生まれた日の記憶


 それを恋というにはあまりに強く押し付けもなく、愛というにはひどく脆く幼くて、この想いを何と言葉にするべきなのか二人には分からない。ただ分かるのはそこには人間らしい欲望があったというだけである。

 クンミはシドに一度でいいから契りたいと言った。それは人間の今でなければ意味がないと。そしてもう一つ、ルシが死んでも人には記憶に残ってしまう。それでも構わなければ今夜だけでも愛してほしいとお願いした。その時のクンミは自信喪失しておりひどく背中を丸めて頭を垂れていた。抱いた女が死ぬというのはどんな気持ちなのかなんて、死んだ者を覚えていられないオリエンスの民であるクンミは理解できなかった。そしてそれはシドも同じである。目先のことを思って頷いた。
「クンミ。お前の力に頼ることになるだろう………私の方こそよろしく頼む」



 どちらともなくキスをした。一度目は儚く触れるように。二度目からは激しくとろけ合うようなキスを。唇と舌を吸い合ってようやく唾液の糸をつなげながらも口と口とを離した時にシドは悟った。クンミは間違いなくこうしたかったのだ、と。ずっと前からシドとこうしたくて堪らなかった、そんな思いをただひた隠しにしてきたのだと。
 それはきっと彼女にとっては愛というものなのだろう。けれどシドはそれに応える自信はない。年齢的な意味合いもあり、肉体的な交渉がなかった事実もあり、恋愛に疎かった自分の生き方にもある。死はあまりにシドにとっては身近だったから他人を愛することなど考えられなかった。そして軍事にかまけ女を抱くことよりも研究や兵器等の点検の方がシドにとって生きがいであったこともまた事実なのだ。
 クンミが着衣を肌蹴ていく。形のよい乳房が目の前で揺れた。きめ細かい女の肌がそこにはあった。吸い付けられるようにそれだけに集中してしまう。気持ちと高揚感はまったく別ものだった。気づけばクンミの乳首を子どものように吸うシドの姿があった。うまくできないのではないか、気持ちの整理がつかないのではないか、そんな心配など男の欲望の前では何の意味もなかったということか。ちゅう、と強く吸うと敏感な肌が確かに伝える。びくりと全身で反応して泣くような声を発するクンミの様子がもっともっと見たいと思った。
 片方の指は女の乳首をこねくり回すように細やかに動く。些細な動きでも全身で応えるのがひどく愉快である。これだけ感じているのだ、きっとクンミはこの時を待ち構えていたのだろう。指図とも反射的に開いていく足の間に強引に手をいれた。下の着衣はまったく脱いでいなかったが、そんなことはどうでもよかった。ただ差し入れた指先に触れる茂みの感触とほぼ同時に感じるのは湿った感覚。耳には届かずともくちゅり、と鳴った気がした。もしかしたらシドが食んだ乳首と唇との音だったかもしれない。それを確かめたい思いもあってシドは少しだけ歯を立てながらさらに強く吸い付いた。
「ひゃん…っ!」
 高めの声が耳に届いたけれど悪い気はしなかった。このような声を出すのは女の性だということを知っていたから。茂みの辺りに触れる指はさらに確かにぬるりとしたような気がしたがよくは分からない。シドはクンミに背中を向かせ、すべすべの肌の匂いを嗅ぎながらゆっくりと舌を這わせた。それはいやらしい心ではなくて、単に感触のよいものに長く触れていたかった、そういった思いからであった。シドの舌が新たな場所に触れる度にビクリビクリと全身を震わせて与えられる刺激に耐える。体の後ろにあるくぼみのすべてがまるで性感帯であるかのようにクンミの感覚を襲う。もれ出てしまう声を抑えることなどできない。ただ与えられる感触に合わせてあられもない声を上げる。乳首をかちかちに硬くしながら。
 あ、あ、あ、…と苦しげに上げる声を聞きながらシドはそろそろ良いかと思い残りの着衣を大胆に、そして強引に脱がせるようにずり下げようとするがピッタリとしたそれは脱がせるには遠い。だがそれに反してクンミはさらに強い快感が欲しくてたまらないようで、当人の知らぬうちに差し込まれた手に女の部分を押し付けるような腰の動きを見せていた。クネクネといやらしく動く女の姿を見てシドも目の前の彼女を抱きたいと思い始めていたのだったのだから。
「自分で脱げ」
 命令口調で言うとハッとしたようにクンミはシドを見ながらしばらく停止した。しかしまったく抵抗しようなどとはしない。ただ単に瞬間的に思考が停止したというだけのことらしい。ゆるゆると動き出すとくちゅり、という女には恥ずかしい音と共にシドとクンミの体は確かに離れた。少しだけクンミから声が漏れたような気がしたのはしどの気のせいだったのかもしれない。そうであって欲しいと思う気持ちだったのかもしれない。すぐに彼女は着ていたものを脱いでゆく。
 じかに触れて欲しくて堪らない気持ちが性急な動きに現れてしまう。それを抑えきれずにいることを感じてはクンミは頬を赤く染めた。こんな思いは初めてだった。そして己を浅ましいと感じてしまう、恥ずかしい存在と感じてしまう。決して否定などできない。それを思えば思うほどに見て欲しくないと思うけれど相反してすべてを見て知って欲しいと思う自分もいるのだ。こんな気持ちは初めてであったから言葉になど到底できっこない。最後の砦とばかりにパンティを身体から離す時に刺さるようなシドの視線はひどく痛くて堪らなかった。その視線をびりびりと感じながら低い声が笑った。
「おい、…なんだこれは」
 くちゅり、という音と同時にクンミの女である部位に触れる無骨なシドの指が敏感なソコをゆるく撫ぜた。ただそれだけなのに果ててしまいそうなくらいに感じた。そのくらい触って弄って撫でて舐めて抓って捏ねて…ああ、与えられるすべてを感じたかったのだろうと感じる。だがその刺激があまりに強過ぎてシドの身体に思わず縋って鳴き声を上げてしまう。そんなつもりなどなかったのに、軍人で研究者であるクンミを信頼していると分かっているだけにあまり女な行動は避けるべきと分かっていた。だが選んだ道である、そしてここまできて抑えられるものでもない。
「シド様っ…、もっと、っ、ああっ…!」
