動力源







今日もあいつはビシッとキマっている。
黒を身に纏い、静かに働く様はいつ見ても美しい。

幾つもの情報を受け取り、整理、熟考の末に最善の指示を出す。
頭に入れてある膨大な知識を引き出し、投げかけられる質問の全てを素早く処理する。



あいつが居るだけで、仕事の回り方は格段に早くなる。

だが、その代わりに。

それ相応のエネルギーを使っている。






あいつはすぐに無理をして倒れやがるから、どれだけのエネルギーを使っているのかを把握しておく必要がある。
そして、倒れる前にエネルギー補給をさせてやらねばならない。

それが、俺の役割。



ただエネルギー補給をさせるというだけのことでも中々難しい。
重要な役割を担うあいつを休ませれば、その分仕事が遅れてしまう可能性が高いのだ。

そこで俺が、仕事が遅れないようなタイミングを見はかってやる。
エネルギー切れになるまで、あとどれだけもつか。
あいつが居なくとも、暫くは仕事の進行が可能か。
その他諸々の点を踏まえて、あいつを休憩させてやる。

仕事上ではどれだけ有能であっても、一度スイッチが入ってしまうと休むことが出来ない。
根本部分では案外不器用なのだ。










『そろそろエネルギー補給するぞ。』
『まだ平気だ。』

そんなことねぇだろ。
表情は顔に出ねぇくせに、限界に近いかどうかはすぐに分かる。
自分で気付いてねぇのか、それとも気付かねぇようにしてんのかは知らないが…せめて、タイミング見はからって声掛けてる時にくらいは言うこときけよ…。

『そう言って、これまでに何度倒れてんだったか…教えてやろうか?』
『………いい、その必要は無い。』

気まずそうにしてるけどよ…お前そんだけ何度も無理してんだぜ?
いっつもいっつも熱出してぶっ倒れやがって…。

『前科があること自覚してんなら、大人しく俺の言う通りにしろって。』
『………部屋に戻れば良いんだな…?』
『そういうことだ。オラ、行くぞ。』

腕を掴んで半ば強引に連れて行く。
タイミングを見はからって、とは言ったが…今日はもうこいつの出番はないと見ていいだろう。
そう思ったからこそ、今日はいつもより早めながらも声をかけたのだ。

一晩、しっかり補給してもらわねぇとな。










俺達には役割があり、定位置があり…どちらか一方が欠ければ機能しなくなる。

こいつが居なけりゃ、俺がここに居る意味はない。
俺が居なけりゃ、こいつはぶっ倒れちまう。

互いに互いを必要としている。
…いや、他に面倒見れる奴が居れば…俺じゃなくてもいいのか、こいつは。
それでも、こいつの隣に居られる間は俺がきっちり面倒を見てやるつもりだ。



放り出すようにしてこいつを定位置に寝かしてやる。

『さぁ、朝までには元気になって貰うぜ?』
『………さっさとしろ。』

可愛げのねぇ奴。今から何するか分かっててこれだ…。
まぁ、今に始まったことじゃねぇか。
纏っているものに手を掛け、お言葉通りにさっさとひん剥いてやる。

『っ…!おい。もう少し丁寧に出来ないのか。』
『お前がさっさとしろって言ったんだろうがよ。そんなに優しくして欲しかったのか?』
『…うるさい。俺はさっさとしろとしか言ってない。』

…ご機嫌斜めらしい。
こりゃ、手早くした方が良さ気だな。

『分かった。お前の言う通りにしてやるから大人しくしてろよ?』

さらけ出させたそこに─────。
















「おい待て。」
「何だよ、今からがいいところじゃねぇか。もう少しなんだ、続き話しても良いだろ?」
「良くない。全くもって良くない。」

何がそんなに気になるんだ?
引っ掛かる要素なんてあったか?

