「黒猫、何をやっている」

突然聞こえる声にビクッとする。
いつの間にか、レニが立っていた。
「あわわわわ、これはですね…」
カイルは焦って私から離れた。
「もういいから。お前は下がれ」
「は、はい!ですがレニ様、こ、これはですね、私は別に姫様に何も…」
「あぁ…セイジュだろ…。こいつの傍を離れた俺が悪かった。いいからお前は部屋に戻れ」
「わ、分かりましたぁ!」

バタバタとカイルは部屋を出ていく。
レニと二人っきりになったリビング。
「ごめん…なさい」
涙がポロポロこぼれて止まらない。
怒られるかと思ったのに、レニははだけた胸のボタンを閉じてくれた。
「遅くなって悪かった…」
レニの身体が私を包む。
「…お前は俺のものだ」
「…うん…」
レニの鼓動が聞こえて、安心する。
痛い程に強く抱きしめられる。
「もう…お前の傍を離れないから」
「…うん」
「…くっ…もう二度と…絶対にお前の傍を離れない」
「…うん」
奥歯を噛み締めるように、絞り出されるレニの声。
「っ…すまなかった」
なんでレニが謝るの?
レニはそっと私の頭を撫でた。
優しい感触に涙が出そうになってうつ向く。
「…身体、大丈夫か?」
顔を上げると心配そうな瞳にぶつかる。
思わず心臓が高鳴った。
「………」
「大丈夫なわけ、ないよな」
「…っ」
思わずこぼれた涙を、レニはそっと指先で拭ってくれる。
「シャワー浴びるぞ」
「…え」
レニに手を引っ張られて起き上がる。
「先に行ってろ」
「……」
私は言われるがままに浴室に向かう。
先にって事は、レニも後から来るのかな?
締めつけられていた喉が痛くて、頭がうまく回らない。
おぼつかない手で、服を脱いでいく。
ブラのホックを外そうとした時、後ろからふいに抱きつかれた、
「きゃあっ!」
びっくりして声をあげる。
「悪い。驚かせた」
耳元で聞こえてくるのは、愛する人の声。
ホッとした。
「…レニ…」
後ろから抱きしめられたまま、両手で持ち上げるように下着の上から胸を揉まれる。
「…っ…ん」
突起の辺りを執拗に撫でられ声が漏れる。
「んっ…あぁっ…」
こんな時でも感じてしまう自分が嫌になる。
ふいに、ギュッと後ろから抱きしめられた。
「…レニ…?」
「お前…、セイジュで感じたのか?」
「え…?」
私の肩に顎を乗せて、耳元で囁くように喋られて、思わず背筋に快感が走る。
「…いや、すまない。気にするな、…入るぞ」
「えっ!一緒に入るの?」
「嫌か?」
「…ううん…嫌じゃ、ないけど…」
「じゃあいいだろう」
レニは私の下着を慣れた手付きで脱がし、自分も素早く裸になると、私の手を引いてシャワーの下へと連れていく。
あまりにスマートな行動に、他の誰かともこういう事をしたのかなって思ってしまう。
そんな事を考えていると、
「洗ってやる」
レニの両手には、ほわほわの泡。
「え!自分で洗えるよ」
私の顔は真っ赤になってると思う。
幾度となく身体を重ねて来たけど、こんなの恥ずかしいなんてもんじゃない。
「いや、俺が洗いたいんだ」
「レニのスケベ!」
「は…?」
レニは面食らった顔をした後、すぐに真っ赤になった。
「…うるさい。俺が洗ってやるって言ってるんだ。…ん」
「っ…」
レニに唇を塞がれる。
「…ったく。大人しくしろ」
意外にもレニは、それから優しく私の身体を洗ってくれた。
「…レニは他の子にもこういう事したの?」
私はさっきから気になっていた事を聞いてみた。
「こういう事…ってなんだ」
「…お風呂で洗ってあげたり、したの…?」
「バカか」
「…………」
はぁ…と、レニはため息をついた。
「ったく、俺かそんな事をするように見えるか?」
「…だって今、してるじゃない」
「フン。…お前だからに決まっているだろう」


「美味しいね!」
お風呂から出ると、二人でレニのベッドに腰かけて、一緒にアイスを食べた。
私の大好きなイチゴのアイス。
レニはちゃんと買って来てくれていた。
お風呂に入る前に、冷凍庫に入れておいてくれたみたい。
レニって、口は悪いけど、本当は優しいんだよね。
「うふふっ」
「何を笑っている」
いけない。顔がニヤケちゃってたみたい。
睨みつけてくるレニに、
「レニ、大好きだよ」
私はキスをした。
「…っ……」
「…んっん…」
すぐに深くなるキスは、甘い甘いイチゴの味がした。
もう二度と、私から離れないでね。
私もずっと、傍にいるから。



end
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