猫を撫でていると、日々の生活に追われる日々を忘れそうになる。
 それは和みという感覚で、和みを忘れてしまったらきっと自分は自分でなくなってしまうんだろう。だからこそ、「石矢魔最強」などと言われてきたのだろう。
 最強。悪い言葉じゃない。むしろ、男としてはきっと最高のホメ言葉で、それを欲しいがためにアイツらは身を呈して頑張っているのだろうけど、「石矢魔最強」に何の意味があるのか。そんなこと分からない。
 今、目の前にあるのは石矢魔最強なんてどうでもいい、というか全く分からない、そんなことには関係ない世界に住んでいる、猫。

 男鹿はいつものように猫にコロッケを与えた。べる坊がそれを見下ろしている。
「変わったヤツだな、オメー。コロッケ食う猫なんてよ」
 食べている間の猫は気が立っているから触らないようにする。怒ってコロッケを残したらもったいない。食べている姿だってこんなに気合いが入っているじゃないか。それは和む光景、他に何と言おうか。
「野菜、食えんのか」
 低い声が男鹿の耳に届く。悪意はないようなのでただ短く「ああ」と返事をしておいた。相手が誰かなんて今この瞬間に、どうでもいいだろうって、そう思ったのは相手も一緒だったんだろう。和みの時間はまだ続いている。あとに響くのは猫がふがふが言いながらコロッケを食い散らかしてるサマだけ。
「俺と同じ、好物………あ、」
 男鹿が顔を上げた先に、石矢魔最強と呼ばれる男の姿が見えた。しゃがみ込んで猫を見つめて微笑んでいる。確かに強そうな身体をしているが、その様子ではあまりに腑抜けのようにも映る。確かに前に闘った時、この男は強い、そう思ったが、それすら夢だったように思える程、目の前の男には覇気とか気合いとかいう言葉は不釣り合いだった。ただのガタイのいい兄ちゃん、という単語がぴったりだ。そう思った。
 ふと、眼が合う。互いが互いを認めた。これ程近い距離にいて、互いを分からずにいたなんて、不器用な俺達らしいじゃねえか。なんて思いながら浮かべてしまう笑い。それは互いに言葉なんてなくても分かってしまうもので、一人が笑いだしたらどっちも声を上げて笑った。殺伐とした雰囲気ではないから猫は逃げようとしないではぐはぐとコロッケを喰らってる。



「よう、男鹿辰巳」
「…東条。」
 猫を挟んで絡む視線は間違いなく敵対に値するそれ。それでも殺気は生まれなくて、猫は顔を洗っている。
 互いの胸中には(猫、好きなんだろうな)という思い。だがそれを言葉にするような陽気ではない。猫はやがてそこから離れて行った。単純に腹が膨れたからそこにいる必要が無くなったんだろう。それこそが猫が猫である所以のような気もする。少し、さびしい気もする。
「ケンカ、しようぜ」
 先に言葉を紡いだのは男鹿。その言葉を待っていた。そして、いつでも待っている。東条はにやりと笑う。猫を見つめる目とは正反対の目をして。もちろん笑い方だって正反対。それでもこの東条には悪意や覇気というものが全くない。ただ子供のように単純に愉しいものを求める、それだけの目をしたまま。
「いいねぇ、じゃ、いこうか!」
 上着を脱いだのはどっちが先だったか。ばさり、と衣ずれの音と拳が空を裂く音はほとんど同時。


11.06.15

そんぐおぶ森山「例えば友よ」


男鹿と東条の関係って好き。

ついでに男鹿のアニメ版のコロッケ設定がまたカワイくて書いてしまった(笑)
まぁこの二人って結構似たとこあるんで、似たもの同士ってトコで仲良くなれそうな部分もあるんだけどね。
猫のコロッケを囲んで和んだ雰囲気から急に〜…というのはこの二人ならでは、でしょう!



本当は某ニトロの燃txt様(知る人ぞ知る)のようにカコイイバトルテキスト書きたい思いがあったんですが、
まぁ待ってます!ていう声があれば考えます(笑)バトル文章やバトルマンガは書きたい思いがあるので。
とりあえずべるぜバブで今の所ヤヲイカプはありえないということで(ウチでは)。
でもヨイ話友情話はアリだと思います。古市はどうかと思うけど、ミッキー三木とかね(何その呼び名)

2011/06/15 21:02:41