A-Side


 殺したいわけじゃない。けれど殺したい。殺したいというよりは支配。支配してアンタの身体なのにアンタのものじゃないかのような、そんな状態にしてやりたいと思う。それは背中を突き合わせるようになっても決して変わりはしない。対立してきた時と何ら変わりないこの思いは、能力でいう“憑依”に近いようですごく遠い。



 悪魔と対立した人間たちの仲間、否むしろそのグループの核として戦ってきた邦枝葵は確かに疲れていた。だが、途中で勝手に助太刀してきた悪魔であるはずのアギエルの力により助けられてもいた。葵自身もまた悪魔の力をコマちゃんから借りていたが、しかし対峙してみると分かる。その力の差は借り物ではまったく歯が立たないということに。もちろん低級悪魔であるコマちゃんがいてくれたお陰と、葵自身が祖父から鍛えられていたということを踏まえ、それでも悪魔と互角以上にやり合ってきたのであったが、日に日に悪魔との闘いは不利なような気がしてならない。そしてその隣で、時に葵を庇うかのように男鹿は、アギエルは簡単そうに葵を軽々と悪魔の攻撃から守ってくれる。二人に対してとても感謝を思うと同時に、従来のまじめな性格が災いして悪いなぁと思う気持ちが増してゆく日々。ヒルダは助けたけれど、落ち着く当たり前の日はまだ送れそうにない。

 ある時、ふぅと思わず溜息を吐きだす葵のことを横目に見た男鹿が、何を思ったか意外なことを口にした。
「気にすんな。俺が守る」
 唐突に言われた言葉に葵は無言のまま、だがそれが言葉通りなら、と顔を真っ赤に染めて硬直してしまう。守りたいから悪魔の能力にも手を染めて一緒にいたというのに。否、一緒にいたいから能力を手に入れたのだけれど。そんなことなど男鹿はまったく知ろうともしていないように淡々とそれだけを口にした。だが、その言葉は葵にはあまりに夢であろうかと思う程に虚ろに耳に届いた。葵のような強い女を守るなどという男がこの世界にいるだろうか。だが、悪魔の力を高めるために共に向かった首切島で対峙した時のことを思えば男鹿の力は確かなもので、それ以降もずっと続いている悪魔との意味があるのか?それともないのか?答えはないけれど続いているこの無意味にも思える闘いの間じゅうもずっと男鹿は強くなっている。それは隣で見続けてきた葵でも分かるほど確かに。だからといって葵もただ一緒にいたわけではないのだ。「余計なお世話よ」いつものような軽いツッコミ。その一言が口にできないくらい男鹿のどこか遠くを見る瞳の色が、晴れた空の色に染まっていることに気付いてしまったから、思ったことをなんとなく口にできないでしまった。
「ナニソレ、愛の告白ゥ?」
 軽い言葉の裏に嫌悪感が漂っている。思わず葵が振り向くとそこにはアギエルが苦々しい表情で立っていた。男鹿はゆっくりとアギエルに視線を向けた。だがその瞳は何の表情も持っていない。ただ単純に目の前にいる人物が誰であるかを見極めただけということ。一目見て誰だか分からないということもあるまい。だが男鹿は特別な反応も、そしてアギエルの発した揶揄するような言葉に対しても何の感情も抱いていないように、ごく自然な動作で視線を外した。まるでどうでもいいものを見たかのように。
 その次の瞬間、アギエルから激しい殺気と同時に葵は乱暴に肩を掴まれた。そして肩を組むような格好で男鹿に向き合う。葵は男鹿とアギエルを交互に、視線だけで首を動かすことなくきょろきょろと見遣るがこの状況たるや何なのかまったく理解できない。そして同じ思いであることが男鹿のぽかんとしたまぬけな表情からも読み取ることができる。この空間でただアギエルだけが有り余る殺気を発散していた。
「アタシが殺すよ。この女」
 音もなく静かに首筋に宛がわれた剣の冷たさに、ひっ、と情けないながらも葵の喉が鳴る。今は共同戦線を張っていたはずだというのに急にてのひらを返すアギエルの心など分かるはずもない。ただここで動けず悶々とするしかない自分がひどく歯がゆい。
「くだんねぇ」
 怒りの感情すらこもっていない冷たい響きの男鹿の声。男鹿の表情は首を動かす前から見ていた葵だったからよく見える。だが声の通り感情が通ったものではない。ただ男鹿はすぐに拳を握って臨戦態勢を取った。背中のべる坊が「だ、」と短く言う。途端、辺りからがしゃん、というガラスの音とともに見慣れた悪魔の使いが数人現れ、再び三人はそれぞれが戦いの渦へと巻き込まれていった。さっきあった出来事はまるで茶番だったかのように。



