「濃姫様が御懐妊されましたぞ!」
「濃姫様御懐妊!万歳!」
「やっと織田の嫡男が…!濃姫様もさぞお喜びに…」


魔王の嫁が、帰蝶が懐妊したという噂はすぐに私のところへも伝わってきた。…………それも一番嫌な方法で。



「光秀…!私、子を授かったわ…!」

「良かったではありませんか帰蝶。」

「本当!?光秀も喜んでくれるのね…!」

「えぇ、勿論です。」

「ありがとう…。私、正室なのに今まで子を全然授からなくて…嬉しい…」

本当に嬉しそうに、帰蝶は、私の前で微笑む。

「じゃあ私は帰るわね。」

「それを言いにわざわざ?文でもよこせば良かったではないですか。」

「それじゃ駄目なの。光秀には私から言いたかったのよ。」


帰蝶、貴女という人は……


「……そうですか。では帰り道お気をつけて。」












この子が生まれたらまず何をしよう。あ、まず名前を決めなきゃいけないわね。蘭丸君にはお兄さん変わりになってもらわないと。それからそれから……

ドンッッ
背中に強く衝撃を受ける。前のめりになる体。突然のことに頭も体も働きはせず、おもいっきり地面に体を打ち付けた。それと同時に腹部に走る鋭い痛み。


「ぁ……あ……ぃや……赤ちゃん…赤ちゃん…!!赤ちゃん…!!!!ぃやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


大切な命を無くしたことを責め続ける痛みに耐えながら力を振り絞り振りかえる。


目に映ったのは幼い頃から見慣れた白銀。


「だから気をつけて下さいと言ったでしょう…?」


貴女が悪いんですよ、全て。







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