24日、クリスマスイブ。 俺はどれだけこの日を楽しみにしていただろうか。
「丸井!ごめん、待った?」
校門で立っていたら高田が白い息を吐きながら走ってきた。 俺の為に走ってきてくれたんだ。 そう思うだけで熱が顔に集中する。 高田は野球部のマネージャーなんだから気配りすんのなんて朝飯前だろぃ、そんくらいで浮つくんじゃねぇ!と自分に言い聞かせるも、
「ありがと丸井!こっちが私のかな?」
「おぅ。ポテト好きな方取っていいぜ」
この笑顔を前にするとそんなものも皆無。 高田と居るとポジティブにもなれるし、ネガティブにもなっちまうんだ。
「テニス部は冬休み忙しいの?」
「氷帝の招待合宿に参加すんだよぃ」
「へぇ!テニス部ってほんと他校と仲良しだよね」
「まあ中学の頃とメンバー変わんねぇし。野球部は?」
「明日から4泊5日、名古屋で合宿なの」
「名古屋かぁ。あ、お土産頼むぜぃ?」
「言うと思った!んじゃみんなで食べ歩きしてる写メ送るね!」
それ嫌がらせだろぃ!!と悪態をついたものの、心の中では冬休みも高田とメールできる!ってことでガッツポーズ。 食いもんにも勝るのか、恋ってヤツは!
「な、そろそろプレゼント、交換しねぇ?」
「!本来の目的忘れるとこだった」
ラケバの中から赤と白の包みにピンクのリボンが添えられたプレゼントを出す。 高田のは緑の包みに水色のリボンだった。 お互いのリボンの色を見比べてみると、まるで恋人同士のようだ。 彼女も同じようなことを思ってるのか心なしか顔が赤い。
「どう、する?」
「一斉に開けて、じゃーん、でいんじゃね?」
「そうだね。んじゃせーのっ!」
それを合図に俺は水色のリボンを解き、袋の中に手を突っ込んだ。 あれ、この感触って
「「マフラー?」」
重なった声に慌てて袋から手を出すと、二人の手元に似たようなマフラー。 ちょっとばかり違うようにも見えるが、遠くから見たらほぼ同じ。
「高田もマフラーだったんだな」
「今のマフラー丸井っぽくなかったから、色のついたのって思って…。丸井こそ、なんでマフラー?」
「去年言ってただろぃ?赤のマフラーが欲しいって。」
「!!一年前のことを覚えててくれたんだ…」
嬉しい。 俯きがちにそう言った高田が可愛くって、思わず視線を逸らす。 16年目のクリスマスイブは、始めて好きな人と過ごし、しかもプレゼントを貰った幸せな日曜だった。 (これ、明日からつけてこ。)
*
今日はクリスマスイブだというのに部活があった俺達はみんなで一緒にファミレスへ行こう!ってって、早く部活が終わった赤也と一緒に街を歩いていた。
「幸村は彼女いいのか?」
「大丈夫だよ。どうせ家が隣だから会えるしね。それより、ブン太は?」
「丸井なら練習が終わってすぐに部室を出て行ったぞ。」
「つーか、あれ丸井先輩じゃないっスか??」
赤也にならって立ち止まると、ガラス越しにブン太発見。 しかも向かいには女子が座っててなんだか楽しそうだ。
「仁王くんがこないだ言ってたのはこれですか。」
「たまにはええじゃろ?ブンちゃん楽しそうナリ。」
「女子と二人きりとは…たるんどる!」
「別にやましいことしてないじゃないスか!」
「女子にあげるプレゼントって、このことだったのか。」
コートでは決して見せない相方の笑みに、俺も思わず微笑んでしまった。
横顔で見た、君の笑顔
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