劣化した感情の追悼
彗星03号は落下した


 この世界には痛みや嫉みや悲しみや苦しみ、といった負の感情はもうない。もうそれを感じる神経はない。失ってしまえばあれらの感情に振り回されていたのだと理解できる。はずだが、今はそれを感じることすらできない。それの逆にある感情に支配されているのだから、よくない感情を思い出す暇などないのだ。単純に良い・悪いを同時に感じることはできないのだ。



「オメェを刑事にしとくなんて、クソカスもいいトコだな。俺ァ分かってたぜ、初めて逢った時から。刑事になんざァとてもじゃねえけど、見えなかったかんな」
 対極の場所にいて、やっと分かりあえた。そんな気分だった。もちろんどこかズレた世界なのかもしれないけれど。竜二はブローカーで、時には臓器も売りさばくような警察どもの天敵ともいえる存在。その竜二の担当になったのがホンフゥ。彼は時にメチャクチャな捜査をするが、目の付けどころが非常に鋭いため、竜二としては邪魔臭い存在であった。現状の法律上、悪は竜二で正義はホンフゥのところにある。それ以外には成りえない。法という名の制裁を竜二は受けねばならない。むろん、ここは香港なので竜二の死刑は免れない。過去にホンフゥに数回逮捕されたこともある。投獄され、いとも簡単に竜二は脱獄したのだ。だからこうして今ものうのうと生きている。
「本質は分かってた。俺とおなじニオイがしてたんだよ」
 そう言われることに対して、ホンフゥは今この瞬間でなければ否定をしていた。けれども今はそれを感じる必要がない。己に素直になることができる。人間というのは感情の一部を奪われてしまっただけで、素直にも意固地にもなることができるものなのだ。そう、人間は感情に支配されている。
 竜二はここで生涯を終わらせるわけにはいかない。投獄されるわけにもいかない。まだ自分にはやるべき仕事が残っている。その内容は風まかせのものだったが、まだ警察ごときに捕まるわけにはいかないと思っている。警察はくだらない大義名分を背負って正義ヅラ突き合わせてくるから大っ嫌いだ。それでも、この男のことを他の警察のように無条件に嫌いになることはできなかった。理由は先に口にしたとおり。ホンフゥという男は竜二に似たニオイを持った男だからだ。警察にしておくにはあまりに勿体ない。執拗に追われる度にそれを感じてきた。この男の本心を暴いてやりたいと思っていた、ずっと。



 噛みつくように歯をむき出しにして赤く熟れたようになっている竜二の乳首を愛撫する。今のホンフゥの頭の中には、相手が犯罪者であるとか自分が追い求めてきた者であるとか、そんなことはどうでもよかった。ただ、相手にむしゃぶりついて、浸食してしまいたいとだけ強く願う。だが、思ったよりはうまく動けず不便だ。その理由を作ったのは目の前の竜二である。だが、それに対して怒りを覚えることはない。欲しいものが手に入るというのに怒っている場合などではない。乳首を歯を立てて強く噛みつかれた竜二は、その痛みに甘美な喘ぎを洩らす。痛みが快感だと言うイキモノだとは聞いていたが、やはり間違いないらしい。さらに噛む力を強くすると、竜二のそこからは血が滲み出た。見る前に味で分かった。鉄錆の味がする。ちゅうちゅうと血を啜ってから隆々としている筋肉の線をなぞるように舌を滑らせる。胸より下へ。腹筋をなぞる途中で目に入った臍がひどく官能的に見えて舌をゴリゴリと押し込むようにして舐める。身を捩らせて全身をビクつかせる竜二の姿が堪らない。きっとこの数年間、刑事として追いかけながらもこの姿を何度も想像していたのかもしれないと思った。今ホンフゥは目の前の竜二のことしか考えることができない。己の恋人のブレンダのことを思い出すことは生涯ないだろう。
「焦らしてんじゃ、ねェよ…」
 竜二の声は興奮のためにかすれていた。ホンフゥの与えるものは痛みではなかったが、竜二は快感も嫌いではない。けれども今のこの状態は生殺しのようなものだ。まだズボンも下ろしていないのだ。だがホンフゥは分かっているはずだ。竜二の股間がこれ以上ない程にギンギンに勃起していることを。それについて気を遣ってくれる素振りがない。なかなか冷たい所がある。それは初めて知ったのだが嫌いではない。
「焦らして、なんてねえっちゃ。オイラにすりゃ最初で最後の、竜ちゃんとのエッチやけん。ゆっくり、じっくり、愉しみたかね」
「で?オメエは勃つのかよ?」
「こいつァなんちゃ?」
 ごり。やりづらそうにホンフゥが股間を押しつけてきた。しっかり勃っているらしいことは分かった。ちゃんとした固さはあるようだ。だが、それもどのくらい持つのか分からないのだ。それを当人は分かっているのかどうかは分からないが、自分の身体だけに当人が一番よく知っているのかもしれない。意見したせいか、ようやっとホンフゥの舌はゆっくりと下へ向かった。下ろされたズボンとパンツを嘲笑うかのように、竜二のアンダーヘアを舐め回した。性器に近いそこを舐められてひどく興奮を誘われる。ビクビクと情けない程に全身で反応してしまう。けれどもそれだけの刺激ではこの身体は足りないと訴えているのだ。竜二はホンフゥを見つめた。先程の問いが意味のないものでないことは相手も承知のはず。挿れようとしないのは、ただの焦らしだろうと竜二は思うのだ。
「あう……、勃ってんなら、くれよぅ…」
 それはもう哀願になってしまっていた。情けない程に物欲しそうな声色を止めることができなかった。目の前にそそり立っている肉棒を欲することが、現状、発情しているような状態なのだから仕方がないことだと思う。動きにくいからお前から跨がれ、と半ば命令のように強い口調で言われてしまえば、竜二はひどく興奮した。目の前の相手はもうすぐ消えるというのに。当人もソレについて理解しているというのに。



