神崎二葉、今日も学校は送り迎え付き。よっぽどのことがなければ基本はいつも黒くて長い、イカニモ…な高級車で朝から校門前まで送ってもらえる。送ってくれるのは殆どが二葉のおじに当たる一だ。二葉と一は大体一回りくらい歳がちがう。それでも一は二葉のことを昔からよくしてくれる。言葉は荒い。めんどくせえとか、だりぃとか、そんなことを言いながらも一は二葉が言った所にアッシーしてくれる。だから二葉は一に行きたい所とか、やりたい遊びなんかをおねだりし続けた。二葉の学校に一が送り迎えをするのもその一つで、最初一は「八時過ぎとかまじありえねぇ」とかだらけた感じでぶつくさ言っていたけど、二葉は一が送らないんなら部屋からでないと言い張って、十年くらい前はパパとか言っていたと思うオヤジジイが二葉の部屋に突入してきた。オヤジジイは一の兄貴だから、一と似た声をしてて、たまに一の真似をする時がある。そうすると二葉が喜ぶから。そんなことをしていたのは何年も前のことだったからすっかり忘れていて、一が来たのかと思ってドアを開けた。そしたらオヤジジイが入って来て二葉をぎゅうっと抱きしめた。それを二葉は嫌だ、って思った。騙された感じがしたから。だからだったんだろう。ボロボロと涙が出た。無我夢中でオヤジジイの体から逃れながら泣いた。その時のオヤジジイの顔って言ったら…! 悲しそうで、迷っているみたいで、不安そうで、どうしていいか分からないって顔をして、それでも泣いてる二葉にどうすることもできなくて困っているオヤジジイ。腫れ物に触るのが怖い、みたいな様子でオドオドしている。一よりもさらに十くらい歳上のはずなのに、二葉にはむちゃくちゃ弱い。だから追い打ちをかけた。
「騙す人、なんて……大っ嫌い!」



 その日から一が二葉の送り迎えをすることになった。一はいい顔をしなかったけど、それはいつものことだったから二葉は気にしない。いや、本当はちょっと気になったけれど一の表情はそこまで嫌そうでもなかったから、二葉は安心した。言うほど嫌がってないんだ、そう思えたから。その後に一はオヤジジイについて落ち込んでいたらしいことを言いながら二葉を学校まで送ってくれた。一が運転するのは黒くてピカピカで鼻もお尻も長い車。イカニモ『ヤ』の字が付く印象があるけど、二葉にとってそれはまったく関係ない。どうしても一がダメって時は二葉と一との間の約束事で、事前にメール。誰が二葉を送っていくか、二葉を送れない理由を一が送信。それについて二葉が了承の返信。この過程がないと二葉は納得しないから学校には行かないし、誰か分からないけどその人に送られるつもりもない。
 今までの一のピンチヒッターは大体決まっている。まずは一の下僕の城山。もちろん一の下僕なんだから二葉の下僕でもある。城山は一と同じ長くて黒い車で送ってくれる。城山はデカくて、一よりも迫力があって見た目だけなら超強そう。送り迎えの時に見た友達が言うには、あの人絶対怖いよ、とか言うけど二葉的にはかんなり優しくて、虫も殺せないんじゃないかって思う。小さい子供の相手がよく慣れてるなあって思ったら、弟とか妹がいっぱいいるんだとか。ついでに動物も好きだし、感動ものの映画はすぐ泣く。そんな人が怖いワケもなくて、二葉は城山を怖いなんて思ったことなんて一回もなかった。だから友達の言葉にびっくりしてしまった。確かに見た目はいかついし、怖いかもしれない。それに気付けたから納得できたけど。
 次点のピンチヒッターは、夏目。夏目も城山も一の高校時代の同級生なんだという。そのまま一に着いて来た夏目と城山の行動は、二葉として当たりだったと思う。ヤが付くのが嫌ならしょうがないけど、オヤジジイみたいに逃げるのはカッコワルイって思う。そうしなかっただけ夏目と城山の方が全然カッコいい。でもいつもの車で来てくれないのが夏目だ。最初の何回かは夏目もいつものピカピカの黒くて長い車で来てくれていたけれど、運転難しい、とか情けないことを言って自家用車に切り替えた。その自家用車っていうのがまたカッコいい。誰もが目を引く、雨の日はどうなるのかなぁと思うような屋根のない赤いスポーツカーで尖った感じの車。それを見ると途端に友達がわあきゃあと喚きだす。そこで颯爽とドアを開けて出る夏目の姿にクラクラしてる女の子たちはたくさんいる。そんな夏目の流れるような綺麗な髪も、整った上に好意があるとしか思えない微笑みも、何か物欲しげに見つめながらに細められた視線を示す目も、すべてが本当のことなのだろうけれどそれでも、二葉は夏目にどうこう思うことなんて一つもない。まあカッコいい、二枚目なのはそれはもう、分かりすぎるくらいに分かるけれど。
 さらに確立的には少ないけれど、ジジイの部下のヤスが来たことが一度だけあった。その時は一、夏目、城山の三人から殆ど同時に今日はいけませんメールがダダダと流れ込んできたのだった。理由は昨日どうちゃらとかそんな大したことでもなかったんだと思うけどあんまり覚えていない。その時もそこそこゴネたのは何となく覚えてる。最終的に一から電話がきて、直にごめんな、と言われたからウンと言ったのは記憶している。例外はそれだけ、ただ一回の例外だから例外と呼ぶんだろう。

