陽日直獅ver.



星月学園を卒業して、陽日先生とちゃんと付き合う事になって、初めてのバレンタインが明日に迫っている。

「俺、バレンタインにお前から貰えるの楽しみにしてるからなっ!」って言ってた陽日先生の笑顔が浮かぶ。
どうしよう、何作ろうかな。
料理なんてほとんどしない私は、お菓子なんてもちろん作った事ないし、買おうかなって思ったんだけど、頑張って作る事にした。
錫也が教えてくれるって言ってたけど、いつまでも錫也に頼ってちゃダメだって思って断った。
私は買ってきたお菓子の本をペラペラめくりながら考える。
うーん、トリュフにクッキー、マドレーヌにフィナンシェ。
やっぱり大きなチョコレートケーキ作ってあげたいなぁ。でも難しそう。
あ、チョコのカップケーキ!
これなら私でも出来るかも!

私は早速取りかかる。
だってバレンタインは明日なんだもん。
失敗は許されない。


☆…☆…☆…☆…☆…☆

二時間後。
どうしてこうなっちゃったんだろう…。
私は失敗してしまったケーキを前に落ち込んでいた。
もうダメだ…、私はなんて不器用なんだろう…。

♪〜〜
携帯が鳴ってる。
この着信音は陽日先生だ。
陽日先生とお揃いの着メロ。
「もしもし…」
『久しぶりだな。今、大丈夫か?』
「…うん」
『明日の待ち合わせなんだけど…って、お前どうかしたのか?』
「陽日先生…、私、明日会えないかもしれない」
『そ、そうなのか?どうかしたのか?体調でも悪いのか?』
「そうじゃないんだけど…、ケーキ失敗しちゃったんです…」
私、何やってるんだろう。
涙が出てくる。
こんな事なら買えば良かった。
「ケーキ?ケーキ…ってなんだ?」
「バレンタインだから、陽日先生にチョコケーキ作ろうって思ってたんだけど、ダメになっちゃったんです」
「そっか…お前、今家にいるの?」
「はい、いますよ…」
「わかった。じゃあまたな」
「?…はい」
ツーツー
電話は切れた。
陽日先生、幻滅したよね。
明日…会いたかったな…。
…会いたいよ、陽日先生。

一時間後。
ぼんやりと佇んでいた私の元には…。
陽日先生がいた。「陽日先生…」
「大丈夫か?偶然お前の家の近く通ったからさ」
「来て、くれたんですね」
「あ…、ま、まぁそうだな…」
私は泣いてる顔を見られたくなくて、下を向く。
「おっ、お前…、そのエプロン、可愛いな」
「…え?」
「その、初めて見たから…、お前のエプロン姿」
「そうでしたっけ…?ふふっ」
照れてる陽日先生の顔を見てたら、なんだか可愛くて私は笑ってしまった。
「っ…」
陽日先生に、ふわりと抱き締められる。
「やっと笑ってくれたな。俺の為に、作ってくれてたんだな。…ありがとうな」
「でも、失敗しちゃいました…。こんなに不器用な彼女じゃ、嫌ですよね…?」
「何言ってるんだ。お前はいつもしっかりしてるから、たまにはこういう所見せてくれないと、逆に寂しいくらいだぞ?」
「陽日先生…。…っ」
ギュッと抱き締められて、優しくキスされる。
いつもは子供っぽくて可愛く見える陽日先生だけど、こういう時、大人の男の人なんだなって実感する。
「俺だって、たまには頼って貰わないと、頼りがいがないって思われてるんじゃないかって…不安になる」
「そんな事ないですよ。陽日先生はいつも私を守ってくれてるじゃないですか」
「そ、そうか?」
「そうですよ。私が怪我をした時だって、お化け屋敷に入った時だって、…今だって」
陽日先生はいつだって私の傍にいてくれる。
今度は私が、抱き締める腕に力を入れる。
「陽日先生…、大好きです」
「あぁ、…ありがとな。俺もお前が大好きだ…!」
「チョコケーキ、作り直しますね」
「よしっ!俺も一緒に作ってやるぞ!」
「え?」
「二人で作った方が楽しいだろ?」
「そうですけど、バレンタインなんですよ?」
「またホワイトデーも一緒に作ればいいじゃないか!」
「ふふっ、それも楽しそうですね」
「それに…」
「え?」
「俺は後で、チョコよりも甘いお前を貰うからな!」
「そっ、そういう事そんな爽やかに言わないで下さい!」



えんど。
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