*****


 それから数日は悪魔も現れることなく、嵐の前の静けさというに相応しいようなまるで当たり前の日々だった。それを心配して葵は早乙女に聞いてみた所、「まだ悪魔の気配は、そこのエロい姉ちゃんじゃなくって……男鹿んとこの侍女悪魔のデカパイ姉ちゃんでもなくってだな〜…」とセクハラまがいの言葉を吐きながら最終的には「消えてねぇ」と告げた。つまりはまだ戦いは続くということだ。葵は不安な思いを消すことができずにただ溜息だけをはぁ、と残してその場から去った。
「あとどれくらいいるのか、知りたい?」
 何食わぬ顔でアギエルがそんなこをと聞く。知りたいに決まっている。この終わりなき戦い、しんどくないはずがない。だがアギエルの言葉はまだ100%信じきるには弱くて、半ば投げやりに頷いて見せる。いつも冗談のような本気のような、何とも言えない熱を保ったアギエルの言葉はひどく、嘘のようで本当のようだった。まるで嘘ではないが完璧に本当ではないからどう信じていいのか分からない。これが悪魔と人間との温度差というものなのだろうかと思ってしまうほどに不確かな何かで。
「にゃはっ♪ わかんない」
 そしてアギエルは空気を蹴破るようにあっけらかんと笑った。


*****


 それからというもの。時折アギエルは悪魔らしい目を男鹿に何度も向いた。その度に葵は止めに入ったものだが、こんな生活が長く続くことはないということを男鹿の言葉が物語ってくれた。それは、アギエルの姿の見えない時にぼそりと呟かれた。
「邦枝。アイツ、たまにスゲー鋭い目ぇしやがる。気ぃつけろよ」
 それって。葵の頬は一気に赤く染まる。それって、心配されてるの?!何度も何度も葵自身の考えが木霊のように反芻して心配という言葉が頭から離れない。だが、それを男鹿に問うことなど到底できはしない。それに、聞いたところでどうにかなるというものでもない。
 そんな他愛もないのにどことなくほっこりした時間はすぐに過ぎてゆく。近頃では聞き慣れた能天気に明るい声が葵を迎えた。
「ヤッホー♪」
 上から顔が垂れてくる。まったく常識を無視した登場の仕方にも、何度か目にしてる間に慣れっこになってしまった。それでも肌の露出の多いその服装に溜息を吐きながら口にする。
「アギエル。あんた寒くないわけぇ?風邪ひくわよ」
「アタシは人間みたいにヤワじゃなぁ〜いの。心配してくれちゃってたりぃ〜?」
 近い過去に葵が男鹿に聞きたいと思った、そんな言葉を何気なく口にする彼女の怖いものなしな態度がある意味羨ましいとさえ思う。葵は自分でわかっている。考え過ぎてしまう、構えてしまう、思ってしまう、失敗を恐れてしまう。だからきっと思ったことを言葉にできないのだろう。理由なんていとも簡単に分かるというのに、どうしてそれをなんとかできないのか。それはきっとムダな恐れが先行しているからに他ならない。
 おどけるアギエルの言葉に答えない葵を見て、ふと思うことがある。ならば、意外にも風邪を引くことがあったなら?そんなことを思ってしまうのは意地悪な気持ちから、それだけじゃない。そんなことをひっそりとアギエルは考え出したのだった。


