カッカッと先生が、チョークで黒板に文字を書く音が響く。それを皆一生懸命ノートに写している。俺もそん中の一人。早めに書き終えた俺は隣をふと見た。俺の恋人、忍足謙也は寝ていた。

今は世界史の授業中。世界史が苦手な謙也にとって聞いてるうちに眠くなったんだろう。

寝顔、かわええなあ…。

頭を撫でたい衝動にかられたがさすがに今は授業中なので抑えた。

こんなに近くで寝顔を見れるんや。 うらやましいやろ財前っ!はっはー!
(喧しいッスわ。by財前)

財前に心の中で自慢していると、謙也が小さく声を漏らした。


「ん……んぅ……。」


なんやねんこれ…。
可愛いすぎやろ…っ!

ニヤニヤと緩む頬を隠し、いったんさげた顔をもう一度あげ謙也の寝顔をみた。ブリーチしているのにあまり痛んでおらずふわふわした髪に伏せられた目、長いまつげにピンク色のふっくらした唇は俺にとってやばいくらいの殺傷能力を持っていた。

あ、あかん……鼻血出る…っ


「ん…」


起きたかなと思い、見てみると寝ていた。そしてまたにやけだす俺の顔。

至福や、俺の至福…!
財前が居ったら"部長、キモいッスわ"とか言われるんやろな。まったく生意気な奴や。

そんな事を思っていると、また謙也が声を漏らした。


「…く、ら………ん…」


「…………。」


あぁ、何なんこれ。拷問か。
授業中やからって何も出来ん俺に対しての拷問やろ。
寝言で俺の名前言うんは反則や…。

寝言で"くら"と呼んだ謙也は小さく微笑むと、またすやすやと寝に入った。俺はその横で体をふるふると震わしながら悶えていた…。周りの人にとっては奇妙な光景だろう。しかし、謙也に意識が向いているので気にならなかった。

微笑んだっちゅー事はええ夢でも見てるんやろ。

そう思ったらなんだか胸が温かくなり自然と謙也の頭を撫でていた。

かわええ寝顔を独占出来る俺は幸せもんやな。


「愛しとるで、謙也。」


そう謙也だけに聞こえるように小さく呟き、また授業に集中した。




end


2010.08.12


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