 足手まといなのは二本の脚だった。
 数十分程前に竜二にドスを食らい、ブランとした足はただの玩具に過ぎない。その時はありえないほどの痛みを放っていたし、痛み以外の他のことを考える暇などまったくなかった。今でもその足はぬるぬるとホンフゥの体内から血液を奪い続けている。血は止まることができないでいる。むしろ、血を止める動きをしていないのだから当然だともいえるのだが。ただし今は痛みを感じることはない。それでも流れ出続ける血液の不足のせいでいつものような力はでない。けれどもまだ勃起はできているのだから元気なものだ。
 数十分前の事実。
 足をドスで落とした竜二は笑いながらホンフゥに阿片を嗅がせたのである。それが犯罪だと知っている。嗅いでしまったのは刑事のホンフゥで、嗅がせたのは犯罪者の山崎竜二。その構図は変わりはしないが、ホンフゥはそれを嗅いで痛みを感じなくなってからというもの、負の感情を感じることはなくなった。麻薬は悪いものだと分かっていながら、ひどく幸せになってしまったのである。悪は幸福を呼ぶ。足は相変わらず繋がってはいないけれども、痛みすら感じない阿片の威力は悪も正義もどうでもよくする程のもの。血ぬられたドスが地面に転がっている。竜二が笑っている。どうやらホンフゥの表情を見て痛みを感じていないことは理解したらしい。
「オメェは出血多量で死ぬ」
 短くそれだけ告げた。ああ、しぬのか。とホンフゥは何となく思う。阿片に侵された脳は幸せ以外を感じることはできないのかもしれない。死ぬことはどうでもいいと思った。ただ、目の前の竜二の目に敵意が失われたのは初めてだった。それに対して驚いていただけ。慈悲のカタマリみたいなやさしい目をして、竜二はホンフゥに言ったのだ。
「死ぬんだったら……テメェの感情に向き合ってみたらどうだァ?何がしてえ、俺に」
 その答えが今、乳首に噛みついた後シモの毛を舐め回すというようなことになっている。
 足は一本はもげていて、もう一本はぶらんとしている状況だが、ソレについて温かな血が流れ続けているので、冷めた時には少し冷たい液体になっていること以外に特に何も感じていない。逆に自分自身に素直になれる時なのかもしれない。血液についてはどうでもいい。
 ホンフゥが出した答えは、相手を浸食し尽くしたい。それだけだった。


110808と09

竜ちゃん小説(ラヴ!

メチャクチャな内容ですが、リクエストがあれば続くかもしれません。
内容としてはエッチだろうけどね。ははは、アホウ。
このジャンルはリクエストなんてまったくないと思われますが。

一応テーマ:スイートプールのEDテーマ
(ゲェム自体はまともにプレイしてません)
内臓系の印象(さすがニトロプラスの妹だよなあ!と)も文章に出せてれば、嬉しい。



竜ちゃんはもはやこれ以上ないです、というほどハマったゲームキャラ
けども初小説っていうね(笑)
最近絵をかいてないんで文章にしてみたんですけど、竜ちゃんぽくないのかなあ?とか思うけれども。まぁ答えはでませんよね。今更SNKとかね(笑)一部の少数にしかウケませんし。

しかし今年は りゅう という言葉に変に過敏じゃなきゃいいんですが。
もちろん松本龍事件があったからに決まっています!九州のりゅう、なんて超迷惑!


毎年8月8日、山崎竜二の誕生日。
何も、まったく、してませんでしたーーー。
しようしようとは毎年思うんだけどね、同人サイトにあるまじきウンコっぷり。気にするな。そんな感じです。


2011/08/09 01:16:00