…もしも神崎君が女だったら…
元から♀な神崎と犬の城山
主に神崎組です
男鹿とかベル坊が出てしまうと話がおかしくなりそうなので完璧にパロ。時系列とかムチャクチャで思いつくまま気の向くまま。

苦手なひとはまぁ、タイトルで見ないよね…
(かくいうワシもにがて。なのだが、書いてみた)




夏目と城山の会話


 夏目が神崎に近づいたのは、神崎一がここらで有名なヤクザの家の娘だったから、というだけではなかった。石矢魔の勢力図を塗りかえるべく参戦したのが女だったということに興味を持ったのだった。
「そしたらヤクザ稼業継ぐみたいな話なんだもん」
 家の話になると神崎は途端に嫌な顔をするものだから、どうしてもそれができなくなってしまうのだった。だが神崎がいない今であれば城山とそのことについて話ができる。単純にそれだけのことだったのだが。
「で、何で城ちゃんは神崎君の下に着いたの?」
「俺は、神崎さんに救われた。神崎さんの男気に」
「言っとくけど神崎君は女だよ?」
 とりあえず城山に緩いツッコみを入れてから夏目は笑う。結局、神崎の下はひどく居心地がよかったし、いやすい空間であったし、楽しいと思えた。それだけのことなのだと。

2011.09.20 Tue 14:49



思い馳せる未来へ


「ヤクザだからってびびってんのは向こうのクソガキ共なんだよ」
 面白くもなさそうに神崎が言った。クソガキと言ったが確か相手は神崎よりも上級生たちだったはずだ。だがそんなどうでもいいことについてどうこう口を挟むほど城山という男は愚かではなかった。
 クソガキと称された男らは地面にはいつくばって神崎の方を睨みつけている。まだ飛びかかってくる元気はありそうだと城山は感じた。音をたてないようにしながら身構えた。
「俺ァこんなチンケな石矢魔ぐれぇ制覇すっけど、別にヤクザの後継ぎになるとか、んなこと関係ねえ。野郎だアマだとか文句言わせねぇぐらい最強のアタマになってやる」
 言い終わる前に男が一人急に起き上がって来るや、読み通りとしっかり城山からの踏みつけキックを食らい再度倒れて行った。その様子を興味無さそうに見てはフンと鼻を鳴らす神崎。
「城山、てめぇたまにゃあ使えるじゃねえか。じゃ、ヨーグルッチ買ってこい」
 投げ渡された小銭を受け取って、まだ高校一年だったから教室と同じ棟にあるヨーグルッチの自販機へ向けて城山が教室から出て行った。最強のアタマが一年で、しかも女子だなんてやはりどう考えても狙われる要因に他ならないと静かに城山は思った。自愛してほしいと思うが、それはきっと神崎には余計なひと言であるから、城山が身を呈して守る必要があるのだ。彼女が望む未来へ導くために。

2011.09.21 Wed 13:23



ひめかわ?なにそれ。


「ひめかわ?なにそれ」
 そう告げたのが最初だった。知らないはずなどない。石矢魔に腰を落ち着けている以上、姫川財閥の恩恵を受けていないことなどないはずだった。特に警察ら関係からは睨みつけられている暴力団やヤクザの家柄である以上は。それでもまったく知りはしないと冷たく鼻を鳴らして言い切る。その態度を見て城山は確かに知らないのかもしれないと思う。彼女は、無知であるからこそ無垢でいられるのかもしれない。それについては特に言及することはない。そもそもそんな権限が城山にはないから。
「でも」
夏目は口を挟む。いつもはおとなしいはずの夏目だったが、何を思ったのかこんな時に限って口を挟みだすのだ。城山も神崎もほぼ同時に夏目の方へ眼をやる。彼が何を言うのか、それに単純な興味をもって。
「その姫川ってヤツ、どうやら石矢魔制覇、もくろんでるらしいよ?」
「………ほぉ、生意気なヤロウだぜ。いっちょイワしてやっか」
 ベキボキと鈍い音を立てて手を鳴らす神崎にはひどく冷たい笑みが張り付いていた。勿論額には薄く青筋が浮かんでいたので、彼女にはまったく余裕などないことは見て取れた。神崎の笑みは仲間へのSOSを求めているということを、態度どおりに読まない夏目と、天邪鬼を飲み込む城山と。ヨーグルッチ飲んでから姫川のシケメン見に行ってやろうぜ、と言う神崎は実に不快そうだった。

