とある神の使徒の話。
 妻と娘が死んだのは、何より自分自身のせいだと分かったなら。男は泣いた。悔やんだ。苦しんだ。もがいた。喚いた。自分も命を断とうとした。だが、どれもかなわない。それは強すぎたがための、あまりに高過ぎる代償。神と肩を並べても何ら遜色ないその強さは徐々に彼の精神をも蝕んでいった。彼は妻子への弔いと、そして己の悪夢を消し去るため神の使途となってしばらく経つ。彼は神に問う。
「いつになったら俺は、この悪い夢を見なくなるんだ?!」
 神は答えた。許されない罪などないと。そして神が守るイトゥルップ島の地を、別の神より侵略されつつあるかの地を何とか守るように言い渡したのだった。



 イトゥルップ島の船に乗る前、彼は大きな魔物を退治したばかりであった。彼は島に渡るために邪魔なものを払っただけのこと。人間を守るつもりはない。守りたい人間は自分の手で葬ってしまったから。そして悪夢が蘇る。頭を抱えて返り血に塗れた身体を清めに湖に身を浸す。
(忘れてぇのに、どうして忘れるのが怖い?)
 人間だった時のしあわせな暮らしを思う。ほとんど思い出す回数は減っている気がするが、それでも忘れることはできなかった。妻の名を小さく呼んだ。
「………静…」
 強過ぎる彼のよりどころになった女の名前。恐れを抱かなかった彼女。だがもういない。死んでしまった。殺してしまった。頭までザブンと水に入り、頭から身体まですべてを冷やすことにした。それから船に乗って休むことにする。


 その数十年前、彼は家族の死を悔やみひたすら落ち込んだ時期があった。もとより家族を助けるために、神に匹敵し得る力を得たのにもかかわらず、結果は家族を殺してしまったのだから。妻が彼の呼称を呼ぶ。それは眩しいほどの笑顔で。
「虎!」
 まだ言葉も発せない小さな娘を胸にだきながら、静は朗らかに笑うのだ。あまりの強さに、鬼神のごとき強さの男・東条英虎に向けて。
 そして気づけば赤子の首はなく、女の腹には不自然なほどに大きな拳の穴が空いていた。血に塗れて原型はほとんどとどめていない。手に何かあるな、と思ったらそれは我が娘の生首だった。自分でやったのだと気づいた。人間の頃からそうだった、戦いとなると我を忘れてはしゃぐところがあり、神から力を受けてからというもの、さらにその傾向は強まっていることを英虎自身も感じてはいたのだ。だが彼は胸にいつでも妻子を思っていて、それが彼の人間たる感情を手放さずにいた理由なのである。しかし殺してしまった。叫びながら半ば反射的に赤子の首を投げると、首は地面に叩きつけられて血だまりのなか顔の半分が潰れて、とうとう愛娘かどうかも分からなくなった。
「!」
 英虎がはっとした所、気づけば船の中であった。疲れた身体と精神を少しでも休めるために眠ってはみるのだがいつも悪夢で起こされる。全身が汗で濡れて気持ち悪い。先の水浴びなど何の意味もなかったようである。
 はー、はー、と荒い呼吸をしながらやはりシャワー程度は浴びるべきとのっそり立ち上がり船内を探してみることにした。だが豪華客船とはお世辞にも言えないこの船にはきっとそれらしいものはないのだろう。何より船員以外の人間がいるかどうかはあやしいものである。タオルだけでもいいので体を拭いたかった。
 英虎が歩くたびに低く軋む船の作りに、ほんとうにイトゥルップ島に辿り着くのだろうか?と疑念さえよぎるが他に縋るべき手はない。もしこの船が沈んだとしても英虎には泳いででもいかねばならない地に他ならないのだ。
 暗い部屋を数カ所回り特にそれらしいものはないことを確認した時、光の漏れる部屋がそこにあることに気づく。確かに聞こえる女の声に、思わず耳を澄ます。どうやら人間のようである。タオルぐらい借りられないものだろうか。そんなつもりで英虎は軽くノックをしてからドアを開けた。

