小ネタ | ナノ

もしも縁下くんが魔王だったら
09/23 Tue

※タイトルでお察しください
※縁下くんがひどいです


 身体が痛くて目が覚めた。頭もひどく痛む。目をこすろうと手を持ち上げて、愕然とした。じゃらりと鎖が鳴って、わたしの動きは手枷で封じられている。足元を見れば、足首も同じようなことになっていた。

「目が覚めた?」

 飛び起きて声の主を探せば、こつ、こつ、と足音を響かせて、黒髪の青年がこちらに向かって歩いてくる。わたしは豪華なつくりのベッドに横たわっていたようで、わたしをここへ連れてきたのは他でもない、彼なのだろう。

「あの ここは」
「俺の城だよ」

 なんでもないことのように言う。眩暈がした。とんでもないところに来てしまった。ベッドに腰かけてにこりと笑むその表情は優しいけれど、ほんとうに優しいひとならばこんなこと、するはずがない。耳の尖った鋭い犬歯を持つ男性、なにも分からないわたしだが、彼が普通の人間でないことだけは理解した。

「……なに、帰りたいの?」

 どう答えれば正解なのか。本能的に、彼に対して嘘をつくのは得策ではないと感じ、何度もうなずいた。「はは、まあ、そんな簡単に帰すぐらいなら、最初から捕まえないけどね」と乾いた笑いが返る。
 するり、革手袋の嵌められた手が頬を撫で上げて、背筋が震えた。そのまま頭をなでられて、その手つきがいやに優しいものだから、すがりたくなる。けれどもわたしの手首と足首が、現実を突きつける。できることならばこのまま夢でも見てしまいたかった。

「ああ、このまま食ってしまいたい」

 びく。
 大げさに跳ねた身体を笑われ、頬に熱が集まる。顔を覗き込まれ、目を反らすこともできず、烏の濡れ羽色をした瞳と、まっすぐ対峙する。

「もしかして はじめてなの?」

 弧をえがくくちびるがひくりと震える。そのこわばりの正体を知ってしまわぬように、目を閉じる。途端、首をきつくつかまれて、うめき声が漏れた。

「ハイ、か、イイエ、か。それも答えられないようなおバカさんなの?」

 がくがくと首を縦に振れば、すぐに解放された。むせてしまい、息を深く吸って、吐いて、どうにか呼吸を落ち着かせる。顎をぐいと持ち上げられ、深く、口付けられた。 抵抗すれば、きっと、殺される。 恐怖に支配された身体は、彼に従うことを選んだ。


―――
力尽きたので終わります
ごめんなさい



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