「まとめてやってくるってさ」
 冷めた声でいつものようにアギエルは告げた。簡単に告げるにはあまりに残酷で生々しい話。悪魔の大群が人間界に降りて来る、そのことでさすがの男鹿ですら顔色を変えた。男鹿も葵も悪魔の力を持っていたけれど、本物の悪魔に匹敵するかどうかは分からない。まとまった悪魔ともなればさらに分からない。予測不能の出来事には身構えるしかできない二人の人間は、それを近く見ていたであろう彼女に目を向けざるを得ない。そして、教えを乞うしかない。人間とはひどくちっぽけで、微力な生き物である。男鹿は問う。
「勝てそうか?」
「…キツいかもねぇ」
 口許を歪めながらいうアギエルの姿に、敵とか味方とかそんな目で見ていたこと自体があまりに愚かに思えてしまう。もし負けても笑いながら悪魔の方に帰ることができる。今こうやって葵たちに助太刀するのもあくまで一時の気まぐれと言ってしまえばそれまで、だったらどうやって彼女を信じれば良いというのか。葵は途方に暮れた気持ちでアギエルの冷たい視線を見返した。そんな思いの中、男鹿は単純に腕と首をこきこきと鳴らしながら、さも余裕そうに「じゃ、体あっためとくか」とだけ言った。こんな状況でも変わらない男鹿という男。
「ちょっと」
と唐突にアギエルは葵の肩を乱暴に掴んだ。いつの間にかすぐ隣にいた。どことなく声は怒りを含んでいる。理由は分からないが男鹿の態度が面白くなかったのかもしれない、と葵は思った。目が合ったアギエルに、
「アンタは剣を使うからアタシ、教えれること、あるかも」
 そんなことを言われてしまえば無視なんてできるわけがない。悪魔から、魔の手から自分たち人間の生活を守る手立てになるのだろう、きっと。悪魔が悪魔たる理由など考えもしない。男鹿が気をつけろと言った言葉も、瞬時にきれいさっぱり吹き飛ぶ単純さったらない。
「教えて頂戴」
 それは誰のため?
 そんな顔をしてアギエルはまっすぐに葵を睨みつけてくる。
 人間たち、私たちの未来のため。
 そう答えようと思う。だが、アギエルの目があまりにまっすぐで、葵の心の中もすべて見透かしてしまいそうに思えたから目を逸らした。よこしまな思いだってもちろん、この悪魔の力を使うことには含まれているのだから。本当は人間一人なんて、自分勝手な生き物なのだから。堪らなくなって、男鹿から遠ざかりたくなって、葵はアギエルの手をガッと掴み部屋から強引に出る。
「やられるわけにいかないの。教えてくれる? 剣の、使い方」
「いいよっ☆」
 目を見開いて、ああこれが悪魔なんだなという冷たい笑みで笑う。楽しいのか憎いのか分からない背筋も凍ってしまいそうな笑み。そして、静かなのに大振りな剣を抜く大胆な動き。そして始まった教えという名の手合わせ。格闘技でいえばスパーリングのようなもの。

 剣を合わせたのは祖父以外はなかったし、何より真剣でのやりとりなどなかったから本当に刃は火花を散らすなどということは知らなかった。時代劇の中だけの大袈裟な演出が今この場で、冷たく激しい金属と金属がぶつかり合うような音と音の間に、パリ、と小さく摩擦の間から散る熱い火花。
 大振りなアギエルの剣はとても重いけれど、それだけに所々にほころびとも呼べるスキがあって、それを狙うべく葵は防戦と牽制に徹する。キン、キン、と刃同士が当たる度に腕が重くなっていく。悪魔といえど疲れはないのだろうか? 否、ないはずはない。だがアギエルは楽しそうに腕を振りかぶる。そこに大振りならではのスキが生まれる。そして、
「っ……?!」
 黒いもやのような手の形になった悪魔の力が葵の手を払う。強く握りしめていたはずの刀が宙に舞って、やがて教室の床の割れ目にさっくりと突き刺さった。だがアギエルの悪魔の力は葵を離そうとしない。ツカツカとにやついた彼女が葵の目の前に立つ。剣の切っ先を向けて。
「分かってんの? アンタ、これで一回死んだんだけどー。弱っ。ねぇ、アンタの弱点、ソイツはねぇ……バカ正直な攻撃しかしないってトコだかんね」
 剣をしまいながら魔力を緩め、葵の身体を自由にしてくれる。アギエルの発した言葉を胸の中で何度か反芻し、そして気付く。弱点をわざわざ体を張ってまで教えてくれる彼女の優しさとも言うべきか、だが表情はいつもの飄々としたもので思いやりなど感じられないものだったけれど、きっと悪魔だけにそんなものを表すのは苦手なのだろう。同時に思う。彼女のことは仲間として信じねばならない。先に男鹿が言っていた心配は無用なのだと。
「…っ、ありがと」
 負けられない。葵は得物をしまいながら強くかたくそう思った。アギエルはいつもの調子でヘン、と鼻を鳴らすだけだったが礼を言われて喜んでいることは明らかだった。



