二葉×一な話(ぬるえろ

+ではなく×なのでちゅうい
(今回は致してますので特に!)

それは限りなく優しいに近かった



 水に触るような音が、部屋の中に響く。
 まさか、そんな音が人の身体から出るだなんて。二葉だって一だって予想していない。特に、二人で一緒になった時にその音を聞くだなんて、嗚呼。卑猥にしか聞こえない、水がぴちゃぴちゃという音がまだお互いの耳に届いている。それは聞こえているからこそ、互いに性的な興奮を覚えているのであって、耳は大事な器官なのだと今までの人生のうちに気づかなかったことに対して恥ずかしさすら覚える。ああ、こんなぺちゃぺちゃ、という安っぽい音で人が二人も吊られるだなんて人間というのはどこまで頭が悪いのか。今まで学者は思ったことがないのだろうかと疑ってしまう。でも、興奮を抑えられない。それは、二葉が組み敷いている相手の顔色を見ても明らかだった。嫌だと言いながら彼は、それを行動には移せずにいた。なぜなら、彼の身体は今はまだ自由が効かない。そうであることを望んだのは二葉。自由の効かない一を望んだのは二葉。上からのしかかられて、懸命に身を捩ろうとしながらも、あられもなく反応したのは一。悪いのがどちらか、なんて誰も答えられないだろう。
 素っ裸の女が薄く、そして女豹のようにヤラシく嗤う。耳朶をねぶられると男は身を捩りたがった。だが、身体はまるで己のものではないかのように動かない。ゾクゾクとした甘い感覚が脳から背筋を伝う。ハッ、と声を出さぬように弱々しく息を吐いた。ソレを見て男の上にのしかかる女は「感じる?」と挑発的に嗤う。これは仕方ない、望んだことでなくても生理的な意味合いで反応してしまう。ヒトの身体というのはそういうものだ。男は殆ど服を剥がされていたが脱がされてはいなかった。捲り上げられずり下げられ、ほぼ生まれたまんまの姿にはされていたが。だが、この状況にひたすら圧倒されて男は気持ちいいも、気持ち悪いもまだ感じられないでいた。その証拠に股間は縮こまったままだ。それを見られているのかと思うと、さらに縮み上がるのが男の心理というものだ。身体が動かないのも手伝って、緊張感だけが男を支配している。あとは、いつもと違う様子の女をただただぼぅっと見上げているだけだ。どうすることもできなくて、そこに在るだけの存在に成り下がる。これは夢じゃないのかと何度も思い込もうとするが、女から与えられる感触のすべてにおいて、それを否定するからできずにいた。ならばもう、現実に在るしかない。
「……二葉。」
 女の名を呼ぶ。これは現実なのだと、自分にも、二葉にも言い聞かせる意味でも。そして、初めて気づく。体の自由は効かないが、声を出すことはできるらしい。だが、久々に出した声は情けないほどに掠れていた。二葉は鋭い視線を緩めることなく、真っ直ぐに見下ろす。そして、噛みつくようなキス。10歳以上も歳下の女に組み敷かれる情けなさ。そして、こんな部分もあったのかという驚き。顔を背けたくても、やはりできない。何か薬を盛られたらしい。動かせるのは、視線と口だけ。だが、口もいつものようには動かない。二人の間で唾液の糸がつながってはぷつんと切れる。垂れるのは下になっている男の方へ。それを二葉は舐めとって笑う。
 二葉は、姪。
「一。おれ、一と、シたいよ…」
