二葉×一な話

+ではなく×なのでちゅうい


それは限りなく優しいに近かった



 いつからだったか、なんて忘れた。二葉が一のことに対して、
「おじじゃなくて。ああ、一とチュゥとか、そんなんしたい。って思うくらい、好きで、、好きで、好きだ。」
って思ったのは。それは決して最近のことなんかじゃなくて、前から思ってたことを最近になってなぞられたみたいな、あんまり気分の良いものなんかじゃない。知ってていいのは二葉だけだと思ってたのに。

 とある日、二葉は学校の時から一緒の男友達と遊んだ。前から何度も遊んでいるので親もソイツの顔を知っている。だから誰もそんなことを言うだなんて思いもしていなかった。ソイツは二葉の部屋に来て一緒にゲームをした。二葉はそこそこだが、ゲームも上手い。何でってそれは、一と一緒に遊んでればそうもなるってもんよ。ソイツが急に言った。
「オレ、二葉のことが、好きだ。付き合ってくれないか」
 ギャグじゃないかと思った。だから「はあ?」と言った。あまりの驚きに声がひっくり返っていて、カッコ悪かったがそんなことを気にしていられる空間ではない。冷たかったかもしれないけど、そんなの関係ない。二葉にとっては信じられなかったんだから。好き=ラブで、それは二葉の中にあるのは一だけだったから何を言われてるのまったく意味なんて通じない。一以外の誰かから言われても、二葉は嬉しくも悲しくも何ともなくて。ポカンとしちゃうだけなのだった。ふと気づくと触れた唇が、やわこくてあったかかった。でも、


***


 初めてのキスはずいぶん前のこと。それをファーストキスだなんて言ったら、もしかしたら笑われるのかも知れないが、それでも二葉はずっとそう信じてやまない。好きな人とするキスは確かにファーストキスって呼んでもいいと感じる。例え、彼は知らなくったって。二葉の猛攻に耐えきれなくなった神崎はよく眠るようになる。どちらが子どもか分からない、とよく二葉は周りの人らにグチったものだ。それを聞いた神崎は眠そうな目をこすってぶうたれた。
「疲れてんだよ」
 その拗ねたような表情に、二葉は堪らなくなって「一ぇ〜」とおじの名を呼んで抱きついた。嫌そうな素振りを見せながらも、それはポーズなんだと二葉は分かっている。本当に嫌ならこうして甘んじてるわけはない。神崎は姪のことをとても大事に思っている。それは二葉の年齢が一桁の頃から分かっていた。眠る彼に何度もチュッとやったのは、あとあとになったらみんなにはバレていた。知らないのは神崎ばかりだったらしい。それを聞いた時の一と言えば。
「…っはぁ?!! マセガキ過ぎだろおめぇ、二葉っ」
 15年も歳が離れてるこの純情。堪らなく大事にしたい。赤い顔を隠せずにいる彼の心は確かに揺らいでいた。だから、神崎を汚す誰をも、二葉は認めるつもりはなくて、ずっと一のことだけを見てきた。見れば見るほど、神崎一という男はヤクザにはてんで向いてないと思うばかり。彼は、あまりに優しすぎるのだ。あれだけ暴力的で、野生的で、刹那的なのに、どうして彼はこんなにも優しいのだろう?


***


 気がついたらソイツの頬を殴っていた。好きな人以外とのキスは嫌だ! 壁に頭をごっつんとぶつけたソイツは、驚いた顔をして二葉を見上げていた。二葉は泣いた。嫌だ、と駄々っ子のように泣いた。ヤメろとか、ザケンナとか、ありったけの言葉を吐いたが、本当に泣きたかったのはソイツの方で、とても傷ついた様子で唇を噛み締めて黙ったまま二葉の部屋から出ていった。今日から絶好だ、二葉は言葉にしないままでそう思った。顔を見たくないと。二葉はその後、それこそ子どもみたいに口を何度も洗って、布団に入り込んでしばらく突っ伏していた。思うのはおじである一のことばかりだった。一は、二葉が誰か別の男と付き合ったと聞いたらどう思うのだろうか。知りたいと思ったし、取り乱すのではないかと勝手に妄想したりもした。そして、はたと気づく。この妄想自体があまりに虚しいものだと。哀しい想いだと。
 その日、エロ本やエロ動画をぼんやり見ながら思った。もし、想いが叶うのなら───…と。好きな人とヤリたいと思うのは男も女も変わりないのだった。ただ、女の場合は好きが大きくて、ヤリたいが後についてくる。男の場合はヤリたいが先にきて、好きが後にくることが多いだけのことで、どちらもそう変わりはしない。
 二葉は、やりきれぬ想いを抱いて、泣きながら眠った。

