仲が良いほどケンカする。

 そんなことは昔から聞いていた。俺たちはいつもケンカばかりしている。それは仲が良いということなのだろうか。ぼんやりとそんなことを考えた。だが、そこまでべたついた関係ではないし、そもそも女みたいに「いつも一緒」なんて雰囲気はおかしいと思っている。だが、そうしたいと思う男もいるようで…。
「どうしてそんなこというんだよ。男鹿は、もっと思ったことをいったほうがいいと思う」
「やめろって」
 俺はそのとき止めた。男鹿にそんなことを言って伝わると思っている方がおかしいのだ。こいつはバカだ。べたつくことでしか男鹿とのつながりを感じられないらしかった。浅はかな野郎だと思ったが、俺では足下にも及ばない力の持ち主なので、そこまでは言わないでおく。
「うるせぇよ」
 男鹿はいつも気のない返事しかしない。そんな男鹿に不満があるのなら、くっついて歩かなきゃいい。だが、こいつはくっきたがる。別に構わないのだが、勝手に着いてきて、勝手に傷つくのはこいつなのだ。どうしてそれが分からないのか。そういうのが好きなのかもしれない。女だったらダメンズが好きなバカ女だったに違いない。勉強は人一倍デキるのに。
「三木。お前は頭がいいのに、もったいないよな」
 俺はここで口を挟む。
 男鹿はバカで不器用で感情を表すのが下手くそだけど、実は熱いとこもあっていいヤツで、とても強い。
 三木は勉強ができるって意味では頭が良くて、男鹿に憧れ続けて並ぶくらい強くなって、他人のことを一生懸命に考えられるやさしいヤツだ。
 二人とも、恥ずかしいところもいっぱいあるけど、俺にとっては大事な友だちだと思っている。もちろんそれを口にするのはクサ過ぎるので、一生しないだろう。そんな俺の思いは二人は分かっておらず、言われた三木は訝しげに俺を睨む。というか、三木はたまに本当におかしい。「俺に男鹿を取られる」とか思っている節があるようだ。ちょくちょく敵対するような目を向いてくるときがあるのだ。そもそも男鹿は俺のものじゃない。ただの腐れ縁で幼なじみっていうだけだろ。三木は本気でホモなんじゃないかと思うときがある。違う、と信じたい。友情のためにも、男鹿のためにも、俺のためにも。
「男鹿のこと、俺たちが分からないで、誰が分かってやるんだよ。こんなに不器用なヤツ、なかなかいないぞ」
 そう、俺と男鹿との手が出るケンカなんて、いつものことなのだ。三木がしゃしゃり出てどうこういう類のものなんかじゃない。男鹿はそういうヤツで、俺はそういう男鹿と一緒にいることなんて慣れてしまった。それにいちいち目くじら立ててピリピリしていたら、この先一緒にいられるはずがない。三木はそういうところを分かっていないのだ。
「世の中、いったことだけが本当ならとっくに人間なんて滅んでるよ。死ねっていっても本気で死んでほしいなんて思わなくたって口に出せるくらい分かるだろ。そんなことも分かんないほどバカなのかよお前は」
「古市くん……。なにがいいたいんだよ」
 中学のときのようにバカ騒ぎができるなんて思ってない。だが、ここ数年で三木は頭が固まってしまったみたいだ。年寄りみたいに凝り固まった考えを見ると、ガッカリしてしまう。
 だが、自分のいいたかったことが俺の言葉からは遠ざかってる気がして、なにがいいたかったのか思い出そうとしなくてはならなかった。
 俺たちはなんで一緒につるんでるんだろう? そんなことを過去にも何度も思ってきた。寂しいとか、そういうことだけじゃない。ヒトは確かに一人では生きていけないけど、別につるまなくったっていいわけで。なら、どうして一緒にいるんだって思ったりする。それで俺はこんなどうでもいいことを考えて、結論づけた。
 結局、ヒトは足りないところを補い合うために一緒にいるんじゃないか。そんなふうに思うようになった。俺が足りない強さを、男鹿と三木が。男鹿の足りない脳みそを俺と三木が。三木が足りないメンタル面を俺と男鹿で。三人三様というやつで、俺たちは支え合って助け合って一緒にいるのかもしれない。助け合うバランスは悪いかもしれないけど、損得だけで一緒にいるわけじゃない。楽しさだって一緒にいる要素として強いんだ。楽しくて補い合える、そんな関係がきっと俺たちは居心地がいいから一緒にいるんだろう。これを、俺は三木にどう伝えたらいいだろう。そんなことを思いながら男鹿の方を見たら、男鹿はもう俺たちには興味なさそうに、ベル坊に髪を引っ張られながら夕陽の方向に歩き出すところだった。
「待てよ、男鹿!」
 俺と三木が後から続いた。まぁいいか、理由付けなんて、どうでも。楽しければいいや。


無限に不完全




13.11.17
男鹿と古市の友情話
と思ったら、三木が割り込みましたw
相変わらず嫉妬深い三木ティですなw


こんな感じの古市の語りシリーズなら、日記よろしく書けそうです。つーても書いて意味ないし、まぁ「ことば」について考える古市みたいな感じになるんだよね。ぐちゃぐちゃしそう。
まぁべるぜじゃなくっても、常識人キャラならいいよなって感じだけど、、

題、両手じゃ足りないよ、
2013/11/17 13:50:06