明くる亡日

goz




*  蜂の巣にインスパイア

** 今まで想像できなかった男鹿の未来の姿を描く未来パロ


 背負う子供は気付けば着いて回る子供になっていた。
 気付けば子供は幼稚園に入るような背恰好をしていて、周囲からはどうこう言われたけれど、どうしてもこの子を幼稚園に入れる気にはなれなかった。だからと言って小学校に入れないで済むわけはないでしょう、と親や姉に言われるのは目に見えていたので、高校を出たらすぐに働くことにした。最初はアルバイト生活だったが、何故か二人の悪魔が手を組んだらしく、同じようににやりと笑って男鹿の前に現れて言った。



「就職先が決まった。明日からこの紙に書いてある場所へ行くように」



 渡されたわら半紙の悪い触り心地を感じながら、地図を渡されるまでもない場所であることはすぐに理解できた。ここは、数年前に行ったことがある。そして、家からは遠い。それは少し癪だったが折角持ってきてくれた仕事を、今のことの『不景気』なクソ世の中にブン投げるわけにはいかない。
 高校に通っている時はアルバイトもしていなかったし、何故か土下座させていたヤツが金を渡してくれたこともあったので、いらないと言ってもよこすものだから、時折もらうこともあったので、そう小遣いには不自由していなかったように思う。だが今は違う。生活というものは男鹿が思っていたよりもつらく厳しいものだ。そう感じるようになった分だけ、パンチ力が上がったような気がする。もちろん売られたケンカは買うので、共にある離れたくても離れられない子、つまりはベル坊が男鹿の元にいる理由になっているらしい。
 ちなみに、男鹿に仕事を持ってきたのはヒルダとアランドロンである。一体どんな仕事なのか。それは言わなくても解ると思ったようで、どちらも仕事内容については口を挟むことはなかった。もしかしたら二人とも知らないのかもしれない。仕事の内容というものを。だとしたら、やはりこの二人は悪魔と呼ぶにふさわしい生き物であると言えよう。
 何故ならば、


「お早うございます」
 男鹿が元気良く挨拶をした場所。そこは数年前に訪れたきり、しばらく来たことのなかった隣町にある火葬場であった。
 記憶どおりの山奥。そういえば人間が焼ける臭いはひどいものだと聞いたことがある。かなりの高温で焼くのだが、やはり人間の骨は残る。そして貴金属などの類も残るらしい。時にそれがバレていないと思い、焼け焦げた死体からソレを奪い、売りさばく役人などもいるなどという汚れた噂も聞いたことがある。それが本当かどうか、どうでも良かった。
「いいニオイ…」
 ベル坊が、やっと言葉を話せるようになりつつあるベル坊が目を輝かせている。ああ、そういうことか。どうやら悪魔もそれを見越してここにやったのだろう。ベル坊はしつこいくらいに「いい」を繰り返している。まだ簡単な言葉しか話せない。悪魔というのは頭が良くないものなのかもしれない。



 もちろん、火葬場なのだから死んだ仏さんを焼くのが男鹿の仕事だった。
 それは内容を聞く前によく分かっていた。つもりだったのだが、やはり面と向かって言われてしまうとひどく傷付くというか、がっかりするというか、どうしてか解らないが肩を落としてしまった。どうりで人気のない仕事のはずである。
 自分と同じ人間を焼くという行為はどうしても好きにはなれないような気がする。何千度にも上がる釜の中の温度は、人間の作ったものとはとても思えない代物であったが、いくらかだけ残した人骨と、その位牌を目の当たりにして、さらにこれは人間のやることではないだろう、という思いを強くした。
 男鹿、一日目の仕事内容。
先輩より仕事内容を見ているように言われ、燃やす屍骸を見つめていた。感想は、サキイカ。



