及川さんは慰め上手
09/14 Sun
※名前変換タグ放置すみません
「どーしたの、ホラこっちおいで」
両腕を広げてわたしを呼ぶ及川さんの、ずるいことと言ったらない。わたしの感情がメーターを振り切って爆発したとき、決まって及川さんはハグをする。わたしが逆らえないことを知っていながら、「おいで」だなんて、甘い命令を下すのだ。今日もそう。及川さんがカワイイ三年生に告白されているのを見て、やきもちとか怒りとか悲しみとかやるせなさでたいへんなことになっているわたしを、そのからだひとつだけで、鎮めてしまう。背も高くて、バレーをやっているからかがっしりしていて、その広い胸に抱かれると、それまで昂ぶっていた感情がうそのようにしゅるしゅると萎えて、もういっか、となってしまう。
「かわいそうな#なまえ#、俺がいないとダメだねホント」 「及川さんがそうしたんです」 「んもう、かわいいこと言うね君」
ちゅっちゅっとわたしのほっぺにキスをして、こどもをあやすみたいに、髪をやさしくなでつける。そうやって宥めてすかして、わたしをそうっとソファに押し倒す。
「かわいい#なまえ#に、及川さんがどれだけ君を愛してるのか、教えてあげなくっちゃね」 「そーいうのおっさんみたいでヤダ」 「言ったなこいつー!」
及川さんは慰め上手で床上手なのだ。やさしくわたしをなでる大きいてのひらが、おそらくボールと同じかそれ以上くらいに真摯にしてくれているのだと思うと、しあわせでいっぱいになってしまう。
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