闇夜のなか、緋色のバイクは曲がりくねった石畳の路地をも疾風のごとく滑らかに駆け抜ける。そして世界各地の道という道を繋ぐ道路、【ワールド・ルート】へと出ようとした。しかし、街から出ようとした彼らの行く手を阻む者たちがあった。ちょうど街外れの廃れた工場跡の前の通りに差し掛かった辺りだ。
十数名の男たちが徒党を組み、緋色のバイクの前に立ちはだかる。彼らはいまだ昇り切らない大きな月を背に立っていた。

「悪いんだが兄ちゃんたち、ここは通せねぇよ」

一歩前に出た一番体格の良い男が仁王立ちで宣言する。手には木刀を持ち、それを肩に掛けていた。
片足をついてバイクを止めた夜重の背中でボソッと、頭悪そう、と呟く声がした。彼は苦々しげに笑いながらそれには答えず、数メートル先に現れた男達に向かって声を張り上げる。

「なんだ? 旅人から通行料でも巻き上げてんのか?」
「いやいや、んな酷なことはしねぇよ。 旅人なんて大して金は持ってねぇからな」
「わりかったな、一文無しで」

笑顔だった夜重の眉がひくついた。確かに彼の財布は現在大変風通しが良く、その気遣いはありがたいのだがどうにも苛立たしい。
しかし彼は気を取り直して顎を上げる。そして見下すように、目の前の男に嘲笑を投げかけた。

「なら何だってんだよ? 用件だけなら聞いてやらねぇこともないぜ?」
「な、なんでおめぇがそんなに偉そうなんだよ! ここはオレがジャイアニズムな台詞を吐いてお前達を困らせるところだろ、明らかに!!」
「あ、そーなん?」

夜重の飄々とした態度に男は完全にペースを乱され、憤慨していた。彼は地団太を踏みながら半ば叫ぶように言う。

「とにかく! お前等はここを通れねぇんだよ! なぜならオレたちに捕まるからだ!!」
「お頭お頭、でもこいつ等本当に魔法使いと魔法帽なんですかねぇ。 職業案内所の親父は確かにそう言ってましたけど・・・」
「それは戦ってみれば分かるってもんよ! もし違っていたとしても、その女は結構高く売れそうだしな!!」

不安げに問うてきた連れ巻きを男は豪快に笑い飛ばす。

「ああ、つまり人身売買業者さんね。 あの職業案内所のオッサン、やっぱ百発くらいぶん殴っておくんだった」

ニヤリと笑んだ夜重の八重歯が月光を反射し妖しげに光った。彼はバイクのハンドルに腕を乗せ、ダラリと体を凭せ掛ける。

「プロに高額落札の保証がもらえたっぽいよ。 さてハノン・ハイヴさん、ご感想は?」
「黙れ」

地を這うかのような低い声で咎められ、夜重はクシャリと顔を歪めて苦笑した。けれどすぐに顔を上げ、改めて前方の男達を見据える。

「さて。 で、こいつ等どうしよっか?」
「・・・・」



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