 今でも不思議にしか感じないが、結局、二葉に告白してきたソイツは数日間なりを潜めていたが、後に「あのときは、ごめん」などと謝ってきた。それから、友達関係は続いている。あれだけ強く二葉は絶好だと思っていたのにも関わらず。

 二人ともあの時の話題に触れることなく、それから、悶々とした時期が、数年が流れた。


***


 急に思い立ったのはいつの日だったか。今までと何も変わらない日だったはずだ。ふと、思い立ったのがその日だったということ。二葉の、数少ない女友達がカレシの話をしていた。そう、二葉には女友達が少ない。それは二葉自身の性格的なものもあるし、周りの環境というものも充分にあった。黒服の男らがウヨウヨしていたり、いかつい顔のおじさんらに囲まれている日常の二葉と、どんなに譲歩しても、軽く不良っぽい男の子のそばにいて、「なんだてめー」だとか濃い化粧を塗って軽く背伸びしている程度の、不良顔した普通の女子高生とは、遠く隔たりがあるのは想像に難くない。女の子は彼女の近くに来ては、いずれ去ってゆくものなので、二葉もあまり気にしてはいなかった。だからこそ、女子目線で恋人の話を聞くのはとても新鮮でドキドキした。手をつないで歩く、別れ際にキスをする、また会う約束をする、当たり前の恋人同士の話を目を輝かせて聞いている二葉に友達は、
「なに、好きな人でもいんの?」
 当然のように聞いた。彼女にしてみれば、そんな浮いた話を聞いたことがなかった。男を下に見ているような二葉が恋をする相手がいるなどとは。そう、二葉はずっといたというのに。当たり前にずぅっと好きだというのに。それは恥ずかしくもない。でも、それをおじだとは言えなくて、俯きながら小さく頷く。ただ短く「年上のひと」とだけ言った。二葉は多くを語らずに情報を小出しにして想像を膨らませることがとても楽しいと思うのだった。
「ええーっ?!! 15歳位上ぇ、おじさんじゃん!」
 まさか。そうくるとは思わなかった。二葉は唖然とした。確か今年、一は三十五だったはずだが、決しておじさんという感じはしない。関係性はおじさんだが。だが、そう思われれば、少なくとも友達と一の取り合いになることはない。ある意味では腹が立ったが、ある意味では安心さえした。カッコいいと言われたいのに、カッコいいと言われたくない。乙女心はひどく複雑なのだった。そんな淡い想いの隣で、友達は初体験がどうのと話すものだから、二葉は初めてはやっぱり神崎一とじゃないと嫌だと感じた。きっと、一とヤるのなら怖くはない。それは殆ど確証に近いものだった。その日、『初エッチ』に関する掲示板で勉強をした。友達は照れくさそうに笑って、
「何年も前のことだし、気持ちいっていうのはわかんなかったけど……チョーシアワセだったよ」
 その笑顔が大人の女のそれで、二葉にとってはひどく眩しかった。こういう風にシアワセに笑いたいと強く願った。でも、調べた掲示板では「痛くて泣いてしまった」とか「血が出た」とか「怖かった」とかいう情報もあって、それを見てさすがの二葉も考え込んでしまった。何より、どうやって一とエッチする風に持っていけばいいのか? 考えれば考えるほど混乱した。シアワセと怖さや痛みが一緒に存在するなんて想像もできなかった。何より、一から痛みを与えられるなどと考えたこともない。一は決して、二葉には危害を加えない。口では意地悪なことを言いながら何をしてでも守ってくれていたから。

 夕方、電話が鳴った。前に二葉に告白してきたソイツからの久々の電話だった。出ると、バイトが連休だからたまには遊びたいとかそんな内容だったので、待ち合わせ場所に向かった。部屋から出ると、久しぶりに父がいてビックリした。何日ぶりに帰ってきたのか分からないが、一と似ていない顔立ちはあんまりカッコ良くないと思った。でも、周りはかっこいいじゃない、と言う。居心地の悪い不一致。
「友達と遊んでくる」それだけ言って、二葉は返事は待たないまま外へと駆け出して行った。夜遊びがどうとか、過保護に心配する親父やジジイはたまに会うだけの二葉にとっては、実はひどくうざったかったのだ。


