馬鹿らしいと誰もがきっと思うだろうけど、やっぱり、どうしたって諦めきれずに、忘れられずにお前だけを思って、どうしようもなくて引きちぎった手錠の鎖がジャラジャラと五月蝿く音を鳴らしていたけど、それでも一目でいいからかつて愛したその可愛らしいお前の顔を見ずにはいられなかった。もちろんここまで落ちぶれてしまったこんな情けない姿を晒すなんて、これっぽっちもなかったけれど、でも、どうしたって顔を見るくらいは許してくれよ、いつの間にかドロンと消えっちまったマイゴッド!
 その日はホワイトクリスマスで、ビックリするくらいにロマンスを感じる夕暮れを経た夜のこと。吐く息は一人じゃ取り残されたみたいに寂しくて、でも、二人ならきっと温かな痺れを与えてくれるんだろう。もちろんこんな俺に温かさなんて与えてくれる女神の存在なんてない。俺にあるのはただ一つ、臭い飯の香りのする檻ぐらいのモンさ。そんなことハナっから諦めてる。でも見放され切ってないんだな、と思ったのはお前の家の位置はまったく変わってなかったってこと。だから俺はこうしてお前の作る、さして美味くもないけど決して不味くはない、でも今の俺には不釣り合いなアツアツの料理の匂いを嗅ぎ取ることができる。お前の得意なピザの香りが家の周りを充満している。飽きるくらい食わされたっけ。それでも俺は文句なんて言わなかったよな? ただ一回を除いては。ゴメンな、あの時のピザは本当に下側が真っ黒焦げになってたんだ。お前は知らずに俺に涙堪えながら別れてやるって言ったけど、苦いにがいピザはマジで地獄だったんだよ。口の中には臭い苦味しかしないツバが溜まってたまって。
 懐かしい記憶が俺の、こんな落ちぶれて使い物にならない男の、どうでもいい胸の奥をぐりぐりと抉る。抉られるほどにまだ心が残っていたんだってことにようやく気付く。泣くほど痛むわけじゃないが、やっぱり血の通ったヒトってヤツよ、どうしようもなく痛いんだ。そんなふうに思ってるんだなんてお前はまったく知らないんだろうけど。一目でいいから、と俺はお前の姿を見るために台所辺りに立つお前を覗き見る。頼むからヘンタイ、だなんて呼ばないでくれよ。そんなつもりなんてない。別に、かつての婚約者を脅かすつもりなんてない。今の俺は、今のお前とどうこうしたいなんて、思ってても絶対に言わないから。思ってても、っつうのはそりゃあそうさ、諦めなんてまだまだつかないのを俺自身感じているからさ。結婚秒読みだった俺とお前との間柄。引き裂いたのは俺やお前の落ち度なんかじゃない。だからこそ諦め切れてないんだ。お前が、俺を忘れていたとしても、俺はお前をまだまだしばらくずっと、きっと忘れられないだろう。女々しいというならいえばいい。何といわれようとも気持ちがそんなに簡単に変わるわけがない。変われるわけがない。そんなに簡単に変われるほど軽い思いでお前を愛したんじゃない。
 そんなこんなで俺は今でもお前を思ったまま時を止めている。そりゃあそうか、いつも俺は閉鎖された機関で、まぁいっちまえば檻の中で暮らしている。いるかどうかは別として…。俺でも壊せる程度のヤワな檻の中で。壊すことを分かっているはずなのに、そのまま使い続ける市の職員の連中らの方がどうかって俺は思うけど。犯罪者ってレッテル貼られてる以上は下手な動きだってそうそうできやしない。閉鎖された機関は、必要に応じてコロコロと流れるまま変わらなくちゃいけない。動く誰かをターゲットにして、自分らの存在こそ正義なんだという存在をアピールする。見てるだけなら確かに、その存在等々はまたキラキラするんだろうな。あああ、そんな思いを、嘲笑うみたいに外は冷えてキンキンになってる。外に出した飲み物はきっとたちどころに凍りついて行くだろうが。そうなってもならなくても、俺はきっと変わらない。お前への思いも全部。変われるほどの材料も自身も、今の俺にはなんにもないんだよ。いじめてるわけでも何でもないんだけど。それでも、どうしたって面と向かっていえない言葉がある。愛してる、とかそんな陳腐な言葉じゃなくて、もっともっとお前に身近な言葉をいいたくてもいえない。それを俺がいうにはあまりにも、お前と俺の位置が遠過ぎるから。覗き込んだそこにはお前の姿があって、それならいいけど、いて欲しくない男の姿があって、台所でお前と知らない男がねっとりとキスの一つでもしてる最中と来たもんだ。こんな世界に何の未練があるってんだ。まだまだお前を愛することなんてやめられそうにもねぇってのに、お前は俺のことを忘れっちまったのか。涙なんて脳みその中だけでダラダラと垂れ流して、その場からすぐに檻の中へと戻って行った。シャバにいること自体がバカバカしい。お前のことを忘れるためにはどこに行けばいいのかなんて、これっぽっちも使えそうな予測の一つもできやしない。お前だけでも、俺を見守ってくれたら良かったのに。……未練がましくてごめんな。じゃあな。


12.12.24

お疲れ様です。

初ファイナルファイト文(笑)しかもクリスマスネタで不幸なヤツw

曲→EXILE atsushi 新譜 愛さない約束


や、ジェシカさんって急に出なくなったからなにかなーーと思ってたり。
そんなヤツだと思われても全然構わないし、痛くも痒くもないないから。

コーディ話はこれからも何個か書いていきたい。関係者も出てるだけに、ストシリーズになるのかも?4でも出たしね。
なんだかんだで彼は結構使い易いよ。重いけど。

2012/12/24 23:53:38