どんなに愛しても掴めない



 いつからだったのか分からんけど、気付いたらもう、彼女のことばっかり目に入ってくるようになった。寝ても覚めても、とは言うけど、本気でそんな日がくるようになるとは思わんかった。彼女は俺のこと見てくれてへんのは分かってる。そんなんはよほどのアホの極みじゃないんやから、感じられる。彼女は、まぁ誰のことですかーなんて今さら聞かれても照らいも何も無いんやから、答えんのは簡単やけど。
 静さん。
 俺はあんたのことが好きんなってた。高校で同じクラスになってから、あの瑞々しい愛らしさも、男をあしらう冷たさも、俺はいつの間にか好きになってた。理由なんて、好きにも嫌いにも、まあ心ん中にはあるんやろうけど、そんなもん、意味ないからね。や、少なくとも俺はそう思うけど。理由なんてなくてただ好きですって話で。あんた勉強もできんのになんでそんなん言うのってみんな言うやろうから、俺はそんなん絶対誰にも言わんのやけど。どこが好きですっていうのんはありますよ、そりゃ。でも、だからって、それが理由ですっていうのはまた違うからね。
 ああ、こういうことばっかり思ってると、恋愛体質なんやないかって思われるかもしれへんけど、そんなんちゃうで俺。こんな気持ちは初めてやし、だからこそ溺れてるんやないかって思うんけど。だいたい、恋愛体質って言葉がおかしいんやないかって俺思うねんて。体質とちゃうし。好きな人のこと考えたり、その人のこと思って一喜一憂するのんなんて別に変とちゃうやろって思うわ。そんなんグツグツ鍋煮立つみたいなんやろ心っちゅうもんは。俺はどっちかってーと、最初ガーって煮立ってから萎んだみたいに覚めてく方なんやけど。でも静さんの場合はちゃうな。俺、高校入って静さんに会って、初めて女の人のことすごく考えたんや。実は。今まで告白されたことはあんねんて。勉強とか、どうでもええねんけど、みんなできるね〜てチヤホヤしよんねん。ほんで、その流れかなんか分からんけど女の子も何人か、告白してくるんや。「出馬君のこと、好き」とか、「付き合って欲しいです」とか、そんなん言われて悪い気ぃせぇへんて。でも、最初はああ〜て思ったけど、何回かあるとあ、そうなん?みたいなノリなってまうねんて。別に付き合ったこともあるよ、前には。今は彼女おれへんけど。まぁ俺静さんしか今興味ないし、今んとこ持てへん。別に性欲とかな、そんなんまったくありゃしませんだなんて、マンガのキャラクターやないんやから、んなことよぅ言わんわ。俺かていっつもは涼しい顔しよんねん、でもなんもないわけやないからね。俺悪魔の血ぃ入っとるけどそこら辺別に普通のニイチャンやねんて。スケベ心ないわけないやんか、ニンゲンやし。そういうのん静さんに感じたことないなんて俺絶対ウソんなるからよう言わんし。
 そんなんで、こう、なんちゅうんかな、恥ずいねんけど恋心持って、俺も割とすぐ自分でも気付いてもうて、まぁ告白なんちゃらはせんかったけども、六騎生とかなってからは考えてたんや。実は。俺も言いたいってずっと、内心は思ってたし。俺の、気持ちを、静さんに。言葉にすると「好き」ってほんま軽いわ。思うけどもほかに言える言葉も俺知らんし、本気で辞書めくったこともあんねんて。好きですってことを、なんかもっと、いい表現とかできひんかなって思って。でも、辞書の言葉なんて、どっかの教授とかのオッサンらが書いた勝手なもんやな〜って思って。ほんまはニ、三十分は見とったんけど、はたと思うわけや。そないに時間かけて、ヘボいわーようほんまにて思うけども。なんや時間かけて見ぃひんとジワジワこぉへんもんってそりゃあるからね。必ずいうか。で、まぁ俺も言いたいこと言ってしまいたいし、そのうちデート誘って、ま、恥ずいもんでストレートど真ん中ではよう言われへんのやけど、それはまぁ、俺も羞恥心あんねんしゃーないいうか。静さんにいつ告白しよう思ってたら、石矢魔高校の変なヤツらが来よったんや。
 そこから、静さんは少しづつ変わってった。幼馴染ってそんなにええもんなんかな?俺はそういうんよぅ分からん。東条英虎。確かにあいつは強い。人とは思えん強さ持っとる。俺の悪魔の力なんちゃらよりも、確固たる強さみたいなもんがある。でもそれは、愛とか恋とか、そんなんやないよ、静さん。過去って、絶対、どう考えたって美化、すんねん。一緒にいた時間とか、そんなん言われたら俺どう背伸びしたって、ここ三年近くだけやし絶対勝てへん。だったら、て思う。せめて、強さだけは、って。だから俺は東条英虎に喧嘩売ったったんや。せめて、強さを静さんに認めてほしいって、思ったんや。強さってポテンシャル、男としてはやっぱり、一番欲しいって気持ちは分かるから。同じ男として。でも、今までの俺が知らん静さんの、女の子の部分が、ほんまに可愛くて可愛くて。こうさせてんのんが東条英虎やと思うと俺は、カッコ悪いけど虫酸が走るんよ。負けた!って思う。静さん、俺は、あんたのために、強くもなりたいし、カッコ良くもなりたいんよ。そういう想い、まだ俺は面と向かって言う根性ないねんけど、東条英虎には、あいつにだけは負けたくないって思う。幼馴染がなんぼのもんじゃい!って思う。それでも、静さんは東条英虎しか映さない。切ないわぁ…。どこがええんですのん? 強さだけなら、俺かて悪ないやろ? 俺のが勉強もできるし、器用やよ? たぶん、静さんを悲しませたり、心配させたりもようせんし。いろんなこと思う。ぐるぐるぐるぐる考えてまう。それでも、東条英虎に勝てる気がしないのは、あのバカ男のことを、ほんまに、まっすぐで澄んだ気持ちで、静さんが見つめてるの、俺は静さんのそんな健気な気持ち、よう分かるからや。ああ、こんなに想っても。あんたの心はいっこも掴めへん。切ないです。静さん。


13.03.31

独特な文体で、思ったことをただひたすらに綴るっていう出馬の、七海静への思いをひたすらに書いたものです。

ちなみに、タイトルはお題ったーから。

あんな優等生のお兄ちゃんでも、悶々と恋で悩んだり、嫉妬したりするんだよ。みたいな話です。でも当人はいっつも涼しい顔をしてます。それを本人も分かってやってます。そこが、気持ちと行動のギャップみたいなのを書いてみたくて、まぁ一般受けはまるっきりしないんだけど、書いてみた感じです。



最近、あんまり文章が書けないのでリハビリです。
面白くもなんともない文でしたが、どんなんが好まれるのか分からないので、とりあえず投下させていただきます。読んでくださりありがとうございました。読みづらいのに。

2013/03/31 17:19:04