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第一印象は、決していいものではなかった。影山飛雄その人は、愛想も目つきも悪い。
怖いなあ。
それ以外に取り立てて思うこともなかった。バレー部の、ちっちゃい子とよく一緒にいる、怖い人。それだけ。それだけだったのだ、あの日までは。
「みょうじって英語できるよな」
突然声をかけられ、しかも相手があの影山とくれば、驚くのも無理はないだろう。帰る支度をしていた手を止めて、ゆっくり影山を見上げる。
「できるって、どういう」
「テストとか」
「あー」
関わりはなくともクラスが同じなら、自然と点数や成績なんて知れ渡ってしまうもの。影山がその類のことに関心を持ちかつ情報を活用しようとしていることにちょっとだけ、違和感を感じた。
「そこそこ、だと思う、けど。どっちかっていうと、理系だし、私」
「教えてくれ」
「え」
「英語とか、とにかく、テストに向けて」
あの影山が、私に、お願いをしている。イメージに合わなすぎてちょっと気持ち悪い。けど、それを断るほど私も鬼ではなかった。頷いてみせたら、彼は「ヨシ」と言って私の前の席に座った。え、今からかよ。まじまじと影山を見つめたが、さあ早くといわんばかりの強い目力で返された。もしかしてこいつ、ただのバカなんじゃねえの。