青の夏祭り



 夏祭り。バカバカしいと思っていたが、思いもよらない相手に待ち合わせ場所を告げられてしまえば、それは、意味のある場所に瞬時に変わってしまうものだと身を持って感じた。メールを見る姿でそれを察する男がいることについては、あまりいい気分ではないけれど、それだけ単純明快であるということを認めざるを得ないのだろうきっと。
「神崎君。俺らの約束とか、メールで断ればいいんだしさ、行ってきなよ」
 見透かされてることに対して反発したい、そういう想いはきっと誰も理解していないんだろう。夏目の言葉は答えに対して誠実に答え、イタイ失敗をした結果、という感覚である。
 それでも勝手に告げられた待ち合わせ場所が気になって仕方ない。ああ、馬鹿みたいだ。そう思うけれども相手が待っているのではないか、と思えば思う程、ムゲにできるほど心は鬼でも何でもない。普通のヒトなのだ。そう思いながら己を励ましつつ「おう、」などと強がりな返事をするのみ。相手がどうとか自分がどうか、そんなことは置いてけぼりなまま、
「おはよ」
 今まで聞いたことのない軽い挨拶。ああ、これこそが仲間内というものなのだろうか、と静かに感じる。相手がどうこう言うわけではないのだけれど。
 いつものパーマの茶髪にラフな着付けの浴衣姿。浴衣は白ベースの明るい感じのものだ。当然だが寧々の浴衣姿を見ることなど初めてのことだったので思わず息を呑む。理由は神崎自身もまったく分かっていない。びっくり息を呑んだ、ということで了解して戴きたい。びっくり息、という言葉自体、今のポッと出なのだが。
「お、おう」
「どうよ?」
「どうって?」
「これに決まってんでしょ、浴衣。バカ!」
 相変わらず一言も二言も多いクソアマ。だから神崎は恨み言のような文句しか出て来なくなってしまうのだ。きっと相手もそれを分かってわざと神崎に突っかかって来るのだろうが。浴衣を着て浮かれた様子で裾を両手で軽く上げ、見て見て、と言わんばかりにその場でモデルよろしくくるりと回ってみせる。
「…ぜ、全ッ然、似合ってねーーーよ。色気が足らねえな」
 別に目の前の寧々に殴られても構いはしない。言い方がキツかったような気もしたが、どうしてか寧々はバカにしたような笑みを見せて、ツカツカと神崎の目の前に歩み寄ってくる。ニヤニヤしている。急に神崎の頬をむに、と掴んだ。痛む程の力を込めて、ではない。チョッカイをかけてきている、といった風だ。
「アンタねえ、そんな真っ赤な顔して言ったって説得力ないって」
 くすくす笑いながら告げられる。顔が熱いのは、このバカみたいな天気のせいじゃないというのか。まるでその理由を当人である神崎抜きにして知っているような口ぶりで言うものだから、無性に恥ずかしくて堪らなくなった。ムカつくから、今日はこのクソアマには奢ってやらないで一人でヨーグルッチ飲むこと決定。うるせークソアマ、とだけ告げて勝手に祭りの会場の方へと向かう。祭りのせいか寧々の機嫌はいいらしい。後ろから着いてくる寧々がいつもより眩しく映ったのは、きっと太陽が輝きすぎているせいだろう。祭りならこんな昼間っからやるんじゃねえよ。神崎は寧々に背中を見せながら一人ごちた。


11.0809

8/8から9日にかけて書いていたみたいです。しかし途中まで書いていてこの文章何?
と起きた朝にびっくりしました。まったく書いた覚えのない文章がデスクトップに残ってるんですから。何かのメッセージを残していたのかと金原ひとみの小説を思い出しながら開いてみました。
どうやら、…夏祭り題材の、神崎と寧々の話の様子。

ただの妄想の産物じゃねえか…。
(とかいって別にエロとかグロとかでもなんでもないし)

その当時何を書きたかったのかは分かりませんが、寧々の「おはよ」の後ぐらいからは今サラサラ〜っと書いたものです。
これは大学生神崎かどうかもまったく書いてなかったので、大学パロではないやつに入れておくことにします。
ちなみに、彼らは付き合ってるわけではない設定ですので、勘違いなきよう。
祭りの会場に行ったら普通にレッドテイルのメンバーと待ち合わせしてたりしてね。それで神崎はぽかんとして。みたいな感じになるととっても神崎らしい展開ではないかなあ?(鬼)


ちなみに仙台では8月6日から8日が七夕祭り。
前日の5日は花火大会があります。
もちろんあっしは行きません(てーか普通に仕事です)が、街場にいくので嫌でもそういう雰囲気は味わってしまいますね。クリスマスとかハロウィンとか七夕とかね。ちょっとウザいけど、雰囲気だけならネタになる。多分そんなとこなんでしょう。

曲はハンソン:MMMBop

2011/08/09 15:22:45