 いろいろあったけれど今日は誰からも何の連絡もない。いつもみたいに一が校舎の前で車から降りて二葉を探している。キョロキョロする姿はあんなデカくてがっちりした車のすぐ側でやるには不釣合いだと思ったけれど、アタフタする一をもう少しだけ見てみたいと思ったから少しだけ放置しておいた。数十秒程度放置しておいたらフラフラと校門前を行ったり来たりし出したのでちょっと面白い。表情もいつもより真剣味を帯びていて、二葉が見る横顔とは別の顔なんだなと思った。一は二葉を探しながらも時計を見る。またきょろきょろ、また時計を見、きょろきょろ。あ、という感じで一は二葉を見た。目が合っている。気づいたら二葉は一人になっていて一に見つかるはずだと思った。思ったよりも早くバレてしまった、そう思った。ズカズカと、でもいつもみたいなダラダラしたやる気のない歩き方で一は歩きながら近寄ってきた。くしゃりと、子供の時からまったく変わらない頭の撫で方で、一は二葉が文句を言ってもこれだけは絶対にやめようとしない。髪が乱れるから、だから嫌だって大きな声で言っても、くしゃって。でも二葉は、本当は髪の毛なんてそんなに気にしていない。それよりイカニモ子供扱いしてるような一のその撫で方が気に入らない。だから精いっぱい嫌そうな顔をしてやっているのに、こんな顔を見せたらオヤジジイも、そのオヤジのクソジジイも、ヤスだって絶対二葉の味方になってくれるはずなのに、一だけはここだけは譲らない。一はオヤジジイと似た低い声で言う。
「帰っぞ」

 車はいつものように低く唸る音を立てながら、一と二葉を乗せて住宅地をゆっくりと走る。車の中でゆらゆら揺られながら二葉は思い出す。友達たちの中での『二葉のお守り隊』の中で一番カッコいいのは、というくだらない話。クラスメイトの女の子たちはいつもそんな話ばかりしている。そういう話はあまり興味ないのでほとんど聞き流し。聞き流しと言ってもまったく聞いてないわけじゃないから頭に入っていることもある。二葉の友達の中では一番人気があったのは夏目。あの人かっこいいよね〜とほとんどが言う。先生の中でも誰かがミーハーっぽくそんなことを言っていた。それはそうだろうと思うけど、あの車はどうかなぁと思っている。屋根がない車はあんまり好きになれない。次点は意外に城山で、守ってもらうんなら強そうなあの人がいいとか、三つ編みなのが気になるだとかアルイミまったく関係ないことでジワジワ人気があるらしい。とは言っても夏目みたいに目をハートにしてる感じではない。実用性と言った方がいいかもしれない。一番人気がないのは一だった。印象が薄いみたいで、友達の間ではまったく一の話にならない。一は二葉と一回りくらい歳が離れているんだから、大体今は30歳くらい。昔から生やしてるオシャレなアゴヒゲと短髪と数かなり多いピアスは変わってない。だからパッと見受ける印象なんかはほとんど変わらない。けれど、髪の色が違ってる。ここ何年かで色を抜くのをやめたみたいで今は黒い髪に戻っている。こんな変化だけで与える印象はガラリと変わる。数年前までは光に透けてキレイな髪だなって何回も思った髪だったのに。どうして?と聞いた時があった。一は笑いながらこう言った。
「この歳で、キンパもねえわ」
 …そんなことないのに。