「きゃっ!」
 半裸の女が二人、下着を手にしながら何やら話をしている。実のところ単に下着についてあれこれと語っていたところだったのだが、そんな場面にはまるで遠い男が急に現れたのだから驚くのは当然である。二人とも長い黒髪の美女である。英虎の隆々とした筋肉に形どられたひどく無骨で男臭い姿に女たちは大声すら上げられないで真っ青な顔をしている。裸のまま抱き合うようにして身を守る手立てなどまるで持っていない様子である。
「すまねぇが……、寝汗で汚れちまったからタオルをくれねーか?」
 そう言いながら英虎は女たちに近寄って行く。そして彼女らの顔をまじまじと見て、そして気づく。その顔に見覚えがあるということを。
 何十年、英虎は神の使徒として仕えて来たか覚えていない。何より死にゆくことすら許されぬこの身体を持った以上は年数などなんの意味もない。だが妻子のことはどう足掻いても忘れられぬ。そんな妻子より前の、もっとずっと前のいつかの記憶が胸の中に蘇る。その記憶が神たちの力によって歪まされていなければ、確かに目の前の女は邦枝葵と、その親友とかいう樫野諫冬のその姿に瓜二つであった。
 それに気づいた時、葵(以下、こう記すこととする)もまた思い当たる節があるかのように驚きの形に目を見開いのを、英虎は見逃さなかった。
 これが確かであるのなら、時はめぐる、輪廻。
 思わず英虎はさらに二人に近づく。同時に、英虎の脳内にはいつかの記憶がまざまざと蘇った。妻子以外のことを思い出したのはいつぶりだったのか。そんなことを思い出すはずもない。そればかり悪夢のように浮かんで来たのだから。
 だが、今浮かんでいる葵の記憶はひどく澄んでいて、とても初々しい記憶。何回前の輪廻の記憶なのか英虎には分かるべくもない。そんな遠い過去の記憶が鮮やかになる。
 その時、英虎は着崩した学生服を着ており、葵は特攻服をまとっていた。その時は何とも思っていなかった。元気な女だな、くらいのものだった。やがて葵は特攻服を脱ぎそれまで見せていなかった少女らしい表情や行動が目立つようになった。他人などその頃からどうでもよいと思い、我が道を突き進んでいた英虎でさえもその変化を見て、内心驚いたものだ。そこからなんとなく気になりだし、それが淡い恋だと気づいた時には英虎がライバルと認める男鹿に惚れ込んでいたために、女らしく可愛らしく変わっていたのだと理解する。それならそれでうまくやれよと英虎は背を向けた。淡い想いはそこで終わった。
 そんな子供の惚れた腫れたの話だが、いっとき焦がれた女の生まれ変わりとしか思えない女が目の前にいる。現在の英虎にはそれだけで十分だった。