「…どうだ?」
「な、にが?…すか」
「お前さんなら、数日の内にすげえ効率的なホネにし方、思い付くって聞いたんでサ」
 ああ、きっとヒルダのヤツがそんなクソみてぇーなことを言ったんだろなぁー。もはや直感ではなく感覚でそうであることを読み取った。というか、性格からみてもアランドロンは言わないでしょう。
 曖昧に返事だけを返して、男鹿は帰路に着いた。一日目なんて、きっと誰もがそのぐらいのもののはずだ。帰り道の車の中、ベル坊がはしゃいでいる中でいろんなことを考えるのは難しい。だから、どうしてヒルダが余計で意味不明なことを言ったのか。それを考えるのは家に着いてから、ベル坊が眠ってからにしよう。そう決めた。


*****


 ぐちゃぐちゃと、当然何度も道は逸れた。けれども辿り着いた先は、男鹿の笑顔がそこにはあった。どうしてこの男が満面の笑みを浮かべているのか。それは、
「何をしている、馬鹿者」
 …ぐげしっ。
 しっかりとヒルダの後頭部への蹴りは決まっている。ただ、笑顔のまま固まっている。それだけの話だ。
「仕事のことを考えろ。貴様にもヒントをやっただろう」
 そういえば、ヒルダの思惑を暴いてやろうと思ったことを、すっかり忘れていた。今、男鹿の手に握られているのはゲーム機のコントローラーだった。ドラクエ10をやっているうちにすっかり忘れていたのだ。今日は早めにベル坊が寝ついたあまりの嬉しさに。
「誰のお陰で、地方公務員になれたと思っている」
 発音はかなり痛々しかった。チホーコオムイン、そもそも悪魔がその言葉の意味など理解するはずもないのだ。だが悪魔が発音するソレは皆が憧れる職業に他ならない。特に、男鹿の年代では、もう一度・特に。



「効率的なホネにし方、なんて、俺は知らねえってんだよ」
「ほう、デキの悪い頭でも話は覚えていたか」
 いちいち一言多いのがこのヒルダという女の悪い所である。それも踏まえて数年を共にしている。だから何だというものでもない。この女はひたすらにベル坊のための悪魔であって、それ以外の何物でもないのだから。
 そんな女であっても、邦枝はどうして一つ屋根の下に暮らす必要があるのかとか、何か色っぽいことはなかったのか、などと会えば追及してくる。それらすべてが男鹿にとってうざったい時間以外の何物でもない。そんなくだらない時間を過ごすならば、一分でも一秒でも多く、ドラクエを愉しみたいと思うばかりだ。
 だから、今日のヒルダはひどく邪魔臭い。この女、宇宙の果てにトばしてやりたい。そう思いながら拳を握る。強く強く。してやったりな笑みで見下ろすヒルダ。浮かんだ身体に、やっぱり面倒になるな、と舌打ちを低く一つ。これぐらいではヒルダにはきっと聞こえていないだろう。もっとも、聞こえていようとも、男鹿にとってはまったく構わないが。
「その、坊ちゃまから授かった力を以てして、貴様は上手く活かせると思わんのか」
「……ん?」
 握った手はパリパリ、と低く小さく電流を伝っていた。


11.08.02

Sound of : 無双6 何かワカランけどxxxxx

峰倉かずやの新作、蜂の巣を買ってきて読みながら思い浮かびました。
蝿、という単語が本編ではないどこぞで何度か出たので余計に思い浮かびました。
巻末に、ドラマCDのCVが山崎の声が男鹿と一緒、というのでさらにギャーーーとなりました。


* 声優ヲタなどではありません。つーか声優殆ど興味ナスXネギなのにナスXX


まァ生まれた感覚ってのは、きっとこんなインスパイア、なんでしょう。
きっとギターサウンズに合う話になっている、と願いながら。(笑)

モチロン、これ続いてしまうような気がします。まぁレンアイ要素とかすべてありませんが。だから同人的にはどうなんだろうって思いますけど。エロとかもまったくないだろうし、グロもおおよそ、無さそ。続きがあってもどういう仕事をしているか、程度のものなので次回で終わりだとは思いますけどね。
でも、読みたい人なんてきっと、いねえ!!

だから、書くのを今わたくしは躊躇っているために、話を途切れさせたのです。いやマジで、負け犬の遠吠えなんかじゃない。

2011/08/03 00:10:44