虎と古市
※24巻見て書きたくなったとかw

 壊れた校舎の中を、呆然とした表情で歩く東条の姿を見て、彼らの力のお陰で生き返る(?)ことができた古市は思わず駆け寄って行った。東条がへんなやつで、可愛いもの好きで、動物なんかも大好きで、実は優しい男で、無骨者なのに愛嬌もあるやつなのだということは、今までの色々なつながりで分かってはいた。そんなところは嫌いじゃない。案外、好きな部分になると思う。古市はそんなふうに思っていた。そんな東条が途方にくれているのは、彼がアルバイトでせっせとこの校舎を建て直したのち、すぐにまた壊されたからである。自分たちで直したものだ、自分たちが守るべきものだ、そういった一貫性のある意志の強さが東条の身体からはひしひしと感じられる。こういう所はとても男鹿と似ていると思う。何も興味のなさそうな顔をして彼らは、いつも「自分のこと」だけではない、「自分たちのこと」を常々思っている。男としてカッコイイことだと古市は感じる。そんなことを思いながら古市は東条に駆け寄った。
「東条先輩! 今度は姫川のせいなんですから、あの金持ちに直してもらえばいいんすよ。だからそんな落ち込まないで…」
「ああ…、まぁな、分かってはいるんだけどな、でもな……やっぱり、連日すげぇ頑張ったんだよ、俺たち。バイト仲間と、親方さんとかさ、いい人でさ、俺、親方さんの奥さんからオニギリもらったりしてよ……。何だが知らねーが終わったけど、でも、面白くねーっつーかよ」
 自分と、それを取り巻く誰かのために、東条は常に前を向いている。それが古市にとってはとても眩しく映る。こんなに、自分以外の誰かのために力を出せる東条や男鹿はやっぱりカッコイイ。男として見習いたいけれど、彼らのように古市は強くはなれない。ケンカなどそもそも向いていない。気がつくとケンカの強い者に守られてばかりだ。これでは女よりも弱いくらいだ。
「東条先輩、元気だしてくださいよ。俺の握り飯で良かったから、あげますし」
 東条のいう親方さんの奥さんにワザワザ握ってもらったオニギリになど叶うはずもないけれど、それでも落ち込んだ様子の東条の心を少しでもいいから、楽にしてやりたいと思った。カバンから出したオニギリを、東条はすぐにかっさらうように奪って、野犬のようにその場でがっついた。これは予想外に早い。どうやら腹ペコだったようだ。モグモグと咀嚼しながら東条は「ごっそさん」と短くいう。そんな言葉など必要ない。東条が幸せそうに食べている、それだけで充分な気もした。何より、礼をいうのは古市の方なのだった。
「こちらこそ、ありがとうございました。この間…」
「む?」
 男鹿よりも誰の意図も理解しないこの頑なさは時に面倒臭いが、そんなものは男鹿の存在のおかげでとっくに慣れっこだ。古市は深く頭を下げた。深い感謝の気持ちを表すつもりで。
「俺のこと救ってくれたの、東条先輩だったんですから。本当に、今俺が生きてるのは東条先輩のお陰なんです。ありがとうございました!!」
 東条は不思議な生き物を見るような目をして古市の言葉には疑問符ばかりを見せている。天然なのもあるだろう、ただの筋肉バカであることもあるだろう。だが、そんな東条はバカッコイイ。古市はそんなふうに思うのだ。
「つーか、死んでないんなら助けんだろフツー」
 この男は、普通の人なら目を背けるようなことだってさも当たり前にやってしまえるのだ。正義感などではなく、ただ、自分と自分たちのために。ケガなど厭わないのだ。
「仲間なんだからよ」
 ただの一言で。きっと誰も彼もを受け容れてしまえるんだろう。この器量の大きな男は。
「…よかったな、生きてて」
 助けてくれて、ありがとう。
 生かしてくれて、ありがとう。
 仲間と認めてくれて、ありがとう。
 本気で心配してくれて、嬉しかった。
 さまざな思いが交錯して、それは言葉にはならなかったけれど、代わりに古市の笑顔になった。傷だらけのゴツゴツした手で、まるで子供をあやすように東条は古市の頭を撫ぜた。髪の毛が乱れるが、まぁあとで直せばいいか…。今みたいなごしゃごしゃの髪型なんかをしていたら、世の女性からどんなふうに見られてしまうかを想像しながら、古市は力強く頷いた。


こんなちっぽけな存在、認めてくれなくていいよ。


13.11.03

music : My "SHERO"/EXILE ATUSHI
title:死花花


24巻で東条が古市が死んだとかなんとかの辺りで、男鹿もそうだけど、キレたり心配したり騒いだりする所がすきです。

なんかねぇ、友情モノってよくないですか。
フジョシ?的な考えは棄てて臨んでください。あんまり好きじゃないんですよ、ガチホモは別に構わんけど

東条ってクサいこととか平気でいいそうですよね。自覚がないから
(※男鹿は言わない)
そーいや七海さんはどーなった?!


あんまり書けてないけど、古市と男鹿の友情も書きたいです
少年的友情バナシは大好きまくり!
でも、書いてないね……ごめんぬ



ちなみに、本誌派じゃないので、今がどういう状態になってんのか分からんで書いてます。未来に相違がありましたらごめん。悪気はないのだ。

2013/11/03 17:54:42