2011.09.25 Sun 22:43



男気溢れるおんな


別に誰かを庇おうだなんて思ったわけじゃないと、城山自身も分かっていた。そもそもその時に彼女は城山のことを一瞥もしなかったのだからその程度の興味も糞も無かったのだろう。それでも城山は感謝し、感動を抑えきれず感激して志願した。彼女の下に居たいと願ってしまった。ただそれどけのことだったのだ。彼女は城山の顔を見て、確かにタッパのある城山を見たことないとは言わなかったけれど、だが興味の対象だともまったく口にはしなかった。そもそもが知らないデカイ野郎というだけの存在だ。神崎一にとっては城山はどうでもよくて、関わり合うこともあるはずのない一般人に過ぎなかったのだ。ただ、城山が寄って来たというだけのことだ。
「神崎さん。貴女はすごい方です」
「あぁん?」
「俺は昨日、貴女に救われました」
「ハァ?脳わいてね?」
「その偉業に気付かぬ貴女は素晴らしい」
神崎の覚えている始めての出会い。
城山の覚えている二度目の出会い。

2011.09.25 Sun 23:58



傷痕


 神崎の頬の傷については誰もが知りたいと思っているのに、誰もが聞くことができないでいる神秘のような光をたたえている。ほんとうは影のはずであるのに。
 そしてその傷に触れることは仲間である夏目や城山にも許されてはいない。顔に手をやろうとした時に手を振り払われたのはその証拠なんだろう、きっと。だが、その時は別にそこに触れようとしたわけではなかったのだが。
 だから、ばつの悪そうな神崎はすぐに俯いて大好きな乳酸菌飲料に向かい直したのだ。同じことを夏目も感じたことがあるのだと城山に話してくれたことがあった。
 きっと触れてはならないのだろう。それは痛みを伴う記憶がそこにはあるから。

2011.09.28 Wed 00:11



傷痕 2


きっとあの人は憶えていないだろうと思う。分かっている。そして仲間はそんな過去を知らない。だから唐突に触れてきた、傷でもないのに抉られたみたいに痛い。
城山の想いなど知る由も無い仲間、夏目は意外そうに目を丸くした。そんなに驚くことなんて、俺は言ってないよ? だから小さく…すまない、とだけ返した。
「何かあったの?中学時代」
城山はそれには首を振る。ただ、あの人はきっと憶えていないだろうと思うばかりだ。それを夏目に言っても仕方のないことだなら言葉にしないだけだ。憶えていないからと言って、だからなんだという話なのだ。
「答えたくないんならいいんだけど、でも、」
どうして答えたくないのか。なんて馬鹿げた質問を投げかける。ただ夏目は城山にむけてどこ中だったんだっけー?と軽く聞いただけだったのだ。別の質問なら答えてくれるかな?そう前置きをして夏目は再び城山を見た。城山は返事をしていないが、嫌なら拒絶すれば良いのだ。無理強いはしない。
「城ちゃんは中学のときから三つ編みなの?」
「ああ」

2011.10.11 Tue 09:52



対 姫川01


危険分子。
それが城山の感じた印象だった。神崎を見やる彼の様子が、他のものと違っていたから。ああこいつは、と思う。神崎を異性として、しっかり認めている。神崎はそう思っていないだろうこともきっと彼は分かっているだろう。だからこそ危険分子なのだ。そして、そういったものにはなるべく近寄らないように言いくるめてしまいたかった。だが、神崎は女扱いされることにきっと嫌悪を示すだろうから。
「神崎さん、姫川は……危険です!様子を見た方が、いいと思います」
彼女の意思も尊重したいが、城山自身の意思も伝えたい。難しい選択はただの当たり前の言葉にしかなり得なかった。陳腐な言葉には神崎は態とらしく耳をほじってみせた。聞こえてる、けど聞いてやるつもりなんてこれっぽっちもねえ。そう言葉にせずとも彼女は告げているのだ。そうして、彼女は武器も持たずに姫川のいる教室へと向かった。無言で向かった先だけれど、どこに行くつもりなのかは城山も分かっていたから黙ってついて行った。もはや学校じゅう、神崎と姫川の対決は近いだろうなどと噂されていたから、神崎がそこに行っても意外そうな色は浮かばなかった。

