2011.09.29 Thu 20:30
若き新人


神崎さんに憧れて入ってきました!と勢いよく叫ぶ若い男に叱咤。
「バカくせぇ」
だが神崎一家には神崎さんは頭の数だけいるわけで。結局は神崎一のオヤジに憧れて入ってきたのだというオチ。だが神崎一(以下=神崎)はそれを知っていたので驚きもしない。ふん、と鼻を鳴らすのみだ。そして思う、言葉と同じことを。
「オメェが使えねぇことは知ってる。だがな、組のために働け」
それはシノギを持って来いという意味に他ならない。結局は世の中カネなのだ。少年と言ってもいい彼は深々と頭を下げた。声を掛けて貰えたことが感動なのだと涙ぐむ。やはり思う。バカくせぇ、と。
生きていれば声も掛ける。話もする。ましてやそこにいるし、話があると言って頭を下げてきているのだ。そんなことは当たり前以外の何物でもないだろうが、と。だが目の前の年下の男はぐずぐずと泣きべそをかいている。
これが【組長】の偉大さか。と溜息を吐く以外にやれることはない。頭の低いこの男の頭を蹴りたくなったが、何とか我慢した。
なぜなら、
体に力が入った途端に神崎の肩に手をやる者がいたからだ。きゅ、と力抑え気味に握った手の先を見ればそこには城山がいた。城山は何も言わずに静かに首を横に振った。わずかに。
「オウ」とだけ返し男の方を見ようともしないで部屋から出た。勝手に神崎組長の影を追っていればいいさ。せいぜいゲンメツしない程度に崇拝しろや愚かなガキ。思いながらドアはゆっくりと閉まった。


2011.09.29 Thu 23:26
若き新人A


いつぞやに見た青年、神崎とは片手で余る程度しか歳も離れていないぐらいの彼。ビクついた表情があまりに愚か過ぎて笑ってやろうと思ったけど笑ってやれないくらいに。こんな野郎がヤクザなんで務まるワケねぇだろうと唾を吐きかけるようにワザと笑ってやる。こうやって蔑まれることで男は負けてたまるかという思いで成長していく。それを感じることができるのは負けたりバカと言われた高校時代にあるのだろうきっと。
泣きべそをかく男の声が耳に届いた。とおれはだいじょぶ、だから…と水に濡れた声はひどく細い。
こういうヤツは必ずいる。勝手におれはいなくなって困る人物だ、なんて妄想を脳内で現実にしてるイタイやつ。それを叩く暇なんてないが、大丈夫と言う相手のへろへろな様子を見ればただのカッコつけだということは分かる。
神崎は冷たくソイツにボディブローを放っていった。


2011/09/29 23:26:54