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うわ、すげえ。
体育館にやってきて、潔子さんの隣でばれないようにそーっと見学しての、感想がこれだ。しなやかでスマートできれい。スポーツは見る専だから何がどうすごい、とは語れないけど、セッターが難しい、頭を使うポジションだということは知っている。ミニゲームのようなことをしている彼らの中で、影山が飛びぬけてかっこよく見えたのは、どういう現象なんだろう。
「あッ」
思わず叫んだのは、影山が蛍くんにトスを上げたから。からだが弓のようにしなる、手のひらを経由して、ボールが床にぶつかる重い音。私の「すご……」という呟きに、影山と蛍くんがこっちを見た。ふたりとも、えっ、という顔をする。
「なんで見に来てんだよ」
「サワムラさんとスガワラさんに誘われたんだもん。断るのも失礼だと思って」
帰り道、建前の方を説明した。セッターやってる影山が見たかった、だなんて、口が裂けても言えない。
ほんとは、蛍くんと一緒に帰るつもりだった。おうちも近いし。けれど、先輩方があからさまに、私と影山をふたりにしようとするのだ。むきになって否定するほうが怪しい。はあそうですか、そんじゃお先、といった風に、影山とふたり、抜けて、今に至る。
「かっこよかったよ」
素直な感想を口にすると、影山が立ち止まってすごいしかめっつらを浮かべた。
「ほんと。かっこよかった。セッターってすごいんだね」
言いながら、自分が変な態度をとっているのに気が付いた。まるで媚びているような。ちがう、そういうんじゃなくて、純粋にかっこよかったんであって。自分に言い訳しながら、沈黙をつくらせまいと言葉を繋げるが、かえって変な空気になる。ちがうんだよ、影山、そういうんじゃないの。
「そ、うか」
視線を彷徨わせながら影山が口の中でつぶやく。つられて体がかたくなるのが分かった。しゃべらなきゃしゃべらなきゃ、考えて頭にいろんなセリフを浮かべても、そのどれもがこの空気を悪化させるような気がして、結局しゃべれない。黙ったまんま、別れてしまった。