 車の振動が心地よくてうとうとしていたら、信号で止まっていたけどまた車は動き出した。その振動で足元にこつん、と何か硬いものが触れてハッとした。何か落ちたのかもしれないと反射的に目を開けて足元を見る。と、見覚えない袋から小箱がちょっとだけ覗いていた。なんだろうこれ? それを聞くより先に手を掛けてその場で掲げた。と、同時に一は思わずブレーキを踏みながら路肩に車を寄せる。何だか様子がおかしい、そう思った。目だけを一に向けて思いっきり睨みつけてやる。睨みつけたのには理由がある。その小箱はどう見ても指輪入れだったから、これはどういう意味なのか、また誰宛に買ったものなのかを問いたださなければならない。そう思ったせいで知らないうちに目つきも鋭くなって行く。面白いわけがない。一について全然知らないことがあるんだなんて。二葉は一の全部を知ってるはずなのに。伸ばした手から遠ざけるように指輪の入れ物を窓の方へ寄せた。一が「あっ」という顔をして困ったように溜息が洩れる。弱々しく、でも確かに一は言う。
「…返してくれよ」
 伸ばした手をよけるために身をよじっても、ほとんど触れそうな位置にその手はあって、困ったような顔のまま一はようやく指輪の入れ物から目を離して二葉を見た。困っている一は目つき悪いはずなのに、どこか愛嬌があって可愛い。それをもっと見ていたくてギュッといれ物を強く握った。何か言いたそうな顔をしている。別に怒っているわけじゃなくて、本当に困っているみたいだ。
「なあ、コレ……何?」
 わざと冷たい声で言ってやる。一がたじろぐのが空気で分かる。近い位置にある喉仏が上下した。息を呑んだらしい。言うのを躊躇っている。その理由は? 何を考えてこれを誰のために買ったのか、それが分からないから気に入らない。そのせいで言い方が少しきつくなってしまう。悪気はないんだけど。
「ゆびわ?」
 一の瞬きが数秒間、僅かの間だけど時が止まったように停止する。ムダだと分かって一は抵抗をやめました、と言わんばかりにこちらに向けていた体を離して、運転席の椅子へ寄り掛かりながら「まぁな」とだけ言った。答えたからといって返してやるつもりもない。まだ指輪の入れ物は二葉の手の中にある。
「誰にやんの? オンナ?」
「大事なモンだから早く返せ」
 刃向かうように一が言葉を遮る。今まではダルそうにぼんやりしていたクセに、急に感情が生まれたみたいな態度だったからびっくりする。眉を寄せて、少しだけ機嫌が悪そうな表情をしている。どうしてそんな顔を二葉に向けるのか、ムカつく。そう思ったから窓を開けて外を見た。ここから指輪投げたら箱ぐらいは壊れてしまうだろうか。硬い物もアスファルトに打ち付けられたなら、大抵は砕けるんじゃないかな。そんなことを思う。壊れたコレを見て一はどうなるんだろう? その閃きが伝わったみたいで一は顔色をサッと変えた。二葉はムチャでもなんでもやるんだってことを、昔からのいろいろで嫌というほど知っているはずだから。二葉はクソジジイの大事な盆栽を叩き落としたり、オヤジジイの顔に落書きしたり、一の部屋にあったアルバムを燃やした時だって、怒った顔をしながらみんなは許した。それを思えば一なんてなんということはない。
「答えないんなら、こっから捨ててやる」
「っ、ざけんな…! 俺はオヤジでも、兄貴でもねぇんだぞ…」
 そう言った時の一の真剣な表情ったら今までみたことないような顔で、思わず逃げたくなったけどここは車の中、密室だから逃げられるワケなんてない。一がそっと二葉の握り込んだ手を囲むように握る。いつもは二葉がどっかに飛んで行きそうだからと強く握る強さとは真逆で、それだけでどうしたらいいのか頭の中がモヤモヤぼんやりとした。目の前の一が知らないヤツになったみたいだったけど、やっぱり一は一のはずだと頭の中で何回か言い聞かせて、さらに身をよじった。それ以上、一は詰め寄っては来なかったけれどやさしく握った手はまるで宝物を守るみたいに二葉の手の上から離れようとはしない。投げさせまいとしているのは伝わってくる。はあ、と小さく息を吐いて俯いた。一は、とうとう観念したらしい。俯いた顔はよく見えないが赤面しているように見える。
「俺だって、キメる時ァキメてぇんだ。頼むから邪魔しねぇでくれ」
「何言ってっかわかんない」
「………プロポーズ、しよう、って思ってる」
 似たようなことは言うだろうなとは思っていたけれど、まさかここまでキッパリと言うなんて心の準備が全然できていない。プロポーズ、という聞き慣れないキーワードにドキドキした。でも誰に? もちろんそれは聞かなきゃならない。二葉が一のことについて知らないことはないくらいに、知ってなきゃならないから。そう感じた途端、言葉は雪崩のように一に向けて流れ出していた。
「どんなオンナ? 写メ見せな。一はカノジョいなかったハズじゃん。いつからんなこと考えてたの? どういうふうに思ってプロポーズしようって思ったのさ?」
 一に拒否されるだとかそんなことを考える余裕もなくて、ただただ攻撃的にマシンガントークを当てまくる。こういう時の一は本当に雑魚。どう答えるか考えているみたいだが、一気にぶつけられた言葉にはほとんど反応すらできていない。基本的に一は頭がバカなのだ。本人も認めているし。そんな一が何かくだらないことをぐちゃくちゃ考えているらしく、ようやく口を開いた。
「そりゃあ俺はここ6、7年オンナはいねぇ〜よ、悪ぃかよ。でも…、ケッコー前から考えてたんだってぇの」
