久々に会うクラスメイトたちは、日焼けしてたり、してなかったり、女の子はなんだかメイクが濃くなってたり、髪をばっさり切っていたり、やっぱり一か月以上の休みを経ると、みんな変わるんだなあと感慨深くなった。わたしは果たして、変わっているのだろうか。


「みょうじさんひさしぶり、ってほどでもないか」
「あ、及川くん」


 及川くんの言葉どおり、宿題を一緒にやった後、ちょくちょくあの時のようにコンビニで顔を合わせたり、ラインで絡んだりした。なにか大きな出来事があったわけではないけど、及川くんという存在はわたしの中で確実に大きくなっていた。
 話し方、テンション、距離の取り方、何から何まで、わたしにフィットする。すばらしい友人を得た。及川くんは確かにかっこいい。けれどもわたしにとって彼の魅力はそこじゃあない。接したときの心地よさこそ、すべてだった。


「ここであんなにがんばった古典の宿題を家に忘れてきた俺に一言」
「おっかしいな及川くんこんなに無茶振り雑だったっけ」
「夏休みの間に進化しちゃったみたい」
「それ進化かなあ……退化じゃないかなあ……」


 及川くんはやっぱりよく笑う。気取らない、少年みたいな笑い方が、わたしは結構好きである。担任が入ってきて、さっそく席替えの話をして、わたしは及川くんにばれないように、がっかり、の顔をした。隣を盗み見たら、及川くんはまっすぐに黒板を見つめていた。


***


 わたしの席は、いちばん後ろのいちばんはじっこになった。ちょっと目が悪いから、困るんだけどなあ。でも今から言ってもおそいし、何より机を動かすのが面倒くさい。隣の席の子に聞けばいいや、と思って、その旨をその子に話した。サッカー部(だと本人が言っていた)のその子は快くうなずいてくれた。これで一か月は安泰である。


「みょうじさーん」


 軽やかな声がして、サッカー部の子から視線を外して前を見ると、わたしの前の席に、及川くんが座っていた。んえっ、と変な声を上げてしまったが不可抗力だろう。にこにこしながら及川くんが説明する。


「元のこの席の子、目が悪いみたいで、代わってほしいって頼んできたから、きちゃった」
「いやそんなウインクされても」
「みょうじさんと近いし、また楽しいかなーと思って」


 悪びれもせずそう言う及川くんはやっぱり笑っていた。かわいいやつめ、と思ってしまうのも仕方のないことだろう。こんな弟がいたらとてもかわいがれると思う。

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