ピアス(城山と神崎

「これやるよ」
 神崎から急に手渡されたのはピアスだった。大きい。耳用じゃない。だが急に貰ったのできょとんとしている城山に神崎がゲラゲラ笑った。そして冷たく言う。
「口用だ」
「はぁ」
 と思わず神崎の口元を見てしまう。ピアスチェーンがじゃらりと口から耳にかけて長く下がっている、神崎のトレードマークの一つだ。
 まず第一によこした意図が不明。第二、城山はピアスを開けていないし、開ける予定もない。第三、機嫌がよさそうな神崎の様子が気にかかる。
「開けろ。俺がやるっつってんだからよ」
 近くにいた夏目がどことなく難しい表情をした。なんで急にそんなこと言うわけ?みたいな複雑な表情だ。学校の普通の休み時間がリンチの時間にでも早変わりしたような空気が流れている。聞こえてしまったクラスメイト達の中には眉を顰めている者もいた。当の神崎はどうでもいいと思っている。
「今ここで開けろ」
「………はい」
 ピアスを手にしたまま呆気にとられたような表情をして城山はちいさく返す。むしろハイという返事の方がおかしいだろうと周りの者は内心ツッコんだ。ここはボディピアス教室では御座居ません。
「場所、どの辺がいいか教えてもらえますか」
 もはや城山に躊躇いはなかった。ピアスを開けるくらいならなんということはない。ピアスを持ったままの手を神崎が掴んで針先を唇の端の方に合わせる。この辺かな、と言うと手を離した。
「付けてみろ、きっと似合うぜ」
「分かりました」
 ぶちり、という音と共に針先を貫通させてかちりと嵌めた。だが城山はポーカーフェイスだった。実際はじんじんと口元が熱を持って痛い。だがそれでも心底愉しそうに笑う神崎がいたので良しということだ。ふぅん、と言いながら愉しそうに神崎は城山の口元に手を伸ばし、唇の端から垂れた血を指で拭う。城山の血を舐めながら笑う。
「やっぱ似合うじゃねぇか!」
「ハイ、有難うございます!」
 やりとりを見ていた夏目他クラスメイト達の顔色たるや、ひどく悪くなった。
(変態か…変態なのか?)
 誰も口にできずにどんよりした気持ちで一日を過ごすことになる。

11.09.13
どう見ても神崎と城山はSMにしか見えん
でもエロスではないのです。SMは生活なのですから性ではない。
これは理解できる人がどのくらいいるんでしょ〜か。

2011/09/13 18:21:10