 間違いない。一は嘘なんてついてない。かなり前にカノジョができて浮かれていた一の姿が脳裏に浮かぶ。あの時は一に対してかなりのワガママを言ったものだった。一を取られたような気がして、いてもたってもいられなくてどうしても意地悪ばっかりしたくなってしまったから。その衝動は止められなかった。お腹が減って減って減った時に、がっついて食べまくる時の感じによく似ているような。いつの間にか二葉の手から指輪は奪い取られていて、ハッとしたらもう遅かった。気づかないうちに手から力が抜けていたらしい。大事そうに一はそれをしまう。どんなオンナにそれをやるのか、聞きたい。でも、聞いたからってなんなんだろう、とも思う。
「いつからホの字なんだよっ、答えろよっ。一っ!」
 それだけ言うのがやっとで、一の名前を呼んだら鼻の奥がツンと痛んだ。どうして痛むのか分からないけど。一はとても困ったように、それでも二葉の問いの答えを探している。時に目を泳がせて、オドオドした視線を向けたりもしながら。答えを偽る気もないこのバカ正直なバカ野郎の一を嫌いになれない二葉も、もしかしたらバカ正直の血を受け継いでるのかもしれない。何を隠そう、二葉は一とオジと姪の関係なのだし。
「かなり、前だ…。そうだなぁ、一回りぐれぇ、前かなあ……」
 目を細めながら、過去を振り返りながら、二葉の知らない一の姿を思い起こしながら、一はバカ正直にバカな答えを口にした。一回り前なら今の二葉の歳、つまりは高校生くらいの時からということになるのだろう。気長な思いをずっと一は忠犬みたいに持ち続けていたということなんだろうか。それについてバカにしてやりたい、と思った。
 一回り。
 その単語を聞いた途端に二葉は全身が熱に包まれたみたいに思って、思わず体を縮めてその衝撃に備えた。でも行動は何の意味もなくて、鼻の奥がツンとした痛みと似たような感覚がぶわーっと広がって、よく分からない痛みと熱に脳内が侵されてそこでわけも分からずただボロボロと涙が零れた。そんなつもりなんてなかったのに。涙はこぼれ出したら本人にも止められないから困る。ただ収まるまでえぐえぐ言ってるしかないなんて情けないというかかっこ悪いというか。啜り泣きながら一の方を見る。なんだかみじめだと感じた。どうしてかは分からないけど。
「……、今まで好きとか嫌いとか、んなこと言ったこともねぇ相手だ。きっと俺はダメだ…。そん時ァ、俺はずっと結婚しねえよ」
 どうしてそんなことを言おうと思ったのか、それは口にした一本人しか分からない。ただ、そんなことを一は真顔で照れるでもなく、けど押し付けるでもなく、さっき二葉の手を握り込んでいた手の続きみたいにそっとやさしく涙を拭ってやりながら、それが終わってからはいつもみたいにガキ相手にやるように髪をくしゃりと撫でる。髪が乱れるから嫌だと言っても、まったく効き目のない乱雑な撫で方で一は。流れ落ちていく涙がそう簡単に止まるはずもなく、ただ一はいつもより困ったような視線を向けながら。
「俺がフラれたら、記念に指輪ブン投げていいからよ」
 フラれない自信があるような言い方にはまるで聞こえなくて、受ける印象は真逆。フラれることにビクついてるモテナイ男のそれ。かっこ悪い一。でも一が言うことにはちゃあんと二葉は聞いていた。フラれたら指輪を捨ててもいいと言った。いつだったか聞いた、ゴミを拾うのは犯罪じゃない。ゴミとして捨てたのだからなんとか権はない。拾うのは自由だという法律の説明。だから、二葉は一がブン投げた指輪を拾ってはめてもいいんだ、って思えたら、何だか安心した。記念とかそんなの関係ないけど、そう気づいたらフラれてしまえ、と思ってしまう。一が落ち込んだって構わない。どこかのオンナに、二葉に内緒でプロポーズしようとしていた一なんか、不幸になっちまえ。それが二葉の心の中にごうごうと荒れ狂っている。一の不幸の上に成り立つ二葉の愉快なほどの幸せ。のはずなのに、二葉の涙は一が拭っても枯れなかった。それは二葉が望んだものじゃないけれど、止まらないのだから仕方ない。二葉がいつも、もっと見たいと思っていた困ったような表情の、愉快なはずの一の様子があまり楽しくなかった。ただ、二葉の心の中だけで決めた。指輪は投げたフリして付けよう、と。何だかんだ言われるのが嫌だったし、何かを言える状態じゃなかったから、頷きながら泣きじゃくった。えぐえぐいうのはかっこ悪いけど、一が髪を撫でてくれたからよしとする。二葉が泣き終わるまで、この車が動かないって分かったから、一に縋った。言葉にしなくても、濁流みたいに頭の中に言葉が流れてくる。なんで二葉は姪なの。なんで二葉じゃないの。二葉じゃだめなの。一緒にいて楽しくないの。二葉をどう思ってるの。ぐるぐるぐるぐる。ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ。「一のばか」って言ったけど、一は何も言い返さなかったし、撫でる手もそのままで、聞こえてなかったのかと思った二葉は何回も言った。何度言っても一は否定も肯定もしない。それ以上近づくことも、遠のくこともない。
「一なんか、かっこ悪ィんだからフラれちまえ。ばーか」
 本当は誰よりもカッコ良く見える一にそう言った。負け犬の遠吠えなんかじゃない。友達たちはみんな夏目がカッコいいと言うから、ずっとずっと二葉だけの一だと思っていたのに。フラれて泣いて戻ってくればいいのに。二葉が泣いてるのに、抱き締めてもくれない気の利かない一。フラれて戻ってきたらもう結婚なんて考えさせてやらない。結婚の話をしたら指詰めろって言ってやることに決めた。誰も誰も、二葉の言うことに逆らえるわけないんだから。


