今日はミーティングのみの部活だったので終わり次第横浜へ向かった。
目的は弟たちのクリスマスプレゼントを買うためである。
母さんに渡された紙を見ながらあいつらが欲しがってるおもちゃを買った。
店を出ると外はもう真っ暗で、イルミネーションの前でカップルが群がっている。
それを見た俺はため息をつく。
今日は好きな奴と一度もまともな会話をできなかった。
恋愛ってこんな些細なことで一喜一憂すんのかよぃ。

部活を引退するまで恋愛なんて興味なくて、テニスさえあればよかったんだ。
正直、あの頃の自分がこんなふうに恋に振り回されてるとは、これっぽっちも想像できない。



「早く帰るか。」



ホームを歩いて行き1番空いてる列を探すと、さっきまで俺の脳内を占めてた奴が、そこに居た。

思い切って話しかけてみると高田はものすごく驚いた顔でこっちを見た。
話を聞くと、親友の桜井が彼氏にあげるクリスマスプレゼントを買いに来たらしい。
あいつ、誕生日も高田に付き合わせてなかったか?

一人で色々考えてる間も高田は止まらず話続ける。
だがいつものように俺が反応しなかったせいか、途中から黙り込んでしまった。
沈黙はやべぇよぃ!!と思ってたら、



「俺たちもプレゼント、交換しね?」

「…は?」

「楽しそうだろぃ?」

「…あたしと、丸井が?」

「おう。ダメか?」



とんでもないことを口走ってしまった。
何言ってんだよ俺!
顔には出さないようにしてっけど、心臓はバクバクだ。

確かに高田は同じクラス四年目の仲だから、俺の性格については大体分かってくれてるだろうけどよ…。
うわ、何コイツ!みたいに思われたら、もう俺明日から学校行けねぇんだけど。



「いいよ!やろうプレゼント交換!!」



だがしかし、そんなの俺の妄想に過ぎなかったようだ。
高田は嬉しそうに俺の提案に賛成してくれた。

…この顔が好きなんだよな。



「んじゃ24日、部活終わったら校門集合な!」








*









「ジャッカルー!今日もいい天気だな!」

「そうだな。てか、お前なんかテンション高くねぇか?」

「何言ってんだよぃ?あ、ジャッカルにもガムやるぜ!!」



ニコニコ笑顔で俺にガムを手渡すダブルスペアのブン太。
奴は部室に来た時からやけにテンションが高い。
今だって命並に大切なガムをくれたし。
(いつもは俺が買わされてんのに!)



「ジャッカル、何故かわからないが丸井からガムを貰ったのだが、」

「真田も貰ったのか?」

「私も貰いましたよ。随分と気分がいいみたいですね、丸井くん」

「昨日のミーティングはそんな元気じゃなかったよね。なんかあったの?ジャッカル。」

「…幸村、俺はあいつの全てを知ってるわけじゃねぇぜ。」



知らないうちに部室を出て行ったブン太以外のレギュラーメンバーが集まる。
ブン太が人に自分の菓子をやるなんてありえねぇことだ。
それこそ天と地がひっくり返るくらい。



「蓮二知らないの?」

「ふむ。あいつは昨日、横浜に行くと聞いたからそこで何かいいことでもあったんだろう。」

「…プリッ。」

「仁王くん、何か知ってるんですか?」



みんなの視線が仁王に集まる。
すると仁王はニヤリと笑って言った。



「ええのぅ、青春しとる奴らは。」




好きがはじまったのです


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