永遠のメリークリスマス


雪が降りそうなくらい寒い日。
朝から何とも言えない程に寒い。凍えそうなほど寒い日で、外に出るのも躊躇われた。しかし年の離れた弟はまた公園に行きたい、とぐいぐい袖を引っ張るのだ。
しつこい。
姉として放っておくのもあまりに可哀想かと思い、弟に厚着をさせて庭に出る。玄関から出る前に弟が先にドアを開く。まだ髪の毛も結んでいないというのに。いつもの姿のまま庭に出てしまうことになる。

「あれ」「え」
男女の声がハモった。

目の前には男鹿とベル坊の姿。
目の前には邦枝葵と光太の姿。
ここに邦枝がいるのは当たり前だが、ここに男鹿がいるのはあまりにおかしかった。元よりここは邦枝の家なのだから。確かに男鹿は前に邦枝を家まで送ったり、邦枝の家で修行をしたりしたこともある。だから家を知っていても当たり前なのだが。
だが、今日という日。どうして、と邦枝は声にしたかった。あまりの驚きで口をぱくぱくするだけで声を発することもできないくらいだった。なぜならば、その寒い日はクリスマスであったからだ。
「んだよ」
ぶっきらぼうに男鹿が言う。いつものように睨みつけるような視線。ベル坊はずっと抱かれている。さすがに寒いのか男鹿から離れようとしない。邦枝と目が合う。邦枝は男鹿とも目が合う。逸らしたのは邦枝が先だ。
「そ……っちこそ、何でここに、いるのよ…」
「ジジイに修行の成果、見せようと思ってな!」
「で、でも………、今日、おじいちゃんいないの……」
ふぅん、と男鹿はあまり気にしない様子で鼻を鳴らす。残念そうなそぶりもない。ただ近くで邦枝を見下ろしている。少し黙って時間が長く感じた。どうすればいいかわからない。まごついた様子もなく邦枝の上から声が降ってくる。
「今から光太と遊び、行くんだろ? なら、行こうぜ。公園」
邦枝は顔が熱くなるのが分かって慌てて俯いたが、断る理由はなかった。確かに邦枝の祖父は家にいなかったし、嫌ではなかったからだ。遠目にはやっぱり夫婦に見えてしまうのだろうか、と思ったらさらに顔を合わせられなくなった。弟の手を握って外へ飛び出した。

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12/25

クリスマス短編
ほんとは姫川も混じってました。書き終わりそうになってはしょりました(笑)。男鹿と邦枝のクリスマスネタ。ベタベタしない二人が二人らしいな、と。あくまでベル坊とか光太を通して、というような感じですしね。

近々、姫川も絡ませたネタを書きたいですね。


あ、ちなみにうちの地方はクリスマスは雪降りますけど、べるぜバブの作者の実家は暖かいほうだと記憶してますので、こんなネタでした。
アップは25日はきついかなー?

2011/12/25 23:29:52