 時はやってきた。
 アギエルの言うとおり、悪魔の軍勢が押し寄せてきた。それは軍勢と呼ぶにはあまりに寂しい人数だったけれど、一人一人の実力が大したもの。つまりは少数精鋭の部隊がとうとうやってきたのである。だが手の内を知っているアギエルは的確に、男鹿と葵に向かってアイツの動きはこう、とかソッチはここに弱い、とかいうアドバイスをしてくれるから数十人の悪魔たちは次第に弱っていった。何より男鹿は思った以上に悪魔の力を使いこなしているため、アギエルのアドバイスの前に倒してしまったことも数人はあっただろう。そしてアギエル自身もまたかつての仲間たちを負かしてゆく。一人でやるには厳しい相手には葵に声をかけて挟みうちにする。それが汚いだなんて思うヒマもなければ、それ以上に人数のいる悪魔の方が汚いのだから思うはずもない。
 最期の悪魔が膝をつく。男鹿の目の前で悪魔すら土下座する。何の感情も映さない男鹿は憐れな悪魔を見下ろして、そして非情にも頭を踏みつけた。同時に「消えやがれ」とも。彼が悪魔だの鬼だのと言われたのは伊達ではないことを思い知らされる。逃げる悪魔の姿を見送りながら男鹿はヒタリ、と冷たい感触を首筋に感じる。それは後方からの思いもかけない攻め。
「…何のつもりだよ」
 男鹿の低く押し殺したような声が辺りに響く。その刃の切っ先は見間違うことなどない。葵は息を?む。彼女も突き付けられたことがある刃のそれであった。仲間ではなかったのか。男鹿の遥か後方に立つ彼女の姿を睨みつけて大声を張り上げる。
「アギエルっ…!!」
「言ったじゃない」
 アギエルの表情はとても不機嫌そうだ。何が彼女を駆り立てるのか、それは葵には分からない。そして男鹿は分かろうともしない。声色は表情と反比例して実に冷静そうに淡々としたものだった所も、不気味としか言いようがない。
「バカ正直は、死ぬんだよ」
 音もなく素早い動きでアギエルは刃を男鹿へと刺し込んだ。葵は言葉にならない言葉を発した。それは無我夢中だった。どうやっても今の時点から動き出すなんてあまりに遅すぎる。悪魔を信じた結果がこうだなんて自分はなんてバカなんだろうと攻めたけれど、そんなことをしても何の意味もないということは分かっている。だが呼ばずにはいられない。男鹿辰巳、その名を。


