにも言わなかった。けれど、その沈黙がどこか優しかった。潮はそんな彼の胸に抱きついた。邪魔だと感じたが放っておくことにした。たまには相手もしてやらなければ、不安がさらに募ってしまうだろうから。竜也はぼんやりと潮の言葉について考えを巡らせることにした。子どもを作るのと、潮が望むような愛とやらを与えるのとでは、どちらが難しいだろうか。どうせ、今日という日であるならば時間はタップリとあるのだ。



13.11.19

思ったよりもかなり長くなった姫川夫妻の、しかも…
「あれが欲しいの&これを言ってよ」
がごっちゃになりました。久我山さん、結構欲張りww

今回は、結婚して何年か経ってる設定なので竜也と潮になってます。
相変わらず姫川はうしおって呼ばないんだよねw
初めてちゃんと書いたんじゃないかなぁ、、エッチぃシーン。
どうにもこの夫妻は女の方がイケイケです。つうかべるぜはそういうタイプのが断然多いという…

しかし驚くほど、そういうシーンとは思えないほど描写をキレイなものにしてしまいました。バレット受けを書いた人と同じ人が書いた文面とは思えません!w
お下劣なところが一切ないっていうのも、自分で書いてて新しかったです。これはこれで、楽しいかな…エロくはないけど。
そういうシーンのくせに、まったく関係ないマジメな描写(ビジネスパートナーうんぬんとか)をするのは、ネギはんらしいでっせ。結構得意なんです。そんなんせっせとしながら、別のこと考えてたりとか…でもちゃんとやることやってますよ、みたいな。なんか、実際、とまでは言わんけど、なんかをマジでやってる時とかに、妙に冷めてる時とかあるからなぁ…。すごい冷静な部分とか。あれは不思議だね。エッチに非ず。や、多分。



なんか…もう少しこの姫川夫妻シリーズが書けてしまいそうです。まあ時間はかかるだろうけど。カテゴリ分けした方がいいかなぁ??(姫ちゃんは人気あると思うけど、久我山と一緒だと微妙かと思う)

子供についてのうんたらかんたらとかだったら、すぐ書けそうだな…
なんつーか、作るのは簡単だけど後がいろいろとね…家のこともあるし。揉めそうな気もしてきました。
暗雲立ち込めるわ〜


おだい。独りぼっちのボブヘアと吐血する背中越しに
2013/11/19 20:08:30