雪を見て思う。はらはらと降り注ぐ雪を見て、ただひたすらに思う。毎年毎年のことで、嫌だと思うくらい見慣れている雪がはらはらと舞っている。もう足元はとっくに白く染まっていて、寒さだけをぼくらに告げてくる。そんなもの伝えなくてもいいのに、そう思うけれどいとおしい彼女が、ぼくの彼女が寒いって言ってぎゅっと手を握ってくれるからこんな雪も悪くないのかな、なんて。寒いのはやっぱり嫌だけど、まだごっそりと積もり積もってるわけじゃないし、雪かきの必要はもう少し先になりそうだったから僕は彼女の手を握り返した。冷たくなった彼女の手を。そうしたら、彼女はぼくを見てほわんとした、いわゆる癒される笑顔を浮かべた。ぼくがそんなふうに感じただなんて彼女は思ってもみないだろうけど。それは彼女の脳が笑顔に負けず劣らずほわんとしているからだ。彼女はぼくのことをどう思ってるのか、なんて聞くに聞けないでいるから、こうやって手を握るだけでバクバクする心臓の音が邪魔なんだ。この音のせいでなんにも聞けないまま邪魔ぼくらは付き合い始めてもずっと、何の進展もしないままでいるんだ。誰のせいだ、って言われてしまうときっと、それはぼくが君に対して意識しすぎて、逆になんにもできないでいることが要因なんじゃないかって思うけれど、それでもまだぼくは君に対して一線を超えることができないでいる。ああ、超えたい壁も線も、山のようにあるっていうのに…!
 寒そうな彼女はぼくの頼りない手を握ってはにかんで、いつもの調子でよろめいてはぼくの体に激突する。軽いと言っても人一人の体だ。ぼくだって力を込めてなかったわけじゃないけど、情けないかなよろめいてしまう。一緒に転ぶ前にぼくは彼女を抱きとめて、何とかそれを食い止める。ぼくだって転びたいわけじゃないし、彼女だってそうだろうから。いつもずっこけてばかりいる彼女はとてもかわいいけど、痛そうに顔を歪める君を見たいわけじゃないんだ。もちろん、歪んだ顔の君だって、いつもどおりかわいいと思うけど。抱きとめてふらつきが収まれば彼女はぼくの顔を見上げた。すごいね!なんて場違いな言葉を言う。何もすごいことなんて一つもないのに、彼女はぼくを手放しに褒めてくれる。そりゃあそうか、ドジな君に比べればきっとぼくは、とっても器用でよくできる人物なんだろう。本当はそんなんじゃないけど、君が評価してくれるんならぼくはそれに甘えようかな、そんなふうに思っているよ。
 キスしたいよ。抱きしめたいよ。君と一緒にいたいよ。好きだって言いたいよ。キスとかハグとか以上の、もっとエッチなこともしたいよ。君のことばかり考えているよ。
 それでも君にはそんなこと言えなくて、君の声を聞いてしまうと、君には何か見透かされたみたいな気持ちになってしまって、ぼくは悔しいくらいになんにも言えなくなってしまうんだ。それくらい、ぼくの胸は君の色に彩られていて、君はそれをまったく知らないんだろうけど、ぼくだけは知っているからドキドキするんだろうね。それを君に言ってしまいたいぼくと、絶対に知られたくないって思うぼくと。そんな思いなんて関係ない、同じ空間にいられることがどれだけ大事かって思うくらいただそれだけを願っていたり。ガキみたいに君のことばっかり思うぼくはきっと、誰から見ても子供で女々しい男なんだろう。だけど、そんなことを理由にぼくのことを幻滅する君じゃないってぼくは分かってるんだよ。でもやっぱり、そんなことは口にはできないんだ。君という存在を意識してしまえば、ぼくってやつはこれまで思って来た、考えて来たいろんな思いや言葉たちをどこか近くて遠い記憶の中に、どうやら置き忘れてしまうらしいんだ。忘れたくなんて、ないのに。


12.12.25


Song of HY いちばん近くに

いつぶりか…の(最終兵器彼女)シュウジとちせですw
変わらずシュウジの語りですけど。


素直になれない男心というものが描ければいいな、と思ったのですが……なってないでしょうか?
まぁ自分の気持ちなんかも交えていろいろ綴ったけど、あんまり伝わるものってないですかね?まぁ私の拙い文章でああだこうだというつもりはないですけど、時間があればもう少し書きたかったですけどね。

これは多分初期の話かと思われます(笑)
2012/12/25 23:37:32