 シドがクンミの臍を舐めながら指先は太腿をやわやわと揉むようにして強い刺激を避けるように動いてゆく。臍がここまで強い刺激を生むなんてこれまで知らなかった。臍から生まれる刺激は腹の中を通って近くの股間を伝うような気がした。さらにやらしい気持ちが強くなって、だが決定的なものを与えてくれぬシドの責めに飢えを感じ腰をくねらせる。その動きはクンミの女の部分がもたらすものであり、意思が作用するところではないのだけれどシドにとっては興奮を煽る潤滑油になり得た。だが思いのままに行動に移すほどシドも幼いわけではなく、目の前の女をからかってやりたい衝動が上回った。
「どこが良い? ホラ、私の手に触らせてみせろ」
 クンミには知らぬことだがシドの表情には冷たい笑みが張り付いたままである。当人としては笑いを堪えることなどできなかったのだ。クンミの片手を掴んでシドの硬い手を握らせる。そうしながら中腰もしんどくなってシドだけはクンミの真ん前に腰を下ろしたが、クンミに腰を下ろす許可は与えない。立ったままでいろと命じた。
 少しの間クンミはどうすればよいかわからないと言った表情で迷っていた。手を握らせられたまま途方に暮れるように。だがシドが見上げているのと目が合って頬を染める。自分は見られている。それをようやく理解したなどと遅いのではあるがそんなことはどうでもよい。緩く動かされた指がクンミの股間の花弁を撫ぜるものだからすぐさま気持ちは快楽の向かう方へと流れていってしまった。その流れでシドの指を固定するように少し力を入れて、まるで自慰するかのようにソコに近付ける。そうすると先の動きは嘘みたいにピタリとシドは指の動きを殺した。人の体温はあるけれど硬い棒のように動かない指を、クンミは道具のように扱って濡れた所をこじ開けるように動かす。そして、ある一点を押し付けて腰をビクビクさせる。抑えていた声が再び堪えきれなくなって洩れ出してしまう。ここ、です。一番、感じるところです…と息も絶え絶えにシドに自分の良い所を触らせて教える。
「ほぅ、ここがよいのかお前は。確かにどろどろになっておるな…教えてくれた礼だ、存分に感じるがいい」
 シドの声色は興奮の色すら滲ませてはいない。しかし指の動きは確かにくんみの弱い所ばかりを突いてまったく加減をしない。そこばかりを突かれ、嬲られ、擦られ、弄られてただただ馬鹿みたいに喘ぐことしかできない。ヒイヒイと息を切らせて喉を鳴らす。クチャクチャと粘液をまさぐる音すらもクンミの鼓膜を犯した。理性なんてものが保つわけがなかった。ただ良いのか嫌なのか判別出来ないような悲鳴に似た声が静かな空間を割っていく。与えられる快感のすべてに溺れてしまえば戻れないような気がして抗うように首を横に振った。全身で快感に縋っているのにそうしたくないと思っていた。
「しっ、シド様っ、やぁっ…、シド様ぁぁ…。そっ、そこぉ、もぉ…、やめてぇぇえ…、だめぇ…」
 泣き声に似た声がクンミの口から哀願となって洩れ出る。しかしシドはそれを聞き入れようとしない。先に最高に良い場所と聞いたはずだと軽く言い放って。確かに数分かどのくらい前かなんてクンミの快楽を追う以外に考えられない今の脳みそには理解できなかったが、それ以上に切羽詰まっていた。これ以上責められてはどうしても堪らないのだ。だから首を激しく横に振った。こうすることで少しでも理性を呼び戻せるのなら、そういった淡い願いをも含めて。
「だっ、だめぇ…だめなのぉ…! これ以上お豆いじられると、…やぁんっ、お、おかしくなるうぅ!」
「なら、おかしくなれば良かろう。私とお前しかここにはおらん」
 どう言ってもシドは聞き入れてくれない。身体を支えるのもやっとで壁に寄りかかって足をガクガクと震わせた。しかしシドは彼女が座ることを許可しない。否、拒否し続けている。立っていろ、と命ずる。立っているせいでクンミの性器から垂れる粘液は太腿をのろのろと伝っている。時折それをシドがゆうるりと舐めとって鼻を鳴らす。
 不思議なものだった。女のそれは甘くて不快な味などしないのに男が出す精液は己のものですら生臭くて口に入れることなど到底考えられないような代物だと思っている。ただ性別が違うというだけでここまで違うのはどうしてなのだろうかと思わずにはいられなかった。
「ち、っ違いますぅ…! そのっ、そこばっかり、だめぇ! や、あ、あ、あんまり、されるとぉ、もれ、ちゃうぅ。…だ、だからぁ、」
 啜り泣くような声を上げながら懇願する。つんと張った小豆のような小さな器官を弄られるのにはひどく弱いらしかった。そこを責められ続けると体の力という力が抜けてしまい、おもらししてしまいそうになると言って首を横に振り続ける。女が快感のあまりおもらしをする姿など見たこともなかったし、想像だにしたこともなかった。しかしいざとなると不快感はないものだ。むしろ快感のあまりなどと言えば可愛らしさすら覚える。
 シドは白虎全体の指導者であり、最高責任者でもあった。しかし自分の中にここまでサディスティックな感情があることは知らなかった。敵を壊滅させることとはまた違う高揚感を感じる。敵兵を捕虜にし、拷問にかける感覚とはまったく違う。支配は支配でも種類の違う支配感がそこには生まれているようであった。とは言っても、じゃあ何が違うんだよ? と聞かれてしまっては答えることができない違いなのだが。そう、その違いは感覚的なものであり言葉に表すことはとても難しいものなのだ。
 だからシドはクンミの言葉を無視して指を動かし続けた。クンミは泣いて、そしてやがて叫び出した。やめてほしいと何度も何度もシドに許しを乞うた。グチャグチャという水音がわざとらしいくらいに耳に響く。わざとそういうふうにシドが指を動かしているのだ。か細い泣き声と共に女は一室のベッドから近い壁際で震えながら抑えきれない尿意に負け、シドに指で触れられながらジョロジョロと黄金色の液体を溢した。そこには赤く分厚いマットが敷いてあって、濡れる度に重そうに赤黒く変色していく。朱雀の旗のようだ、とシドは思う。朱雀がまるで黒く塗り潰されて無くなっていくかのような予兆のように感ぜられた。クンミの泣き声は悲痛なほどひん、ひん、と動物のようになっていたがそんなことはどうでもよい。それでも快感を貪るこの女を好きにできるのに朱雀のことを考えてしまうシドはやはり軍人であり、それ以上でもそれ以下でもない。今感じた予兆に気を良くしてチョロチョロとした流れがようやく止まるとクンミをゆっくり抱き寄せた。一方の手ではその小水にまみれたマットを摘まんで、近くのゴミ箱に棄てた。これがオリエンスの、そして朱雀の命運なのだろうと思いながらクンミを抱きあげた。


