あのプリントたちは、配られたその日に終わらせた。本当なら、計画を立てて、夏休みの最後まで均等にやるべき宿題だったけど、面倒なものなんて早く処理するに限る。
「うそ、まじで」
わたしのその報告に、及川くんはガチで驚いていた。わたしたちは、次の選択科目が一緒だということで、誘われて、一緒に移動していた。
「いや確かにそうなんだけどさ。にしても早すぎない? みょうじさんって勉強得意なの?」
「得意じゃないよ、ぜんぶ答え写した」
悪びれもせずにネタばらししたわたしに、及川くんはまた笑う。昨日から、及川くんはほんとによく笑う。もしかしてバカにされてるのかななんて不安になるぐらいに笑う。
「みょうじさんそういうことするんだ!」
「するよ。しまくるよ。夏休みの友は解答のほうだったタイプの人間だよ」
及川くんは「俺も今日の夜にやっちゃおっかな」とまじめな顔した。
「夏休み、部活に注ぎたいからサ」
「ふうん。及川くんって強いの?」
「え?」
「バレー」
一瞬ぽかんとして、でも次の瞬間には「強いよ」と不敵に言った。またちょっとだけ、どきっとした。わたしはクラスでの及川くんしか知らないから、クレバーなイメージを抱いていたけど、もしかしたらそうでもないのかもしれない。