 間違っている。とか、俺の意見は? とかそんな野暮なことは聞けなかった。二葉の本気の、切羽詰まった眼差しを見たらそれは。二葉はもう、しようと思えば結婚もできる歳の女子なのだし、今この場で晒した身体は確かに大人の女のものだ。胸はそう大きくもないが、特別小さいわけではないし、顔だって悪くない。生意気そうな顔はしているが、割に美人に育ったものだと思う。だが。神崎はその気持ちに応えるつもりはない。おじとして。そして何より、そんな目で見られないのだ。見られるはずがない。まるで、自分の娘かのように、妹かのように存在していたのだ。神崎二葉という娘は。キスをしても、好きだと言われても、シたいと乗っかられても。きっと、ずっとこれは二葉と神崎一の間ではずぅっと平行線なのだろう。意思表示は言葉以外にない。身体が動かせれば逃げることもできるが、今はそれすら叶わない。神崎はつとめて冷たく聞こえるように、感情を込めないように言う。
「その気はねーよ。やめろ」
「うっせぇ」
 照らいもなく二葉が神崎の身体をまさぐる。ハタチそこそこの娘が、男慣れしてるなどと考えたくもなかったが二葉は、手慣れた調子で触れてくる。知らないところでこんなことをしてきたのかと思うと、どうしてかそれだけで泣けそうな気分になる。胸がツンと痛む。その胸の痛みが通じたみたいに二葉は触り、揉みながら舌を這わせる。いや、そうじゃねぇよぉ!…とにかく色んな意味で神崎は泣きたくなったが、この状況で泣いたなどとなればそれはまた別の意味で落ち込む結果になりそうなので我慢することにした。目の前で神崎の身体を責めてくる女と、あの二葉が同じ人物などとは認めたくなかった。今まで何か間違いでもあったのだろうか?と何度も頭の中で昔からこれまでのことを反芻してみるが、神崎にしてみればまったく色っぽいことなど何一つ思い当たらないのだった。懸命に乳首を吸う二葉の様子を見て、昔に哺乳瓶を咥えさせた思い出とはイコールにならないのが不思議だった。軽く歯を立てることで、的確に責めてくる。だからといってその気になるわけではないのだが。
「一。感じないの?おれ、感じてほしいのに、一に」
「…やらねーって」
 全然ふくよかじゃない男の胸板に頭を乗せて二葉は甘えたような声を出す。雌だ、神崎はそう思った。どうして二葉はこんなことをしようと思ったのだろうか。聞きたくても聞けない思いだけが頭の中をぐるぐると駆け回る。その間じゅうも二葉は胸を撫で回している。膨らんでいない胸を触ってもやわらかくもないし、きっと楽しくもないだろうと感じるのは男だけなのだろうかとも思う。そうしながらも二葉は自分の身体も押しつけてくる。腹筋や脇腹を撫ぜてその手はやっぱり股間に辿り着いた。頼むからやめてくれ!と神崎は祈るような気持ちで顔を歪める。それを見て二葉は笑う。弱いところを責める時の嬉しそうな顔ったら、憎たらしいことこの上ない。
「一、気持ちくしてやるね」
 いつもよりだいぶ媚のこもった声だった。二葉は、分かりやすくいえば発情している。それを思うと、ずくりと疼くような邪な気持ちが湧き上がってくる。神崎はダメだ、と何度も何度も子どもの頃の二葉の顔と、今悪魔のように微笑む二葉の顔とを、何とかドッキングさせようとして必死になっていた。だが、キスされて舐められて、脳みそが溶けそうだと思った。神崎の意思などくだらないほどすぐに崩壊した。目の前の女に飲み込まれる。雪崩のような欲望に、勝てずに逃げ切れずに押し潰される。気づけば二葉がまだ萎れたままの神崎のペニスに舌を這わせて、そして咥えこむ。姪の唾液と、自身から出る樹液のせいでベタベタになったソレは、隆々とそそり立っていった。的確に気持ちのよいところを責めてくる二葉は、神崎が知っている姪ではないとしか言いようがない。
 神崎は二葉によって顔から足先まで、指で、手で、舌で、味わい尽くされた。もう勘弁してくださいと泣きたくなったのは結局、神崎の方だった。まだ一度もイカされていない。自分の腹にくっつきそうなくらいガチガチに反り返った欲望は解放を望んでタラタラと涙の代わりに粘液を垂らすしかない。ソレを見ながら二葉は自分の身体を、神崎の目の前でいじっている。素っ裸で、胸をいじって、股を開いて、そこから液を垂らして。一とヤること考えながら一人エッチするんだ、などとこれまた考えもつかないようなことを平気で言う姪に、神崎はギョッとした。マジですか。
