〔とある、悪魔の手記。1〕


私は坊ちゃまを立派な悪魔として育てるべく、親となる媒体を探しに来た。


 手記はそこから始まっていた。悪魔の手記。ひどく心が躍る。古臭い手帳に書かれた文章は達筆で少しだけ読み辛い。そんなことを気にさせない魅力が、『悪魔』という言葉の中には含まれている。

私が貴方と逢ってしまったのは、運命だったのでしょう。互いにそう感じたのは間違いありません。なぜなら貴方の瞳が私の心を射抜いていたからです。


 最初の破壊の文句を読み進めていくうちに、どうしてか話の流れは甘い方向へと進んでいったのが不思議でならない。悪魔も思い悩むことがあるのだろうか。

二人で入るベッドの暖かさにももう慣れました。貴方の温もりがなければ私は不安な夜を過ごすのです。貴方の唇の温かさとやわらかさを私は知っている。貴方の激しさも。


 読み進めるうちに、官能小説のような文章にとまどう。最初の地球を滅ぼすとか、そういった話はいったいどこに消えてしまったんだろう?もはや最初の名残はない。ただ悪魔も人間におぼれることがあるということだけが、この手記には艶やかに記されている。

貴之。私は貴方がいなければ、自分達のいる世界ではない地球で、こんなに楽しく生きられるなんてこと、知らないで済んだだろうと思います。けれど、貴方に会えてよかった。心からそう思っています。そしてこれからもずっと一緒に貴方と一緒に。二人が思いを誓ったあの家で



 途端、悲鳴と手記を破る音。

「頼むっ!!! 頼むからこういう気持ち悪い文章とかワザと置いて歩かないでくれっ!!」
「(許されるならば、スカートとかで歩くのもやめてくれ!)」
 手記の書き手のアランドロンに向けて古市貴之少年が怒りのままにぶつけている所だった。

「アラ嫌だ、私ったら……
 手記をお母様とお父様の寝室に置き忘れてしまったかも。



 三日ほど前。」




 貴之少年は、数日間、家族間の冷たい空気が漂っていたことに、やっと気づいた。



11.06.20

おひょ〜っ、古市使いやすいです笑
ちなみに手記。1としてありますが、また書くかもしれませんってだけのことで。特に意味はないです(笑
アランドロンの意味不明さと古市プッシュな感じには笑わせられてますので。カップリングとかではないだけど、それに一番近いやね(違っ)
本当はもう少し凝ったつくりで書きたいと思ったんですが、時間と機会があれば、ってことで。

2011/06/20 09:07:35