2011.10.13 Thu 23:51



対姫川02


行くな、と自分の身を案じる下僕もといそうなりたいんじゃねぇの?的な城山がそんなことを言うから、逆にどんなヤツであるのか気になるに決まっている。その辺りを理解していないこの男は本当に真っ直ぐでからかい甲斐があると思うのだ。慌てて着いてきた城山を咎めるでもない。勝手にすればいい。勝負事には手を出させるつもりはないが。
音高く教室のドアが開かれる。不良共に囲まれる男の姿はいつの時代の代物ですかと問いかけたくなる。今時リーゼントってダサいだろうがよ、と。そしてその銀髪のリーゼント男の存在感からして、彼こそが噂の『姫川』なる男であることは周りのものが口にするでもなく理解できた。
「よぉ、てめえが姫川か。まッさかンな時代遅れの頭の野郎たァ思わなかったぜ」
しっかり聞こえたろう。姫川の顔色が瞬時にして不快の色に染まる。ザワリと辺りの空気が凍りつくように冷え込む。どうやらああいう頭の悪い連中というのは髪型にこだわるらしい。
ちなみに神崎はそういったものにはこだわらない。むしろ、女に生まれたことで見た目について周りから言われ続けてきた。それはひどく煙たい。自分が望んだわけでもないのに、女に生まれてしまったことでケンカすら止められるようなヤワな存在であると告げられているようで。だから女を感じさせないように髪を短く刈り込んだ。ある意味ではこだわっているのかもしれないが、半端は嫌だと思ったのだ。それでも時代が髪が長い男も別におかしくなどないとなって、結局は短くしたり、時折伸びたり、または伸ばしてみたりと気分によって髪型を変えられるようになったのは高校に入ってからというものだ。ある意味ヤンキー学校というのは居心地がいい。なぜなら単純だからだ。支配するものとされるもの、それに分類できれば文句はないからだ。要は頭が悪いからなんだろう。

2011.10.25 Tue 23:50



対 姫川03


ザワついた雰囲気をよそに姫川はツカツカと神崎に歩み寄ってきた。掛けてきた声は神崎が思っていたよりも高く細いものだった。色の濃いグラサン、もしかしたら色付きメガネかもしれないそれから覗く瞳が光ったような気がした。気のせいであればいいと思ったのは一瞬のこと。鼓膜に姫川の声が届く。
「ヘェ…、おたくが神崎一?思ってたよりカワイイんだ、近くで見ると」
ナメられてる。
神崎はそう思ったから瞬時にかかって来いよ、と言わんばかりに両手を組んでポキポキと鳴らす。城山が息を呑んだらしい音が耳に届く。ウザいくらいに神崎を思い心配し続ける男だが、邪魔だと投げ捨てるにはあまりに不憫なほどに神崎への忠誠を誓っているものだからそのまま放っておくこととする。完全な臨戦体制を取りながら姫川と向き合う。
「こっちァな、石矢魔の一番、キメるために来たんだよ…!キモ男ォ!」

2011.10.26 Wed 00:03



三月三日物語


「てめえ、ざけんな。そこの窓から飛び降りろ」
そう冷たく言い放たれたのは、ひなあられを配ることが当たり前のその日だった。城山は当たり前のように妹たちに買っていたついでに、神崎にもそれを購入していた。もちろん、妹たちに買ったものとは質の違うよいものを購入していることは言うまでもない。あまりにショボいものを渡していられるわけもない。
だが放課後、急に告げられた言葉に頭の中が真っ白になる。どうすればよいのだろうか。あなたのためならば命を捨てる覚悟だけれど、あなたのために死ぬわけでもない今のこの状況に、どう事を見出すべきか見当もつかない。ただここにあるのは、城山が死ねと言われたのだという冷たいほどの事実だけ。
「神崎さん、俺はあなたを救うためになら窓も飛び降ります。でも………あなたを救えないのなら、理由はありません」
神崎の拳が城山の頬を強く打ったけれど、そんなことはどうでもよかった。神崎が挑発気味に吐き出すツバがかかったが、それを勲章と思わなければやってなどいけないだろう。城山はだらだらと歩き去る神崎の後を慌てて追うのだった。

2012.06.01 Fri 00:30

2012/06/01 00:30:20