神崎と城山。絆の様で暴力の様で。



 またいつものように神崎が城山の頬を殴り付ける。続けて胸板にハイキック。二発の攻撃に防御の姿勢をとることを許されていない城山は、教室内で吹き飛ぶしかない。巨体が廊下の隅で崩れるように落ちた。
「なんだ昨日のは、ナメてんのかてめぇ」
「……申し訳、ありません神崎さん」
 トレードマークの三つ編みの片っぽを掴んで城山を無理矢理に神崎の顔の方へ、上へと向かせる。痛みに歪む顔が城山のいかつい顔を助長させているように映る。その顔は今、神崎に殴られた箇所とは違っていたが、頬を腫らせていた。そ、と神崎が静かに腫れた部分に触れる。城山が眉を顰める。それは痛みのためか、それとも厭だったのか、また別の理由があるのか。
「なんだコレは。ざけんじゃねえぞ城山ァ!あんなクズ連中にやられてんじゃねえぞこのクソカスがああ!」
 昨日の短時間の乱闘のことを神崎は言っている。神崎は無傷だった。だが城山は数発くらいは相手連中から貰った。その傷があまり殴り慣れていない顔への攻撃だったので、腫れてしまいひどく目立つこととなってしまった。さしてひどい傷でもなんでもない。痛みも引いているがまだ腫れは引いていない。むしろ無理に引っ張る髪と皮膚をつなぐ、今の痛みの方がひどいくらいだ。だが表情をできるだけ歪めないようにしつつ謝罪の言葉を口にした。目の前の神崎は唾を吐き散らしながら城山に怒声を浴びせ続けている。頬にはその腫れを消すぐらいの平手打ちが十数発。バチバチばちばち、と鋭い音を周りに響かせて。
「俺がいつ殴られていいって言った?俺の許し無くして殴られていいと思ってんのか。てめぇを殴れんのは俺だけだって言ったろうが。俺以外の誰かに殴られるんじゃねえよクソが。それで側近きどりとかナメんなグズ野郎。どこの馬の骨とも知れねえような野郎に負けたりしたら、てめえマジ殺すからな。分かったか?」
 むしろ昨日会った乱闘とやらをバイトのせいでまったく知らなかった夏目の方がまったく問題のはずだが、そちらはどうでもいいらしい。城山の腫れた頬が地黒のせいで赤黒く腫れ上がって行く。もちろん、城山の頬は神崎の理不尽極まりない言葉の間じゅうも、じんじんと痛みを放ちながら熱を持ち存在感を増していた。
「おめぇは俺のモンだ、俺だけのモンだ。俺以外にやられるなんて有り得ねぇ。俺以外の誰に傷付けられても許さねえ。俺以外の言うことを聞くな、俺以外の方を見るな、俺以外に仕えたりするな」
 言葉を発する神崎の瞳がぎらぎらと光っており正気を失っているように映る。これを正気で言っているとしたら、それこそ狂気だと夏目は思った。そして、それに従い続ける城山という男のことも異常であると。それ以外に映り得ない。
「城山は俺以外に殺されんな。俺が、殺す」
 なんだこの言葉は。まるで呪詛。夏目が息を飲んだが誰もそれに気づかない。
「………はい」
 おとなしく返事をした三つ編みの男。城山の方にもきっと狂気が溢れているのだろう。理解できない世界だが、それもまた面白いものだと夏目は思ったのだった。


お死まい
joy

11.09.13

小ネタ 神崎と城山。
もうね、こういう異常な感じがツボ(笑)
ってか神崎にホレこむ城山が異常者にしか見えん。

どっちもひどいドドMなんだと思ってますけど。
で。夏目はやっぱりどう見てもSですから。すごく相性がいいっていう。


もちろんホモネタ要素はありません。
深読みすれば城×神はあるんでしょうけど。そういう意図はまったくありません。
この二人は確かに惚れ合ってるけどそういうラブ的な意味合いではないって思う。
むしろラブには育めない絆がありますからね。

ただ、神崎が押しつける感情がまったく分かりにくいってこと。
どう見たって城山には特別扱いしてる神崎ですから。夏目が負けたらどうなるの?とか思うけど夏目強すぎてちょっとやそっとじゃ負けないから分からないでいる今日この頃。

2011/09/13 00:19:21