急遽決まった丸井とのプレゼント交換。 何を買おうか悩んでいたら知らぬ間にクリスマス前最後の土日が来てしまった。 有り難いことに今日は午前で部活が終わったので、東京に居る幼なじみの元へ向かっている。 昨日メールをしたら彼も今日は午前練らしい。 駅について明るい髪の男の子を発見。 あたしは駆け寄って声をかけた。
「ジロー!」
「うわあ!…夏紀?」
特別背が高い訳でもないジローの背中に飛びつけば、普段の彼からは想像のつかない驚きの声が聞けた。 (いつも眠そうだからびっくりしないもんね)
「昨日も言ったけどさ、丸井へのプレゼント、何がいいと思う?」
「候補ないのー?」
「一応マフラーどうかなって。」
「Aー?丸井くんって言ったらお菓子じゃないのー?」
「これ以上お菓子食べたら大変なことになっちゃうよ」
確か中3の頃、仁王に言われてたもん。 糖尿病になるぞ!って。 言われてすぐはお菓子の量減ってたのに、夏が終わったらまたすぐ以前と変わらない量のお菓子食べてたよ。
「夏紀があげたいものあげたらいいCー」
「んじゃマフラーでいい?」
「…丸井くん、マフラー持ってないの?」
「いや、持ってるよ?だけど色が丸井っぽくないからさ。」
だから明るい色のマフラーあげたいの。
「それならEーよ!きっと丸井くんも喜ぶ!」
「ほんと?!んじゃ早速買い物行こー!」
「…もしかして俺、付き合わされるの?」
「帰りに近くのケーキ屋さんで奢るから!」
*
お店の中を一人グルグル回る。 男の人のお店に女一人で入るのが恥ずかしくてジローを連れて来たのに、奴は今、店の中にあった椅子に座って爆睡中。 あとで起こすのやだな。 なんて思いながらまた同じマフラーを手にとる。 丸井と言ったら赤だけど、赤地のマフラーじゃちょっとくどいよね?
「むにゃ……決まったの?」
「珍しいね、ジロー自ら起きんの。もう会計行ってくるよ」
「じゃあ外で待ってるCー」
レジと反対に歩いてくジロー。 あたしはさっき手にとった赤地のマフラーを置いて、その横にあった紺に赤と黄のラインの入ったマフラーを持ってレジへと向かった。
プレゼント用にして下さい。と言ったら、可愛いクリスマスのラッピングをしてくれて、最後店員さんに「彼氏さん、喜ぶといいですね」なんて微笑まれた。
「もうおっけー?」
「うん。店員さんにジローが彼氏だと思われてたよ」
「それはないCー!だって夏紀だよ??」
ケラケラ笑いながら否定するジロー。 まああたしもそう思うよ? だってジローだもん。 ある意味、ジローみたいな存在があったから、丸井を特別なんだと気づけたんだと思う。
「ありがと、ジロー」
ペットボトルの中の炭酸が笑う
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