「あんた、夢で見た『充電』の話だって言ってたじゃないか。」
「ああ。だから…夢の中のお前は携帯端末、俺がその充電器になってたんだよ。そんで今から『充電』しようと───」
「それのどこが『充電』に繋がるんだ。そもそも擬人化されてるのに、何をどうやって充電するんだ。」






「だから、今からナニをどうやって充電するってところだろうが。」






「……………は?」
「今から充電開始ってところで話のコシを折るなよなぁ?」
「…………………………。」

お…?
返答がねぇが…なんだ、キレたのか?

「…っんの、馬鹿!何考えてんだ、あんた!?」

キレてるんじゃなく照れ隠しか。
耳が赤い上に…身体が小刻みに震えている。
睨まれても全く怖くないどころか、ぷるぷる震えながら声を荒らげてるお前なんて小動物にしか見えねぇんだが。

「…まぁ要するに、ナニのことだな。」
「黙れ、この万年発情期!」

兎か、俺は。
カッとなると、俺に対してはすぐに罵倒するがな…それで自分の首締めてばっかりだぜ、お前。
もう少し学習しろって。

「へぇ?んじゃ、俺は万年発情期だから毎日シても良いよな?」
「!?…良いわけないだろう!」
「あーあ、夢の中のお前は素直で可愛かったのによぉ…これだもんなぁ。」
「………だったら、ずっと寝てろ!」

お、拗ねた。
俺の夢の中に出てきたスコールに嫉妬してんのか?こういうところは可愛いよな。






「お前な…そりゃないぜ。」
「なんだよ、俺が悪いみたいな言い方するな。」
「おいおい、そもそもはお前が発端だろうが。恋人になってよ…いつも隣に居るのに、全然させてくれねぇんじゃ生殺しだぜ?」
「………。」



だんまり…この調子なら揺さぶればイケる。



「お前にがっついて傷付けたり、仕事に響かせたりしたらいけねぇから我慢してよ…俺様が健気にお前のこと想ってるってのに、お前からは拒絶されてばっかりじゃねぇか。」
「…別に俺は、拒絶なんかしてない。」



あと一押し。



「だったらもう少しさせてくれそうなもんだけどな…行為で全てを決めるわけじゃねぇが、お前やっぱり無理してんじゃねぇのか?」
「なっ…そんなことない!」
「そうは言うけどよ…。」

「…分かった。」



きた。



「今晩…いや、今からでも構わない。無理してないことを証明出来ればいいんだろ?」
「おい、俺は無理にお前としたいわけじゃ───」
「だから、無理じゃないって言ってるだろ!さっさとするぞ。」

強気な言葉とは裏腹に、不安げに揺れる青色。
俺が離れていくんじゃねぇかってのが怖いんだ。そんなことある筈ねぇのにな。

俺の腕を掴んで部屋へと導く後ろ姿が愛しくて堪らない。少しばかりイジメたくなるが、それも愛故。








今日は楽しめそうだ。










【後書き】

何だこれ、な話でごめんなさいm(_ _)m

いや、書いてる私が何だこれって思ってるんだから…そりゃ、何だこれってなりますよね。



擬人化ネタは夢オチです。サイファーさんの。
あまりにもスコールさんがさせてくれないので、ムラムラしちゃったんじゃないかな!?()

ノリ的には、依存症と同じなので…依存症のお話で出てきた2人だと思ってます( ˇωˇ )

とにかくサイファーさんに『ナニをどうやって充電するんだろうが』って言わせたかった。『ナニ』っていうキーワードを連発させたかっt(((斬ごめんなさい後悔はしてないけど反省はしてます←



これを書いていて終わりだなって思いましたね…。
何って私の頭ですよ(震え声)
白い充電器が黒いスマホにブスリ♂するのを見て出来たお話ですからね、これ。何考えてるの私…。

あ、このお話のタイトルが動力源となっていますが…。
前半(擬人化)の2人の場合、スコールさんの動力源はサイファーさんとナニすること(充電)です。
後半の2人の場合、サイファーさんの動力源はスコールさんとナニすることです。
要はそういうことです(迫真)

多分、翌日のスコールさんはへばっていることでしょうが…サイファーさんは喜々としてお世話をすることでしょうね( ˇωˇ )

2015.05.03








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