「…も、いいよね?」
 ゆっくりと二葉が身を起こし、四つん這いになりながら再び神崎に跨った。指で膣を拡げながら二葉は、懸命に神崎を受け入れようと腰を落とすが、辛そうな表情になっては何度も何度もやり直す。そして、コンドームを付けていない。やがて、二葉の股の間から血が垂れてきた。それだけの問題ではないが、あ。と思いがけず間の抜けた声が神崎の喉から漏れた。だが、二葉にしてみればそんなことはどうでも良かったようだ。まだ作業は続いている。痛そうに顔を歪める二葉を見て、まるで拷問みたいだ、と思えば今まで燃え盛っていた欲望は、水をかけられたみたいに急激に萎んでいった。イク前に、萎えた。
「もう、ヤメろ…」
「な、何でぇ…?だって、さっき…」
 二葉はまた神崎の濡れたペニスを咥えた。手も使って扱き始める。だが、今度こそ神崎の意思を表しているようで、まったく反応しない。二葉の目からは涙が零れ落ちる。意味が分からない、二葉は悔しくて仕方なかった。今すぐにでも一と、一つになりたい。彼の身体だって、つい今さっきまではそう望んでいたというのに。
「もうヤメろッッ!!!」
 神崎が凄んだ怒鳴り声をあげた。そんな声を聞いて、ビックリして二葉といえども身体がすくむ。震える手を伸ばして、その大きくて温かい手で、二葉の頭に優しく手を置く。どうやら動けないようにしていた薬の効果はもはや切れつつあるようだった。薬の効果が切れれば神崎はここから去るだろう。なのに、この手からは離れたくないと思った。安心するから。温かいから。好きだから。大好きだから。
 泣いているのは二葉の方なのに、悲しそうなのは神崎の方だ。カーテンの外からは昼間の燦々とした明かりが差し込んでくる。真っ昼間からこんなことをやっているのは不健康な感じがする。
「昔から、二葉のことを泣かすヤツは絶対許さねぇって思ってた。……それが、俺だ、なんてなぁ…」
 それから、もう二度と神崎は二葉の顔を見ようとはしなかった。自分の手を動かそうとしたりしていたが、薬の効き目が切れたらしく、手をグーパーした。何度かそれを繰り返す。神崎のぎこちなさがなくなるまで。そして、おもむろに起き上がり服を正してそのまま、神崎は部屋から出ていった。ケータイもヨーグルッチも置いたまま。
 二葉は、そのまま突っ伏して大泣きした。シーツに血が点々と落ちたのもそのままに、二葉はしばらくそこから起き上がれなかった。辛そうな顔をした神崎の横顔が、最後の彼の姿だなんて嫌過ぎる。伝わらなかった、と思う。迷惑がられた、と思う。ならばこの気持ちの矛先を誰に向ければよいのか。神崎一以外の誰に。それは、二葉にとって誰か、なんて考えることなどできないのだった。一だけを想ってる。


13.05.21
二葉×一のちょいエチィパート

思ったよりもエッチな感じにならなかったです。すいまっせん、、自分のせいでございます。。。。。


最後まで、神崎くんがヤれる状態になるか──ってそんなんアフォやん。男だし。据え膳食わぬは何とやら〜?要は、──勃起するかしないかで、悩んでました最後まで。で、最後に出したのはこんな感じになりました。
納得しなかった人は、すみませんでした。

グダグダしたかもしんないけど、神崎くんの男としての、意地みたいなもんは通せたんじゃないかな、と思う。そういう意味では、よかったかなと。


タイトル:自慰
2013/05/21 22:10:09