なんやあれ、なんやあれ……!
「女の子となんで帰ってるん…!?」
今日も俺は、恋人の白石と帰るつもりだった。けれど白石は今日は一緒に帰れへん、と断ったのだ。
いつも嬉しそうに俺と一緒に帰る白石が断ったのはびっくりした。けれど、俺も無理やり一緒に帰ることはしたくないのでわかった、と一言いい通いなれている通学路を一人で帰った。
っちゅーか一人って案外寂しいもんなんや……。
そう思った俺は心に残った寂しさを紛らわすために早歩きで家とは逆の駅の方向へ歩いていった。
その時白石とその隣を歩いている女の子を見つけ、冒頭に戻る。
隣の女の子は学年でも一位を争うくらい可愛く、性格も明るくてモテる。白石と一緒でも見劣りはせずむしろお似合いだった。
あの女の子と一緒に帰るために俺との断ったんかな…、せやったら……あかんっ、こんなこと考えんともっと楽しいこと考えな…。
クラスでのこと、部活でのこと、その他いろいろなことを考えたが白石の笑顔や、汗を流しながら完璧なテニスをしているとこ、俺のギャグに笑ってくれてることなど白石のことしか頭に浮かばず、一向に気持ちは晴れない。それどころか、どんどん沈んでいくばかり。
「…っ、なんであんな笑顔やねんっ。」
白石と女の子が笑いあっている光景を見て涙が出そうになった。
まるでお前は白石と釣り合わないと言っているようで胸が苦しくなる。
泣くな…泣いたらあかん…
「…謙也さん…?」
涙を我慢しているとふと俺は声をかけられた。振り返ってみると財前だった。
「何してはるんです?それに部長は?…って謙也さん!?」
急に財前が焦ったような声になり、何だろうと思ったが、頬につーっと何かが伝う感触がした。
俺…泣いてる…?
「……、とりあえずついて来てください。」
財前に手を引っ張られ近くの公園に連れられた。もう日が暮れ、人がいなかった。
「何があったかは知らんけど、泣いてもええですよ。ってもう泣いとるんやけど。」
その言葉に一気に涙腺が崩壊し、財前に縋り付くように泣いた。
「…っく…うぅぅっ…ざい、ぜ、んっ」
「……何が、あったんすか。」
そう俺に聞いてきた財前にさっきの出来事を話した。
「部長が…浮気…?」
話終わると財前が絶対ありえないとでもいいたそうな顔で言葉を発した。
「…おん。」
「(あの謙也さんにベタぼれの部長が…!?)何かの間違いやないッスか。」
「間違いやあらへんっ!」
だって女の子と楽しそうに歩いていたんや。誰だって不安になって浮気か!って思うやろ。
「はぁ…(…部長に連絡しとこ)」
「なんでため息ついてんねん!」
「絶対ありえへんッスから。」
「その自信何処からくんねん。」
「(…めんどっ)あほやないッスか。」
「あほちゃうわ!」
「あほや。第一になんで部長の事信じてあげへんのですか。」
「っ…俺だって…信じてへんのとちゃう。白石は頭ええしスポーツもできるし、なにより優しくてかっこええ。それに俺は白石のこと好きやから離したくないねん。やけど、そうゆう白石だからこそかわええ女の子のほうがええのかなって、男の俺が付き合っててええのかなって思うんや。」
「だそうですよ、部長…。」
「そう、そうなんや…って、はあ!?」
びっくりして後ろを見てみると白石がいた。…ニヤニヤしながら。
いつからおってん!っちゅーかさっきの聞かれた……?恥ずっ!
俺は顔を赤くして俯いた。
「財前、おおきに。」
「いえ別に。それじゃ俺はこれで。」
一言言うと、財前は帰った。
白石に連絡したんは財前!?
いつ連絡したんや!?
「謙也がそないなこと思っとったなんてなあ…。」
ニヤニヤしながらつぶやき俯いている俺に近づいてくる。俺はゆっくり顔をあげ白石をみた。
「不安にさせてすまんなぁ。」
白石は俺を抱きしめる。抱きしめられる瞬間にに顔が見えたが、それはニヤニヤした顔ではなく泣きそうな顔だった。
泣きたいのはこっちやっちゅーねん。
「気付かんくてほんま堪忍な。」
「…白石のアホ。」
「アホでええよ。」
「スケベ、変態、エクスタ野郎。」
「おん、それでもええ。ほんまにごめ
ん。」
どんなに文句を言っても白石は優しく受け止めて、俺に謝るだけだった。
やっぱかっこええな白石…。
俺、許してまうやん…。
「あの女の子とは何もあらへんよ。ただ委員会で買い出し頼まれたんや。」
「…おん、わかっとる。俺もごめん…。」
「おおきに、謙也。」
白石は俺に微笑むと更にきつく抱きしめた。
「白石……く、ら…大好き…。」
「っ!…俺も…、愛しとる。」
俺達は顔を見合わせ微笑むと、白石からのキスに静かに目を伏せた。
(謙也、もう一回くらって呼んで!)
(あかん、恥ずかしいっ)
(お願い!)
(………く…くらっ)
(…エ、エクスタシーっ!)
end
2010.08.29