「夏紀、今日の放課後横浜行くのついて来て。」



人の意見を聞き入れない友人、怜奈はいつもの如く決定事項で頼み事をしてきた。
あたしがオフなのを知ってて言ってきたよね、この子。



「クリスマスプレゼントが買いたいんだよね。」

「そういえば二週間後だもんね、クリスマス。」



でもなんであたし?
一人じゃ決まらないのが目に見えてるからよ。
そこまで聞いて、そーいや誕プレのときもあたし誘われたなと思い出した。
怜奈の彼氏は野球部の山田。
なかなかのイケメンです。
(因みにあたし野球部マネ。)



「何買うか決まってるの?」

「手袋の予定。あいついつも軍手してるからさ、ちょっと嫌だなって。」



野球部は何故か冬になると軍手をして登下校をする。
彼ら曰く、みんながそうしてるかららしい。



「振り回す予定だからよろしく。」

「タピオカ半分出してくれる?」

「前回もあるしね、奢るよ。」

「なんじゃ、桜井が奢るなんて珍しいのぅ。」

「…盗み聞きかよ詐欺師」

「聞こえただけナリ。それにしてもリア充はいいのぅ」

「仁王なんか作ろうと思えばいくらでも作れるでしょ。」

「ビビっとこないんじゃ。高田にとってのブンちゃんが。」

「ちょっ!ここ教室!!」



会話にふらりと現れた隣のクラスの仁王。
彼は中3のときに同じクラスで丸井を通して仲良くなった人。
そして、



「高田はあげんのか?プレゼント」

「彼女でもないのにクリスマスにプレゼントあげるとか可笑しいじゃん」

「いい加減告ればいいじゃない。あたしの付き合ってる期間の倍よ、夏紀の片想い」



あたしに好きな人が居ることを知っている数少ない友人でもある。
丸井を好きになったのはいつからだろう。
わからないけど、中2の夏にはもう彼はあたしの中で特別だった。







*







「タピオカ上手く飲めないぃぃ」

「あんまり変な音出さないでね。じゃ、今日はありがと!」



怜奈は上り、あたしは下りのホームへと向かう。
同じお店を行ったり来たり(しかも違う建物)したため足はもうクタクタ。
できれば座りたいけど、この時間の横浜は混んでるから厳しいなあと思っていた矢先、



「高田?お前なんでこんなとこいんだよぃ?!」

「丸井!そっちこそなんで横浜?」



ホームで丸井と出会った。
今日はあんまり話せてなかったので心の中でガッツポーズ。



「クリスマスプレゼントか…」

「久々に乙女な怜奈見ちゃった!」



丸井の前になると無駄に口が動くあたしはひたすら喋った。
なのに丸井はひとつも返してくれない。
(もしかして…ウザがられた?!)
(…少し黙ろ。)



「なあ」

「っはい!」

「俺たちもプレゼント、交換しねぇ?」

「……はっ?」

「楽しそうだろぃ?」

「…あたしと、丸井が?」

「おう。ダメか?」



ふとここで学校での会話を思い出す。
仁王にはああ言ったけど、プレゼント交換ならいいよね?



「いいよ!やろうプレゼント交換!」

「んじゃ24日、部活終わったら校門集合な!!」





とろける、炭酸入り果実


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