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「えっ、来いよ、来ればいいのに!」
日向に事の顛末を話したらこのザマだ。隣に居た山口がちょっと引いている。
「えー。放課後でしょー。気が乗らない」
「楽しいのに」
ちょっとしょぼくれる日向を見ていると、なんだか行かなければならないような気がしてくる。不思議なパワーを持ったやつだ。
「ツッキーには言った?」
「言ってない。言うわけないじゃん、絶対来るなって言われるって」
幼馴染同士とはいえ、あいつは自分の領域に踏み込まれることを極端に嫌がる。それを知っていて地雷を踏みに行くほど、私はバカじゃない。
「そうかな。みょうじさんなら許す気がする」
「そうかなー」
山口がそう言うなら、という気もしないでもない。んー。唸りながら腕を組んで首を傾げていると、日向が焦れたように大声を出した。
「今月島の話じゃないだろっ、みょうじさんは影山が見たいの? 見たくないの!?」
山口とふたり、ぎょっとして、首をすくめる。こういうときの迫力、小さいくせに、すごい。
影山が見たいのか見たくないのか、と聞かれても、迷うモンは迷うのだ。そもそもその動機が薄いからこうして悩んでいるのであって。
「あいつ、すげーんだって、セッターっていう、司令塔みたいなポジションなんだけど、ヒュッてなってシュッてなって、スパイカーがガーンッて決めるんだよ!」
「それみょうじさんに伝わるかな」
影山、セッターなんだ。
セッターが何をするのか、その程度の知識はある。でも想像がつかなかった。あんだけ、言い方は悪いけど、おばかな影山が、そんなことしてる姿なんて。
「見たい、かも」
「エッ」
山口が「今ので分かったの」とびっくりしてる。いや日向の説明は全く分からんかったけど、セッターだってのが知れたので結論が出た。影山がそんな風に活躍してる場面なら、ちょっと見たい。