 もとよりそんなつもりで来たわけじゃないが、のしかかるようにベッドへ上がり二人を押し倒す。やっ、と葵が声を荒げるものだから反射的に唇を塞ぐために、ねっとりと濃厚なキスを施す。同時に諫冬の胸を乱暴に揉みしだく。若い肌は英虎のごつごつと節くれだった指にも吸い付くように馴染んで、その頂点でツンと尖る乳首を軽く親指でクリクリと刺激してやるとすぐに甘い声が洩れ始めた。その声を耳にすると、諦めたように葵の肩から抵抗の力が抜けたようになったので、唇を離すと唾液の糸が英虎と葵の間に繋がって、やがて切れた。今度は顔を諫冬の側に向けて、揉んでいた胸に顔を寄せ乳房に顔をうずめる。女を抱く時に堪らないと思う瞬間である。その間葵に手を延ばして、昔を懐かしみながら緩く髪を撫ぜた。真っ直ぐの髪が輪廻の時を超えても逃げるようにサラサラと英虎の指の間を流れて行く。その優しい仕草にいくらか恐れが消えたのか、若干葵の表情が緩む。しかし英虎は諫冬の胸を吸ったり舐めたりしているので見てはいない。
 諫冬を舌で責めながらも葵を指で撫で回すことも忘れてはいない。徐々に英虎の頭が下にいくにつれ、葵を撫でる手も頭から胸へと映ってゆく。胸から腹にかけてやわらかな感触を感じる。舌が諫冬の腰を舐めるとビクリと全身を震わせて反応する。葵に比べるとひどく感度がいい。そのまま下がって諫冬のショーツごと吸うようにして、同時に葵の太腿を撫で回す。まだ核心に触れるつもりはない。
 わざと葵から手を離して、見せつけてやろうなどと考えたのは長年、戦いだけに明け暮れてきた中で、攻撃的な性質が伸びてきたためなのかもしれない。諫冬のショーツを脱がせもせず脇に寄せることで女の部分を露わにさせる。指でヴァギナに触れるとくちゅり、と濡れた音が三人の耳に届く。感じやすい娘だと英虎は思う。英虎の太い指もすぐに飲み込んでゆく。中は熱く狭い。ソコを広げるために指を大雑把に動かすと、諫冬の声が大きくなった。泣いているような喘ぎだ。英虎が太腿に舌を這わせると、そこまでてらてらと愛液でぬらついていることが分かる。十分に濡れていると感じ、指をさらに増やす。狭い穴は英虎の指を拒まずにゆっくりと飲み込んでゆく。そして英虎は顔を葵に向けた。反射的に葵は後退ろうとする。だが英虎の手がそれを許さない。引き寄せて再び口を塞ぎ胸を揉む。そうすると大人しくなるのが女の性ということを、長くただ生かされ続けてきて英虎は戦いを学ぶのと同じように、知った。この目の前の愚かな女もまた変わらない。唇を離すともはや先ほどの元気はなく、熱に浮かされたような目で英虎を見返してきただけ。
 どうしてか分からない。どのくらい前のことか分からないデジャヴに近い記憶に翻弄される。一度はその腕に抱きとめたいと思ったことがある女のような彼女に、覚えている限りでは一度もない理性を、瞬時に剥がされてしまう。雄の本性さながらに葵によく似たその女を犯し尽くしたいと思う。
 そう思いながら隣の諫冬のことを忘れているわけではない。指を動かすたびに耳障りなほど、あ、あ、あ、あ、と途切れ途切れの喘ぎ声が彼女の自己主張のように思われる。ぐっしょりと濡れた感触の英虎の片手の無骨な指が彼女をいつもの女のように攻め立てる。指は気づけば奥まで飲み込まれていた。この小さい身体に太い指を入れても壊れない女という生き物はとても強いものだと、半ば感心すらしてしまうほど。しかも痛みではなく快感があるというのだから。激しく指を動かすと声が鳴き声に変わって、やがて叫びに変わる。だが甘い色は色褪せないままだが。それを胸を揉まれながら驚きの表情で凝視するそのあられもない有様。ひぅ、ひぅ、と喘ぎながらビクビクと激しく身体を痙攣させた。もちろんヴァギナの内などは細やかに、英虎へと振動を与えてその快感の激しさを知らせている。指を引き抜くとひどく強い雌のにおいがした。このにおいがなんたるかを言葉にすることはできない英虎だが、近い感覚ならばフェロモンというやつなのだろう。
 そのひどく濡れた指で葵の頬を強引に掴み撫で回す。要するに、諫冬の愛液によって葵の顔は穢されていく。そのさまにひどく興奮を覚えた。そのまま口の中に指を突っ込み逃がさない。例の記憶の中の葵ならばどうやってでも逃げただろうに、諫冬をもなんとか救って逃げただろうに、この世界に生まれ変わった葵は非力なのだろう、と英虎はなんとなく感じる。一度、できる限りの優しい口付けを落とすとそれは今までの行動の中ではあまりに意外だったのかぽかんとした表情の葵が目の脇に映る。もちろん長年を生き続けてきた英虎の余裕である。気の抜けた葵の最後の砦であるショーツを破いて、すぐにそこに唇を寄せた。瞬時に起こったことにすぐには対応できなくて、舌というよりは唇でソコに触れられるまで呆気に取られて言葉、否、声を発することすらできなかった。だが突如襲ってきた感覚に声をあげてしまう。
「やっ……!…」
 それには色気とかそんなものは感じられない響きだったけれど、ヴァギナにしゃぶりつくとすぐに声は艶めいた響きになる。ぢゅ、ぢゅ、とソコを吸うと大袈裟なくらいにビクビクと身体が震えた。や、やあ、あっ、あ、となんとかぎりぎりのところで抑えている声が洩れ始める。英虎はソコに両手を添えるとすぐ左右に広げてわざとらしくナカを覗き込むようにする。広げたことで露わになったクリトリスを、舌先を固くしてチロチロと舐めてやるとすぐに反応は分かりやすい。自ら足を広げて全身はわなないている。どうやら弱い部分らしい。さらにチロチロと舌を出して責めてやると葵は涙をこぼし出した。それほどに快楽が強かったということなのだろう。すぐ達してしまっては面白くないので口を離す。
 チラと見た隣の諫冬はようやくベッドの上に腰を落ち着けたところだった。そのぼんやりした表情に、英虎は容赦なく半勃ちのペニスを擦り付ける。最初の数秒は逃げるように身をよじったがなんの意味もない。意味は分かっていたようで、諫冬自身から口を開いてペニスをしゃぶり出した。
「……んっ…」
 その手管に、英虎の口から思わず呻きが洩れてしまう。見た目小さい口に、そこらの女を悦ばせ続けた固くて大きくて剥けているペニスを口に含んでしまう。やさしく撫でる舌先は裏筋をナゾるもので、強い快感を得られてしまう。ウブな顔をして、そう思ったがあの狛犬の魔物の力が今でも宿っているのかもしれないと思えば納得できた。だがそれでも神に近い力を得た英虎には物足りない。ぐ、と諫冬の頭を掴むとガクガクと激しく腰を揺らす。
 その様を見ながら葵は言葉をなくしていた。恐怖ではない、性的な興奮を覚えている自分自身に驚いているくらいだ。再び悲鳴に近い声をあげながらベッドに横たわる諫冬を見ながら、向き直った英虎のギンギンに勃起したペニスを注視してしまう。と、同時に英虎は葵を押し倒すようにしながら片足を乱暴にあげて、さっき吸い付いたヴァギナに向けてペニスを射し込んだ。その間じゅう、いや、いや、いや、いや、と泣きながらもどうしてか、しがみついてくる葵を可愛いと思わない男などいないだろう。葵のナカはとても狭いから男の相手などほとんどしていないであろうことが伝わってくる。痛むから泣くのか、嫌だから泣くのか、気持ちよすぎて泣くのか分からないがこの猛り狂った想いを注がないわけにはいかない。唇を離した時にはもう英虎のペニスの奥までをも葵は飲み込んでいた。否、飲み込まされていた、というべきか。
 正常位でガツガツと腰を動かす。普段なら女の感度や態度を見るために加減をして腰を使うところだが葵相手にはそうもいかないらしい。だが脳内では分かっている。目の前にいる女は邦枝ではないし、その昔焦がれたその当人でもなんでもない。分かっている、分かっているのに!
 くにえだ、くにえだ。くにえだ!くにえだッ!!
 頭の中で何度も何度も呼びながら我を失って腰を振る。鳴き声はいつしか消えなくなった。それは女が気を失ったせいだろうか、それとも英虎自身が我を忘れたせいだろうか。
 葵のナカに子種を吐きだすとゆっくりとペニスを引き抜く。ぬるりと白濁の糸が性器同士をつなぐが、やがて途切れる。英虎はもう少し自分のペニスに残った精液を出そうと、葵のタテスジにまだ硬いモノを宛がうと、すぐ近くから強い視線を感じた。それは殺気のようななかったが、強い意志を感じて思わずそちらを見ると、ひたすら物欲しそうに目を伏せつつも情事から目を離すことができないといった様子で見つめている諫冬の姿があった。幼い顔をしているがこちらの方が雌としては成熟しているのだろうと感じた。
「欲しいか。……なら来い」
 英虎の膝に乗るように指示し、葵から結合している部分がよく見えるように諫冬の足を肩に担ぎあげて下から激しく突いてやると、そのあられもない有様に動揺する。英虎は間髪いれず精液と愛液でぐちゃぐちゃに濡れた葵の入口に手をやると、すぐに動けなくなって、目の前の光景に興奮し、弄くられることでひどく感じた。このような官能的な光景など誰が想像するだろうか。今は船が揺れるほど激しく女を暴き尽くしてやるだけ。
 ただ、記憶の中の邦枝葵、その人が愛おしくて自分のものにしたかった。その間だけ、妻子を忘れて生きている気分にさせてくれた。だからこそ、英虎はとどまらず先を見て進むことができるのだ。


