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みょうじにノートを無事返した。涼しくなってきたからか、渡す時に触った指が冷たかった。俺が熱いのか。さっきまで動いてたから。
「うむ、くるしゅうない。戻ってよいぞ」
「誰だよ」
「気にすんなよ」
じゃ、と片手をあげてノートをリュックにしまいながら帰っていくみょうじには、よく知らねえけど、女子力ってやつがないんだろう。ケバいのより絡みやすいからいいけど。駆け足で体育館に戻りながらみょうじについて考えた。あいつ、女子っぽくないよな。
遅くなりましたスミマセン、と言いながら中に入ると、どうやら既に休憩にしていたらしい。くそっ。
「影山ーなんだよお前あの子と付き合ってたのかよー」
日向がぐいぐい俺に肘を押し付ける。うぜえ。
「付き合ってねえよ」
「そんなこと言って仲良さげだったじゃないのよ」
「吐けよ・・・・・・故郷のおふくろさんも泣いてるぞ」
田中さんがクネッとしながら、日向がブラインドを下げるマネをしながら言う。ほんとにうぜえ。
「だっから付き合ってなんか」
「なまえと付き合ってるの」
月島だった。いつもと表情が変わらないから、怒ってんのか普通に聞いてんのか分からない。
「付き合ってねえって言ってんだろうが」
「だよね。あいつのタイプってインテリ系だし」
口の端を上げた月島のそのセリフに眉根を寄せる。それを俺に言って、何がしたいのか。西谷さんがブハッと噴出して、「影山とまぎゃく!」と叫んで腹を抱えて震えた。笑いがひかないらしい。みんな、俺をさしおいて、俺とみょうじの話で盛り上がっている。なんだこれ。