そうして僕ら大人になる




12.09.15

やっと終わった(笑)
二葉→一 の求婚にまつわるエトセトラ仮

べるぜ読んでる皆さんは、神崎黒髪説は否定されそうだし、むしろ作者も否定するとは思うんだけど、神崎は絶対ブリーチで色抜いてますって信じて疑わない。
姫川と古市なんかは銀髪なのに地毛っぽいなぁと思うのですが…。その差はなんだ?
まぁ30ちょいくらいならキンパもいるけども(笑)ヤクザでキンパじゃただのチンピラのアホんだらとしか思えないし、ハクがないじゃんと。


ちなみに、これ珍しいパターンで、夏目も神崎組の一員な設定です。
相変わらず神崎組は二葉ちゃんに振り回されっぱ。バカ丸出し。こんな情けないヤクザ、結構いるみたいですよ〜(笑)
母の知り合いのヤクザが愛猫ベタ惚れだったりとか、とにかくリアルヤクザにも可愛らしいエピソードはあるようでホクホク。

ちなみに、この後神崎くんはフラれますよ、多分。プロポーズした相手がレッドテイルメンバーなら尚ヨシ!
どう足掻いても二葉は一と結婚できないし、おじと姪でしかないんですけどね。
姪っ子の想いなんて、誰が見ても明らかなのに神崎くんは絶対気づかない。これ鉄板!

Title:etoile

2012/09/15 08:52:11