 行為が終わってひと息吐くと英虎は立ち上がる。葵が声を掛ける。
「あのっ……、名前は?」
「…島に着いたらさっさと消えろ」
 名前など答えてやらない。もし、再び会ってしまったら、特に闘いの地で血を浴びた姿を見られてしまったら、何よりこんな静かな場所でない所で会ってしまえばきっと英虎は葵を、諫冬を容赦なく殺してしまうだろう。ならば名前など教えない方がいいのだと言い聞かせて。一時でもよい思いをさせてくれた彼女らに何も感じないわけではなかったが、それでもいずれ殺してしまうような気がしてしまうから、体温を持った人と関わるつもりなど、英虎にはもうないのだ。



12.03.12

たぶん5,6時間はかかったと思います、この内容はないよう文章。

今日もゴッドオブウォーやったけど、一時間もしないうちに3D酔いの症状…。ゲーム好きには痛いけれどもワタスは酔ってしまう方なのです。酒は飲めるのだけれども笑
つまりは思うように進まないのです。けれど無理もできませんし……。とりあえずコレ書いてました(笑)ヨゴレじゃね?
実を言うともうちょっと濃厚エッチだったんですよ。でもそれは長くなるだろう、と思ったから葵ちゃんに重きを置いた感じです。
もし、完全版が見たい!という方がいらっしゃったらそれは連絡くだされば考えます。ウンコクソサイトですからね、言葉をいただくことなどめったにないし、くさしがあるので。


追記
12.03.17
いくらか書き直して投下します
アテネの地 はやめといた(笑)ということでイトゥルップ島。ここは日本最北端ということで調べた結果、検索に引っかかった島なんですね。日露で領土問題があるみたいなんでどちらの持ち物かはいまいち分からない島ではあるようなんですが・・・
最大都市はクリリスク。なんだか名前にエロスを感じますww

ソングオブ...D.D.D/シャムシェイド