ししと、こじし





研究者共が18歳のスコールを取り戻す手段を見つける為に会議を始めてしまったものだから、後片付けもせずに子供のスコールを連れて研究施設を出た。
この子供を連れて、あんな場所に長居はしたくなかった。しかし、あの場所で彼奴が消えたことも事実で。

そう言えば、スコールの着ていた服は此奴が着ていたかのようにずり落ちていた。
ということは、現在のスコールと過去のスコールが入れ替わったという可能性は低いだろう。ならば、スコール自身の時が巻き戻って、縮んだのだろうか。

…科学者でも研究者でも無いオレが幾ら考えても仕方ねぇか。んなことよりも、これからどうすっか考えねぇとな…。
まずは、此奴のことを知らなければならない。恐らく、これから面倒を見ることになるであろうことは明白なのだから。


「お前、いくつだ?」
「いくつって、なにが…?」
「歳だよ、歳」


急いで出てきたからこそ気にはしていなかったものの、よくよく考えればスコールは素っ裸だった。施設を出る前に彼奴の着ていた服なら回収していたが、幼児の服など持っているはずもなく。
ものは試しと、スコールのインナーを頭からすっぽり着せながら、問いかける。

ばっ、と両手を上げてインナーを着る様は実に子供らしく、愛らしい。小首を傾げて見上げてくることも相まって、それはもう地に降り立った天使のような無垢さを醸し出していた。
此処に幼児好きという性癖の持ち主が居たら大変なことになっていただろう。

…ワンピースサイズか。タンクトップなんだか半袖なんだか知らねぇが、ジャケットの下が薄着で助かった。
ぶかぶかではあるが、手はちゃんと出せる上に下半身はカバーされていた。胸元が大きく開いたデザインのせいで、上半身は殆ど隠せないが。
服として隠すところは隠せているのだから大丈夫、と自分を納得させつつ、万が一にも誘拐されないように絶対に目を離さないと誓ったのだった。

そんなことを考えていれば、スコールが嬉しそうな声音で答える。


「サイファーのひとつ下だよ!」


キャッキャと答える姿を見ても、何が楽しいのか全く以て分からない。
…かわい………違う。こんな18歳が居てたまるかよ!
一瞬、合法ショタなどという言葉が脳裏を過ぎったが、何をそんなに心配しているのだろうか自分は。


「あのなぁ…オレは今19だ。お前は明らかに18じゃねぇよな?ほら、何歳だ?言ってみろ。」
「んー、…僕、よくわからない。」


分からない?そりゃどういうことだ…?
此奴にはこの年齢相応の “スコール” の記憶がある筈じゃねぇのか?

しかし、本人が分からないのなら仕方がない。自分が思い出すしかない、この姿の彼を。その時代を。
そうして答えに行き着くまでに、そう時間は掛からなかった。何故なら、大きな節目の時期だったからだ。
重なるのは、エルオーネが失踪した時期のスコールの姿。この目の前の子供は、あの頃と同じ姿をしている。

そこで初めて、違和感を覚えた。

こんなに明るく笑う子供だったろうか、スコールは。
こんなに無邪気な表情を見せることなどあったろうか。
…オレは、こんな顔で笑うスコールを知らない筈じゃねぇのか?だって彼奴は、エルオーネが帰ってくるのをずっと待ってたんだ、独りで。

あの頃のスコールにとってエルオーネは世界そのものだった。唯一の、家族。安らぎ。
それを失った彼奴は暗い面持ちで、エルオーネが帰ってくることを信じていた。縋っていたのだ、目の前から消えても尚エルオーネに。
自分の記憶違いで無ければ、この子供の明るさはおかしい。異常だ。


「分かんねぇならいい。ただ、お前…誰か大事な奴のこと、待ってたりしないか?」
「まってる?だれを?」


純粋な、瞳だった。
本気で分からない、そんな表情だった。
もし忘れているのなら、思い出させる必要は無いのだ。研究施設の人間が此奴を元に戻す為に奔走しているのだから。それが失敗しない限りは、この子供は18歳のスコールに戻る。
それなら今の此奴に、エルオーネに置いていかれたなどという、そんな寂しい感情を思い出させる必要なんて、無い。


「いや、違うなら─────」
「もしかして、エルおねえちゃんのこと?」
「お前、どうしてそれを…!?」


…オイオイ、心当たりありまくりじゃねぇかよ!地雷踏んじまったか?
焦る自分に相対するように、至って平静なスコール。こういう所は、彼奴と同じだなどと逃避じみた思考に陥る。
だがしかし、そんなことも吹き飛ぶような衝撃を前にすれば、思考は止まり言葉は出なかった。
小さな口から発せられた、一言。















「僕、ぜんぶ知ってるよ?」


知ってる?
何を?


「エルおねえちゃんが居なくなったことも。りゆうも。」


エルオーネが居なくなった理由?
それは、アルティミシアの一件の最中に知った筈だろう?


「皆といっしょに、魔女とたたかったことも。ぜんぶ、知ってるよ!」


思考停止の理由。
それは、小さな口が紡ぐ大きな矛盾だった。
子供の彼が、知るはずの無い出来事を記憶している。しかし、記憶していることは事実で。
ただ、おかしいということだけが自分に分かる唯一のことだった。だからこそ、確認したかったのだ。

目の前に居る子供は、一体何者なのかを。


「お前、スコールか?」
「…うん。」


初めて子獅子と邂逅したときの台詞を、もう一度繰り返す。
彼もまた、同じように繰り返す。
しかし、その先は違っていた。


「でも、僕は “スコール” じゃないよ。」


子獅子は確かにそう言った。
獅子の記憶を持ち、しかし獅子の子供の姿をした、獅子ではない何者かなのだと。

此奴は、スコールだ。だが、 “スコール” では無い。その言葉の通りだった。
記憶があったとしても、此奴は彼奴じゃない。身体と同じく、精神は子供のスコールなのだろう。
あの頃と違うのは記憶の有無。
恐らく、過去のしがらみを振り切った記憶があるからこそ、今の此奴は明るく居られるんだろう。















ニコリと無邪気に笑いかけてくるその顔が、リノアに向けていた微笑みと重なって見えた。










【後書き】

読みづらくてごめんなさい!!!m(_ _)m

幼児感を出すべく、極力平仮名表記で台詞喋らせてます。所々漢字なのは、余りにも読みにくいからです(汗)
そもそも子スコさんの口調分からない…(泣)
というか、サイファーさんは通常状態なのにも関わらず口調分からないし…ウッ頭が()

これまでに色々伏線貼ってますが、この大筋では回収しません。回収なんて出来ないのです!!!(((殴ゴメンナサイゴメンナサイ



取り敢えず!
このお話、保護者サイファーさんと子スコさんで遊ぶために作ったお話なので!その為の基盤みたいなストーリーなので!(必死)

突発的に子スコさん書きたい!ってなるんですけど、設定に時間掛けてしまうタイプな私は先に設定作っておかないと書かないなぁと思いまして。書いた次第です。



やっぱり、ラグナパパに子スコさんを見せてあげたいじゃないですか(何番煎じだよ…)でも私もやりたい!!!

2016.03.21





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