太陽の光がカーテンの隙間から差し眩しさから目を覚ました。しかし体がなぜか思うように動かず、倦怠感が押し寄せる。そして追い打ちをかけるように頭痛がしてきた。なんとかして立ち上がろうとするが力が抜けて立てず、すぐ倒れる。
風邪引いたか…。
床に倒れ込んで体は限界に近かったが頭の中ではそんなことを思っていた。だんだん意識が薄れていく中、いつまでたっても降りてこない俺を心配したのか、呼びに来てドアを開けた瞬間目に入った光景に焦った弟の声がした。
「…ん…、だるっ…」
目が覚め、少しの怠さは残っているが朝よりはマシになった体を起こし、まわりを見渡す。窓から見える太陽は少し西に傾いていた。
結構寝てたな…。
っちゅーかまだ体怠いし。でも頭の痛みはあらへんな。
ふと携帯が視界に入り開く。
「うおっ!以外にきとる…!」
財前にユウジに千歳、小春などレギュラー全員からメールや着信がきていた。(金ちゃんは持ってへんから財前のメールとセットやったで!)
あかん、嬉しすぎるわ。
ちゃんと大切な仲間と思われてるんやなぁ。
そして一番多かったのは…
「白石…。」
『大丈夫なん!?』
『謙也居らんくて寂しい…。』
『謙也ー!!』
『愛しとるで』
など。
最後はもう風邪とか関係ないが。
めっちゃ嬉しすぎる。
…あかん、メール見てたら白石に会いたなってきた。
風邪を引くと人が恋しくなると言うが本当だと思う。現に今白石に会いたいと思っただけで胸がきゅーっとしめつけられるような感じがした。
「…白石…、くらのすけ…。」
「謙也呼んだ?」
「っ!?」
はっ?白石…?
なんで部屋に居んねん!
名前を呼んだ瞬間、ドアから出てきてびっくりしていると何かが入った皿を持ちながら近づいてきた。
「お粥作ったで。食べれる?」
「おん。…ってちゃうわ!ちょっ、お前学校どーしたん!?」
「謙也に会いたくて早退してきてん。」
「はあっ!?先生とかはっ、」
「あぁ、勿論謙也が心配なんで早退します、言うてきたで。」
なんでそこで笑顔になんねん。
俺が呆れていると、今度はにやけた顔でこちらを見てきた。
「な、なんやねん。」
「謙也さっき俺の名前呼んだやろ?」
「っ!よ、呼んでへんっ!空耳や!」
さっきの聞こえてたんかっ
めっちゃ恥ずいねんけど……。
顔がだんだん紅潮していくのがわかる。
あかん、なんかクラクラしてきた…
「…謙也!?」
焦る白石をよそに俺の意識はプツンと切れた。
「…ふぁあ、」
何度目かの眠りから覚め、伸びを一つ。まだ覚醒しきれていない頭をなんとか動かし、整理する。ふと顔を横に向けるとそこには白石の綺麗な顔が。びっくりしたが、すぐに冷静になる。
何時間寝たんやろ。
まだ明るかった空はすでに闇に染まりそうだった。熱はどうかと額に手をのばすとそこには新しい冷えピタが貼ってあった。親も翔太もまだ帰ってきておらず、必然的に白石が貼ってくれたとなる。
俺が寝てる間ずっと居てくれたん…?冷えピタとかも、やんな…。
そのお陰か、大分マシになった体。看病をやらせてしまった罪悪感にかられるが、ありがたい気持ちがそれ以上に大きく、自然に頬が綻んだ。
「蔵…ありがとな…。」
まだ風邪が治りきっていない体でのせめてものお礼として、頬にキスをした。
「…謙也からちゅーとか嬉しいわぁ。」
急に声がしたと思い見てみると笑っている白石。
「起きてたん!?」
「おん。謙也どないするんかな、思てな。」
「…あほ。」
「謙也かわええ。」
再び頬が赤くなる。
でも今日は感謝しとるし、なんや…甘えたい気分やし…。
「蔵、」
「ん?」
「看病してくれておおきに。んで…、俺も会いたい思ってん。めっちゃ嬉しかった。もう一つお願いがあるんやけどええ?」
白石はびっくりしていたようで少し停止していたがすぐに戻り、嬉しそうにええよ、といった。少し恥ずかしかったが、たまには素直にならないと、と思い、赤くなりながらも言葉を紡ぐ。
「あんな…今日、ず、ずっと一緒に居ってくれん?」
さっきと同じように停止していたが、またすぐに優しい笑顔で、
「ずっと一緒に居るから。」
俺は赤い顔を隠すように
白石に抱き着いた。
end
2010.10.10