 グブブ、とにぶい音と共にアギエルの剣は突如、空に生まれた闇に飲み込まれていった。それを目の当たりにしてもなお今この瞬間が現実であるかということを信じることなどできない。それは葵もアギエルも同じ気持ちだ。慌ててアギエルは男鹿から剣を引き抜くように身を離すと、剣の途中からまるで獣にもぎ取られたかのような有様にぐにゃりと曲がり溶けているその刃を見て、泣きそうな、困った、どうすればよいか分からない、そんなような表情をしてから、それでもすぐに振り絞った気持ちで剣を握り直し今度はまっすぐに男鹿の腹に目がけて刃を突き立ててゆく。
 だが同じ運命だ。空に生まれる闇は男鹿への攻撃を阻んで、瞬く間に剣はただの柄だけのものになった。男鹿は何食わぬ顔でアギエルの顔をひっぱたくと、パアン、と乾いた音がそこらに響き渡った。ベヘモット34師団のアギエルでさえも男鹿の王に近い力には足元にも及びはしないのだ。アギエルはがくりとその場に膝を折って悔しそうに泣いた。涙をポロポロと溢して子どものように、わんわん泣いた。
「てめー、王に敵うとか思ってんのか。ナメんじゃねぇ」
 男鹿の声はひどく冷たい。
「嫌だ、嫌だよ。アタシは欲しい。葵が欲しいよ、葵が」
 泣きながら葵に縋るようにアギエルが抱きつく。彼女はいったい何を口にしているというのか。その思いは葵も男鹿も同じだったらしく、目を丸くしている者同士はたと目が合った。「はあ?」とどちらともなく疑問符を音にした。アギエルは鼻水を垂らしてひどく滑稽な負け犬の姿を晒して泣いている。
「ソイツに取られるくらいなら殺してやろうって、思ったんだ。アタシの手に入んないんなら何としてでも手に入れたかった。アタシのものになってほしいんだよ……葵…」
 死に近いまっすぐな言葉は、時に誰しもの心をも打つ威力がある。こんな時どう答えるべきか先人の教えを乞いたかったけれど、瞬時に思い出せるほど葵も器用な性格をしていない。ただただおろおろしながら男鹿とアギエルを交互に見た。男鹿は困った顔で葵とアギエルの姿を見下ろしているし、アギエルはこれ以上ないくらいにひっついて離れようとはしない。不意に涙で濡れたアギエルのくしゃくしゃに歪んだ顔が上げられる。そして目が合う。葵は何か言葉を発そうとしたけれど、それは言葉になる前にアギエルの唇によって温かく塞がれてしまった。
 アギエルとのキスはあまりに唐突で、そしてあまりにバカ正直な思いを伝えてきた。
 アギエルは先に言ったはずだ。葵のそのまっすぐさが命取りになるのだということを。そんなこを言われる筋合いなんてない、そう思う程にちくちくと葵の胸に突き刺さる。アギエルが葵にどれほど激しく焦がれ、いとおしいと思うであろうその気持ちが。たった一つのキスで強く伝うものなのだということを初めて知った。
「私は………嫌よ。ものになれ、なんて」
「じゃあ、アタシは葵を……………」
 殺す。
 自分のものにならないものは消す。自分だけのものにしたいから。支配して、溺れさせて、自分以外を見ないものにしたい。自分だけのものというのはそういうことだ。
「同等じゃないと、嫌」
 さらりと優しく葵がアギエルの頭を撫でた。その言葉はまるで、恋人になることへの布石のようだった。男鹿はぽかんとしたままだったし、アギエルもぽかんとした顔をしていた。けれど彼女たちの未来が明るいことを示すかのように、窓の外は晴れて煌々と明かりを受け入れていた。まるで、彼女たちのキスを歓迎するかのように。
「下に、見ないで」
 葵は思う。同情かもしれない。けれど、そこから始まる物語もあるのかもしれない、と。そう思いながらアギエルを抱きしめ返して背中を撫ぜた。



支配と束縛を渇望
それを拒んだとき
まさかのカップル成立



アギエルと!
これはアギエルが一時的に葵に加勢した15巻のラストを見てから思い浮かんだネタですね(本誌はたまにしか立ち読みしない)。
アギエルは葵を狙いまくるのかと思っていたので「へえ」と思ったんですが、皆さんは読めていたんでしょうか?まぁ好き勝手やるキャラだから読めるっちゃ〜読めるんだけどね。
でまぁ最初っからアギエルは葵を気にしてるっていうのもあったんで、悪魔的に歪んだ愛情というか。そういうものがあればいいかなぁと。最近はべるぜサイト巡りなどはしていないのでよく分かりませんが、アギエルと葵っていう組み合わせはそんなにないんじゃないかと思ったもので、つい。

しかし一筋縄にはいかないってのがアギエルの持ち味というか。好き=愛でるっていうのは悪魔的じゃないし。要はサドな方向にいくのが妥当だろうと。
でももちろん単にR指定に向かうのは芸がないから背中を合わせながらも、支配し尽くしたいっていう思いを託すことにしました。

実を言うともう少しサドっ気の強い話でした。
男鹿を狙った後、今度は葵自身を剣で刺し殺そうとする、そんな話だったんです。でもアギエル編だけやたら長くなるのもどうかと思ってやめました。そこそこの形でまとまったし。
すごく歪んでるんですね。鳴かぬなら殺してしまえホトトギス、なんですアギエルは簡単に言うと。

2012/03/30 22:27:56