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シド×クンミ バッチリえろです。
(ごめんなさい、長くなったのでさらに区切ります、スイマセン…)


一応レベルの代物ですが、スポーツ紙に載ってるくらいの官能小説を目指したつもりです。甘いかなぁ…
難しいなぁと思ったのが下品な言葉を使わないけど、同人的な表現も極力使わない、という所でした(まぁ自分で勝手に作ったルールなんですけれども)。
下品はマンコとかチンポですね。んで同人的というのは◯◯自身とか胸の飾りとか抽象的なよくわからんちんのことです(笑)
つまり両方を取っ払うと普通にペニスとかヴァギナとかになるんですよ。でもそれもなんか違うなぁと思って極力避けようかな、と。や、これから使うかもしんないけど今の所は、ね

要するに
すべて取っ払った結果、現状を表す言葉の数々をダラダラ述べることになっちゃって長くなりーの。
長くなったせいでエロさが失われグダグダ感が増したりーの。
兎に角よいと思われる部分は長く語ることでぼやける部分があるから、そこから何かを感じ取ってくれる可能性いうか。そんなもんがあるかもしれねえなぁ、とか、そんな淡い期待を持てるかもしれないかもしれない。などとイミフなことを考える余地があることぐらいかなあ?
(つまり、ほぼ無いってこと)


とりあえず甘いけど、小便スカが書けて第一段階ホッとしましたれす。
次回で終わると思うのでもう少しおつきあいくださいませ。



Title of : joy