***


「よ、久しぶり」
「日焼けしたんじゃねーか」
「二枚目になったべ?」
「一にゃあ敵わねぇな」
 二葉が、実のおじに恋をし続けていることを、彼だけは知っていた。告白されてこっぴどくフったことを反省した二葉が、ソイツにだけコッソリと話したのだ。別に咎めるようなことは言わなかった。ただ、悲しそうに「そうなのか〜」と言っただけだった。悔しかっただろうが、そんなことを言ってもしかたがないことをソイツだって分かっているのだ。メシ行こう、と言うソイツに「マクド!」と一と小さい頃はよく言ったファーストフード店の名前をつかさず叫んだ。最近は、そういえばあまり一は連れていってくれていない。だから、二葉は行きたかったのだ。本当は一と。
 マクドでセットメニューを頼み、それを平らげてから二人で、近くにある安いカラオケボックスに入った。二人で変わりばんこに10曲くらい歌ってからソファに寄りかかって、二葉は脱力しながら聞いてみた。
「オメー、彼女は?」
「──…今は、いねえけど」
「ふーん、前はいたのか」
「まあよ。つか、何だよその話題っ!何か、ハズいしっ!!」
「ドーテーなん?」
「…?!っ、っ、がふッ、何、聞いてんだ、二葉…っ」
「オメーだよ、ドーテー?」
「意味分かって聞いてんのかっつーの、──…や、違ぇけど。童貞とか、カッコ悪ィべ」
「そーなのか?おれ、処女だけど」
 明らかに部屋の中の空気が変わった。噎せて呼吸を整え終えたソイツが唾を飲み込む音と、喉仏の上下に動く様と合っている。二葉の肩にそっと優しく手を乗せた。前にキスされた時の思い出がフラッシュバックする。ヤバい、二葉は瞬時にそう思った。
「カラオケって、監視カメラついてんだぞ」
 効き目は充分。気まずそうな顔をしてソイツはパッと慌てて体ごと離れた。顔は真っ赤。なら、やろうとしなきゃいいのに、二葉は内心ひどく呆れていた。
「──…相談、あんだけど」
 今度は二葉から詰め寄った。こんなこと、誰にも相談なんてできない。一にだって、ヤスにだって。真剣な様子の二葉に気圧される形で、ソイツは及び腰になりながらも、二葉の、一とやりたいことについて、黙って話を聞く羽目になった。まったく相手の気持ちなどお構いなし、ありのままの恋心について、少なくとも複雑で嫌な想いを持っていたに違いない。だが、二葉のそれは相談というよりは、もはや取引に近いものだった。複雑ながらも、悪い取引ではなかったから、彼はゆるゆると頷いたのだった。二葉のために?それとも、自分のために?


***



 おれさ、一と初めてのエッチをしたいんだ。どうしても一とじゃないとヤダ。好きなひととヤりたいの。分かるだろ? でも、一はヤッてくんないの、わかってる。だから、ヤレる方法、一緒に考えてくんね? 一回、ヤッたらお前とヤッてもいいよ。初めてはあげらんないけど。
 あとさ、初めての女のコとヤッたことある? 痛いのかなあ? やっぱおれ、怖いよ。気持ち良さそうだった? あと、手とか、口とか、イロイロ使うんだろ? ソレの練習させて。一に気持ちくさせたら、絶対喜ぶかなって思ってさ。だから、やり方教えろよ。でも、絶対ヤッちゃだめだからな。



13.05.19
二葉×一 というか、それの布石です。
思ったより長くなってしまってすいません、、
オリジナル過ぎたしwww

どんどん、過去に遡る話とすることにします。

なので、先に書いたけど後にアップというか


二葉ちゃんは今時の、貞操観念の持ち主である女の子です。
ついでに、ヤンキー独自の感じも混じってるし。


これの続き書いたら、ただのエロだなw

覚書最終更新日時2013/05/19//Pm1412/

タイトル:自慰
2013/05/21 22:13:43